地中埋設物や擁壁は意外な盲点

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今、うちの近所では次々と家が建っています。ここ数年、ちょっとした新築ラッシュ。

そこで、家の建築に関して「家を建てるときのヒント」というカテゴリーで、気が付いたことを書いてみることにしました。身近に建設を見ていると、見えてくるものがあります。

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去年、近所の築40年の平屋のお宅が取り壊され、更地になりました。

元々そのお宅は水路沿いに建っていて、水路の側面上に擁壁が作られていました。その擁壁、よく見ると少しだけ(数センチ)上端の部分が水路側に傾いていまして。おそらく40年の間に少しずつ土の圧力で、擁壁が押されたのだと思います。

それは、よく見ないと気付かないほどの少しの傾きではありましたが。そんなに大量の土でなくとも。そして平屋の重量であっても、長い時間をかけるとこうなるんだなあ、と。土の重みというのはあなどれないものです。

さて、更地になった土地にはすぐに買い手が現れ、素敵な三階建ての家が建ちました。

しかしなんと、擁壁の傾きはそのままだったのです・・・。

これ、意外な盲点だなあと思いました。建築業者は気付いていたでしょうが、お施主さんがわかっていたかどうかは疑問です。プロなら教えてあげるべき、と思いますが、擁壁の作り直しとなると大金が動きますので、黙って建築を進めてしまったのでしょうか。

平屋でさえ、傾いてしまったものを。

3階建ての重量が、果たしてどこまで耐えられるものか。ある日突然すべてが崩れることはないでしょうが、少しずつ、少しずつ傾きは加速していくのではないかと思います。

一度傾いてしまった擁壁を、後から戻すことは不可能だそうです。もし直したいなら、根本から作り直さないといけません。建てたばかりの三階建ての家。今後どうなるんだろう、といつも心配しながら、そこを通るときには擁壁の傾きを気にしながら歩いています。

擁壁も、永遠ではないんですよね。年月が経てば劣化する。そして、いままでと建築の条件が変わるなら、なおさら注意が必要です。今まで平屋だったところが三階建てになるなら、擁壁の傾きの念入りなチェックは欠かせないと思いました。

がけ地や、特別高い擁壁でなくとも。そこに土があり、建物が建つ以上は、擁壁の強度も考慮する必要があります。更地でお買い得の土地、と思っても。あらたに擁壁の工事をするなら、何百万の予算が追加でかかる可能性もあり、それらを総合的に考えないと、高い買い物になってしまうなあと思いました。

土地を買うときに、擁壁は要チェックです。

それと、地中になにが埋まっているのかも、きちんと調べないと後で大変な経費がかかったりしますね。

近所で実際にあった話ですが、もともと田んぼだったところを埋め立てた土地Aがありまして。何十年も放棄地だったのですが、最近売られて、家が建つことになったんです。

ところが、いざ家を建てるのに土を掘ってみますと、コンクリートの大きなかけら(土管のかけらみたいなもの)がゴロゴロ出てきたんですね。それらは産業廃棄物ですから、処理にはそれなりのお金がかかります。

おそらく、埋めるときに安い業者を頼んだものだから、ゴミが混じったものを埋められてしまったのでしょう。表面だけきれいな土にしておけば、埋めてる最中を見られなければそれでごまかしがききます。

何十年も経って、土地所有者の世代が変わり、子孫が土地を売った。そして買い手が家を建てようと土を掘ったとき、おそらく売り手も知らなかったであろう、土地の瑕疵がみつかったというわけです。

出てきたコンクリート片などの処理費用を誰がもつか。困った不動産業者は、なんとAと隣接する畑Bの持ち主に、半分負担を求めたとか。AとBの境に多少の高低差があり、畑側(B)が石を積んで境界をつくっていたのですが、不動産業者はその石積みの下にコンクリート片がたくさん埋まっていると主張したのです。

不動産業者は、畑の持ち主に半分負担してもらうことにより、土地の買い手にも負担の話をしやすいと考えたようです。「お隣の境から出てきたゴミですが、お隣も半分負担すると言ってますので、残り半分はお宅で払ってあげてください。今後の近所づきあいを考えたら、それで手をうつのがいいですよ」と。

畑Bの持ち主は、境の下に捨てコンクリなどのゴミがあると言われ、負担を求められてびっくり。石積みの境は、おじいちゃん達が作ったものですが、何十年も前のことだし当時を知る人はほとんど、亡くなっています。石積みの下に、境を越えてお隣にまで進出したごみがあるなら、自分たちの責任だと一度は了承したものの。

