『ガラスの仮面』49巻 美内すずえ 著 感想

 『ガラスの仮面』49巻 美内すずえ 著を読みました。以下、感想を書いていますが、ネタばれ含んでおりますので、未読の方はご注意ください。

 この巻を一言で表すならば、「真澄が四方八方から責められる巻」であったと思います。

 もうね、どうすりゃいいんだと(^^;
 悪い人じゃないのになあ、真澄さん。優しさも誠実さも持ってるのに、行く先々で責められ、悪者にされてしまうという。

 じゃあどうすればいいんだーと、叫びたくなりますよね。
 紫織に対する優しさ、病んだ人に対する憐れみや情は、人間なら当然のもので。でもそれを形にすれば、

「無理なさらなくても結構ですのよ 真澄さん 結婚する気もないのに 紫織のために会社を休んでまで付き添ってくださらなくても…!」by 紫織の母 とかなっちゃうし。
 でもさ、あの状態の紫織さんを前にして、もしも

「確かにその通りですね。僕は彼女を哀れに思いこそすれ、愛情など欠片もありませんから。婚約者としての責任感はありましたが、母親であるあなたからそういうお言葉をいただけたのですから、これで安心して帰れます。婚約解消の咎は認めますし、この件に関して紫織さんの名誉ができるだけ傷付かないよう、大都の総力をあげてマスコミを押さえるつもりです。さっそく社に帰り、関係各所への手配をします。では、失礼」

 もしも、真澄が上記のようなセリフを、端正な顔でにっこり言い放ち。踵を返して、すたすた鷹宮邸を辞したなら。

 そしたらある意味、すっきりしたのかな。
 もうとにかく。結婚は無理。婚約は解消ということで。「天と地がひっくり返っても、僕が紫織さんと結婚することはありません」なんて、真澄が終始その態度を貫き通したなら。ガラスの仮面はあと数巻で終わるような気がします(^^;

 でも、マヤに誠実でありたいと願えば、鷹宮に糾弾され。鷹宮に屈すればマヤに不誠実を責められ。

 マヤとの約束を守ろうとすればするほど、紫織の狂気が増していく現実の前に、自由の効く両手両足をどんどん、絡めとられていくマスミン。このままでは、完結の日が遠いなあ・・・。

 揺れる描写なら、いくらでも描けそうです。

 片方に揺らいだエピソードの後は、その傾きを取り戻すための反対エピソードを入れて。
 これやっていたら、相当な長編になりそう。延々続きますよ~。

 鷹宮翁の言葉も気になりました。自室に放火した紫織を気遣いながら、真澄に言い放った言葉。

>ただ このままでは紫織はもう…
>この通りだ 真澄くん…!
>どうか紫織と結婚してやってくれ…!

 私、「このままでは」ってところが引っかかったのです。「このままでは」というと、「現状はまだ許容範囲」と言ってるみたいに聞こえるんですけど、もう現状が相当、おかしなことになっちゃってるのに、鷹宮翁気付いてないんだもん(^^;

 紫織さん、入院レベルだと思うんですけど・・・。

 放火するのもアレですが、妄想が行き過ぎて看護師さんを花切り鋏で襲うなんて、これは24時間の見守りがないと暮らせないレベルなんじゃ?
 看護師さん、実際刺されて流血してるし。腕だからまだしも、お腹刺されたらどうするんだろう。
 まあ、腕だって、動脈を切れば大変なことですよ。

 鋏を取り上げようとしたマスミンの手も、傷つけちゃってるし。

 こういうところ見てると、紫織さんがマスミンのこと、本当は好きじゃないのがよくわかります。

 紫織さんが好きなのは、自分なんです。自分の思い通りにならないから、暴れてるだけ。本当にマスミンが好きなら、他の誰の言うことを聞かなくても、マスミンにだけは向き合うはず。たとえ狂気の中であっても。
 そして、マスミンを偶発的にでも自分の鋏が傷つけたなら、流れる血液に気付いたなら。動揺して後悔して、マスミンの痛みを自分の痛みのように感じて、手当てをしようと慌てるはずだから。

 

 もはや、紫織さんにとって、マスミンなんてどうでもいいんだろうなあ、と思いました。自分の傷付いたプライドの方が大事なんでしょう。
 欲しいと思ったものが手に入らなかった。屈辱を感じてまで、「欲しい」と、人生初めて膝を屈して乞うたのに、それが叶わなかった。
 そして、自分が欲しくて欲しくてたまらなかったそれを手に入れるのが、どうみても自分に劣る、みすぼらしい存在(マヤ)であることが許せない、まあ、要はそういうことなわけで。

 紫織さんも狂ってますが、鷹宮家一同、歪んでおります。
 我が子でありながら、親子関係が薄くみえる両親だったり。孫を盲目的に溺愛する権力者の祖父、だったり。
 周りの環境が、紫織さんの狂気を育み、増大させていったのですね。

 もしも紫織さんが、マヤの母である春さんの子供だったら。
 子供時代、スーパーで「あのお菓子がほしい」と駄々をこねても、「うちにはそんなもん買う余裕はないんだよっっ!!」と一蹴され、それならばと嫌がらせで、その場でひっくり返って大暴れしてみたところで、「ああ、そんなに暴れたきゃ勝手にしなっ! わたしゃ帰るからね。お前はもう一生、そこにいればいいよ」と捨て置かれ。

