ドラマ『ガラスの家』第4回までの感想

 ドラマ『ガラスの家』の第4回までの感想を書きます。以下、ネタばれを含んでおりますので、未見の方はご注意ください。

 なんとなく見ていたテレビで予告をやっていて、少しだけ興味をひかれたので第2回の放送から見始めました。第2回目から見るっていうだけでも、ある意味「どうでもいい」的な期待感だったわけですが、これが意外なヒットで。毎回かかさず見るようになりました。

 あらすじはといいますと、NHKらしからぬ、昼ドラのようです(^^;

 財務省主計局長の澁澤一成(しぶさわかずなり)というエリート官僚が、黎(れい)という美しい女性と再婚するのですが、一成には仁志(ひとし)と憲司(けんじ)という成人した二人の息子がいまして。

 仁志も黎さんを好きになっちゃうのです。
 義母なのに。でも年齢からいうと、一成より仁志のほうがお似合いというのも皮肉でして。

 そして仁志は父と同じ財務省勤務。父の政敵である若き政治家を慕い、仕事の面でも父と対立していきます。

 長男であり、父のレールに乗っかって生きてきたおぼっちゃま君の目覚め、ですな。
 俺の言う通りにしていれば間違いはない、という父親に、なんの疑問も持たなかった幼い日のぼっちゃんはどこにもいないのです。

 仕事の上でも、父親とは意見を違えるし。
 家に帰れば、黎さんのことを好きになっちゃうし。

 悩み多き青年です。でも、そうやって大人になっていくんでしょう。

 ともすれば泥沼で暗くなるドラマに、明るさを添えるのが次男の憲司君。明るさに救われます。まあ、明るくしてなきゃやってられないか。父親の再婚というだけでも大事件なのに、その相手を兄ちゃんが好きになっちゃうとか、どんなメロドラマだよっていう話で。

 ドラマといえば、一成と黎は、どちらもフランスでの飛行機事故で、身内を失くしているんですね。一成は妻を。黎は両親を。

 同じ痛みを共有した二人が惹かれあうのは、必然かもしれません。同じ経験をしたものだけがわかりあえる、なにかがあったのかもしれない。

  キャスティングがいいですよ。

 まず黎さんは井川遥さんが演じてます。なんか可愛い。美人だけど、思わず手を差し伸べてしまいたくなる弱さを持ってて、泣かれると反則だなと思います。 
 声出さずに、涙だけがぼろぼろ落ちるの。
 これ横で見たら、そりゃあ仁志が「俺が守る」みたいに奮起しちゃうの、無理ないと思う。
 おまけに一成は黎を見下した愛し方しかしないし。

 行くところがない相手に、出てけとか言ってる時点でひどすぎるもんね。
 働きたいっていう黎を、侮辱する言葉で委縮させてるし。
 言葉でがんじがらめに縛りつけて。都合のいい妻でいさせようとする身勝手な愛情。
 ペットじゃないのにね。

 一成を演じるのは藤本隆宏さん。この方もいい味出してます。
 一成はたしかにひどい夫なんですが、藤本さんが演じる一成はひどく不器用さを感じるんですよね。別に意地悪で黎を縛り付けてるわけじゃないっていう。

 信念があるんでしょう。仕事にも、家庭にも。それは当事者にしてみたらものすごく迷惑で非常識な信念ではありますが。一成の生真面目さ、不器用ゆえの悲哀を感じたりもするんです。
 もっと狡猾な人なら、素直に嫌いになれるんだけど、みたいな。

 まあ、他人だから言えるんですけどね。私が黎の立場なら、もう第2話で家を飛び出した時点で絶対戻ってない(^^; 無理無理。一緒に暮らせない。謝って帰った黎ちゃんを、偉いと思いました。あれはできないわ~。

 あと、仁志を演じる斉藤工(たくみ)さんも、役柄にぴったりです。繊細で、感情を抑えた演技がすごいなあと思います。

 好き好き光線を出しすぎないところが切なくて。
 まあそりゃそうだろうなあっていう。好きになっちゃいけない相手を、好きになっちゃうわけですから。
 ていうか、息子二人は成人してるんだから、父親が若い女性と再婚したら家を出るっていう選択肢はなかったのかな。新婚で、家の中でいちゃつかれたら嫌でしょうに。

 まあドラマだから。一緒に暮らす中でこそ生まれる葛藤を、描いているわけですな。離れて暮らして恋心が育たなかったら、ドラマにならない。

 このドラマ、エンディングの曲もいいのです。西野カナさんの『さよなら』という曲。歌詞はあまり好きじゃないのですが、言葉の意味をふっとばすような、圧倒的なパワー、切なさでせまるメロディ。

 音楽が伝えるものってすごいなあと思いました。歌声も甘く耳に心地よいです。誰かを好きになれば、同じだけ悲しくなるっていうことを、表現しているような音だと思いました。

 あとエンディングの花の毒々しさが。
 毒々しいなんて言ったら言い過ぎかもしれませんが、決して、ただ「綺麗」とか、「ポップな」花じゃないんですよね。毒がある、ように見えるのは気のせいでしょうか。
 同じ赤でも、鮮やかな赤だったり、柔らかな赤ではなく、毒の混ざった赤、みたいな。
 でも、だからこそ魅力的で。思わず近付きたくなる。辺りにはきっと、人を惑わせるような香りが漂っているんだろうなと、想像してしまいました。

 井川さん演じる黎ちゃんは素敵です。仁志がどんどん惹かれていく気持ちがわかります。 また来週も見たいと思いました。

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