Bの持ち主は、唯一当時を多少知っている高齢の親戚のおばあさんを、老人ホームに訪ねました。そして昔の話を詳しく聞き出したのです。

そのおばあさんは言ったそうです。

「そんな変なごみなんて、いくら石積みを安定させるためだって、埋めるということは考えられない。おじいさんはそういう汚い仕事はしないと思う。畑はもともと田んぼだったけど、埋めるときにはきれいな土を入れないといけないと言って、土の搬入にはとても気を遣っていた。ごみを埋めるなんておじいさんが一番嫌がることだ。それに、隣の土地に越境してそういうコンクリートなどを入れるなんて、隣のおじいさんだってそんなことをしたら黙っていないよ。自分の土地の中ならともかく、境界線を越えて変なもの埋めたら、隣の人が怒るよ」

まあ、正論ですよね。

昔のお百姓さんは、境界に関してはうるさいです。境付近に変なものを埋めようものなら、黙っているはずがないのです。

もう一度、状況を整理します。

Aの土地に家を建てるにあたり、Aの土地を掘っていました。そしてBとの境に基礎のブロックを作ろうとしているところでした。境を掘りかけたところで、Bに「廃棄物負担」の話を、不動産業者が持ちかけたのです。

掘り返したAの土地には、土管のかけらを含む、コンクリート片などのゴミが、一山どっしりと並べられていました。かなりのインパクトです。Bの所有者は、そのゴミを見せられ、自分の土地との境からそれだけのゴミが出たのだと錯覚しましたが、よくよく観察すれば、まだBの境界は掘り始めたばかり。それらのゴミは、境ではなく明らかにAの土地から出てきたものなのです。

不動産業者は、Bとの境に、コンクリ片が埋まっている可能性が高いと主張していましたが・・・。

結局、Bの所有者は、境界を掘るときに立ち会うことにしました。その結果、Bの土地からコンクリート片は出ませんでした。その場には不動産業者もいました。目の前で確認したのですから、不動産業者もそれ以上、「払え」とは言わなかったそうです。

(個人が特定されると困るので、多少のフェイクは混ぜてありますが、上記の話は実話です)

こういう経緯があると、その後のご近所関係にも影響が出てきますよね。不動産業者は、たぶんとりやすいところから経費をとろうとしたんでしょう。Bは結局、支払いをしなくてすみましたが、これ、もし払っていたとしたら、いつまでもしこりは残ったんではないでしょうか。

本当にうちが払うべきものだったのか?

本当に境を越えてゴミが埋まっていたのか?と。

立ち会いをして、実際に境の埋設物の状況を見たので、すっきり解決はしましたが。Bの所有者がもし、仕事などで忙しく立ち合いできなかった場合。支払いをしていたら、いつまでももやもやとした気持ちは残ったと思うんですよね。

この件に関して、Aの土地を買った人には、なんの責任もないわけです。悪いのは不動産業者だと思います。きっともめるのが嫌だから、AとBと半分ずつ負担をさせたら、丸く収まると思ったのでしょう。それが一番簡単で、楽な方法だと思ったんでしょう。不動産業者はそれでいいかもしれない。

でも、その後何十年も、お隣同士で暮らしていくだろう、AさんとBさんの関係は? Bさんの立場になってみたら、決して快いものではないと思うんですよ。

そしてAさんにしても。Aさんだって得しているわけではありません。本来、そんな埋設物の処理費用は、土地を売った人が払うべきものですから。AさんはAさんで、我慢するわけですよね。これは本当はBさんのゴミだけど。仕方ない、境近辺にあったものなら、半分うちも負担しよう、と。これから長い付き合いになるご近所さんなんだし、と。

自分たちの知らないうちに、こうしたわだかまりが残る可能性があるというのは、怖いなあと思います。Aさんにしてみたら、踏んだり蹴ったりです。余計なお金を半分負担した上に、Bさんからもよくは思われないわけですから。

じゃあどうすればよかったんだろうというと、やはり地中埋設物の確認をきちんとしておくことですよね。掘ったときになにか出てきたときの責任を、契約書に明記しておくことです。それと、買う前に土地の来歴について、隣地の人の話を聞いておくのもいいかもしれませんね。話を聞くことで、隣の人がどんな人かも確認できますし。

埋める土の良し悪しというのは、業者によって全然違うそうです。悪徳な業者は、安く請け負って、ときには無料という言葉で誘って、こっそりゴミなどを埋めてしまうそうです。それを防ぐには、安すぎない適性価格での取引と。できれば、埋める日は立ち会って、自分の目で確認することですよね。それができれば、一番安心。さすがに、夜中にこっそり、土を入れ替えるとかそこまではしないでしょうから。

以上、目立たない擁壁や、目につかない地中埋設物も、土地を買うときには大切な要チェックポイントだよという話でした。

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