 しばらく泣き続けたものの、春さんは本当に家に帰ってしまったことを知り、仕方なく、とぼとぼと家路につき。
「食べたくなきゃ、食べなくていい」と言われて出されたいつもの夕食を、取り上げられないうちに慌ててがつがつ食べる・・・なんて子供時代を送ることになったわけで。

 今の紫織さんはいなかったですね。
 環境が、作りあげたキャラと言えるのかも。

 49巻の中で、聖さんがマスミンの本当の気持ちを確かめるために、わざとマスミンを挑発するシーンがあるんですけど。聖さんが京本政樹さんにしか見えなかったです(^^)

 どうしよう、この絵柄は、京本さんに似すぎだ~(笑)
 私の脳内では、京本さんがセリフをしゃべってました。

 それと。マスミンは、マヤを桜小路君にとられるのは許容できても、聖さんにとられるのは嫌なのかなあっていう、その心理状態が興味深かったです。

 あれですかね。自分の好きな人を、知らない他人にとられるのは我慢できても、親友に奪われるのは許せないとか、そういう心理なのでしょうか。

 それにしても、聖のセリフには笑ってしまうものが多く、その挑発に、簡単に乗ってしまうマスミンも、滑稽なほど幼く見えました。いつもの、冷静沈着、鬼社長の姿が全く見えてこない。いくら心乱されているといっても、あまりにも動揺しすぎではないかと。

 聖は、あくまで部下ですから。マスミンの命には逆らえないわけで。

 聖がなんと言おうと、マスミンがビシッと「駄目だ」と言えば、そこで終わりなのにな。

>北島マヤはぼくがいただきます
>いいですね 真澄さま

 そしたら、マスミンはこう言えばいいんです。(以下、☆は妄想セリフです)

☆お前はなにを言ってるんだ(にっこり、氷の微笑)
☆勝手なマネは許さん。これは命令だ。

>ぼくが紫のバラのひとだと名乗れば
>マヤさんはぼくを愛するでしょう

☆誰がお前にそうしていいなどと言った?
☆以後、お前はマヤに一切接触するな。
☆おれがマヤと関係を断つ以上、もはやお前を仲介役にする必要もなくなる。
☆話は以上だ。行け。

 聖の一切の反論を許さず、自分の言いたいことだけ言ってしまうと、話しかけるなオーラをまといつつ、黙々と書類整理に戻る真澄様、という図が見てみたかったです。

 そして、部屋を出て、扉が閉まった後、ひとり心の中でマスミンに語りかける聖さん、とかね。もう、想像が膨らむなあ。(以下、☆は私の妄想です)

☆気付いていらっしゃらないのですね真澄さま。
☆あなたの心の奥深くにいるあの方は、決して消えることはない。
☆自分の幸せだけを追いかければよろしいのです。
☆そのためならぼくは、どんなことでもするでしょう。

 そして、寂しい微笑を浮かべる聖、だったりね。ああ、想像は果てしなくどこまでも広がっていきます。

 ところで、マヤを自分のものにする宣言でマスミンを覚醒させようとした聖ですが、マスミンはこの状態で聖にペーパーナイフ投げつける男じゃないよなあ、という気がしました。

 ここは、すっきりしないです。
 この場合、私の想像するマスミンだと、平静を装いそうなんですよね。ぜーんぜん平気ですよーみたいな顔しながら、聖が出て行った後、自分の手から血が流れているのに気付く。
 無意識に、ペーパーナイフを強く握りしめていて・・みたいな話だったら、いかにも速水さんらしいと思うんですが。

 それで、自嘲したりね。ひとりになった部屋で、もう、自分で自分を笑っちゃう、みたいな。私の想像の中のマスミンだと、聖が出て行った後の彼は、以下のような感じです。(☆は勝手に想像したつぶやき)

☆おれは、動揺、していたのか・・・
☆馬鹿な男だ。ナイフの痛みに気付かないほど、動揺して。
☆聖なら、マヤを不幸にしない。だがおれは・・

 白目で、さらにナイフを握りしめ続けるマスミン、なんてのも想像できます。もうね、痛みで自分を抑えるしかない、みたいな。
 笑いながら泣いて。
 自虐しながら、マヤを忘れるために呼吸している、という。そんな姿だったり。

 49巻は、私の好きな速水さんとはちょっと、方向性が違ってきているのを感じました。やっていることが少し・・。紫織さんに振り回されてしまうのもそうだし、マヤに対しても。

 結局マヤを選び、伊豆の別荘で会うことにしたみたいなんですが、それだとマヤが危険すぎる~。

 速水さん、結局は今のところ、大都を離れる決意したのかな~という感じですが、たとえ一個人に戻ったところで、ハッピーエンドとはいかない。だって今のままだったら、一番守りたいはずのマヤが、守れないから。

 私は、速水さんはマヤのためなら、自分を犠牲にする人だって思ってるから。自分の恋情なんかより、マヤの幸せを願う人だと思ってたから。だから、「マヤを守るために紫織さんと結婚する速水さん」は想像できても、「すべてをなくしてもマヤとのささやかな結婚を選ぶ速水さん」は想像できないなあ。

 

 愚か過ぎる。その愚かさも、マヤを思うあまりの愚かさじゃなくて、単純に、世間知らず、的な。仮にも一企業で社長やってた人の判断じゃないよなーっていう。
 今マスミンが伊豆なんかでマヤと会い、愛情を確認しあったら、鷹宮翁は全力でマヤをつぶしにかかるわけで。それがわからないって、どうなのよという。

 次巻、50巻は伊豆別荘編になるのでしょうか。続きが気になります。

 

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