ドラマ『SAMURAI CODE』 感想

 ドラマ『SAMURAI CODE』を見ました。以下、感想を書いていますが、ネタばれしていますので未見の方はご注意ください。

 面白かったです。そもそも、トヨタのマークXのCMが好評で、そこからドラマ化されたとのことですが、あのCMが好きな人なら誰でも楽しめると思います。

 私もあのCM、忘れられません。

>「今日の部長、頭下げすぎでした」
>「でも、素敵でした」

 短いのに、そこから無限に広まるドラマを感じさせるCMで、あのセンスは最高ですね。

 ドラマで主役の須藤部長を演じるのは、CMと同じキャスト、佐藤浩市さん。この方は、にじみでる色気がただものではない、と思います。
 なんなんでしょうね、あれは。そこにいるだけでオーラがすごい。モテオーラ。ああいう人が上司だったら、ほとんどの女性がぽーっとなってしまうのではないでしょうか。

 その上決断力も行動力もあって、見えないところでの部下への心配りも忘れなくて。完全無欠、かと思いきや、思いがけぬ弱さも、信頼できる人間には隠さず露呈する正直さがあって。

 そりゃあ、周囲の女性は、惚れてしまうだろうと思います。

 祥子を演じた鈴木砂羽さんの演技も光ってました。ずっと一緒に仕事をしてきたからこそ、須藤部長のいいところも全部わかっていて。好きだけど、好きだからこそ一線を引かなければと自制しているところが可愛かったです。
 留守番電話、何度も再生して聞いているシーンなどは、微笑ましかった。

 このドラマでは、ヒロイン役2人を一般公募で選んだそうですが、どちらもキャラがぴったりはまってました。

 

 秘書、瞳役の高久ちぐささんは嫉妬の演技がうまいです。祥子と張り合う場面は、画面から火花がバチバチ散ってました。
 デパチカで買ってきたお惣菜を広げるシーンは、ちょっとほろりとなったり。

 なんだかね。どこかで。彼女はわかっちゃってる気がしました。須藤部長が、自分に振り向いてくれる日はこないって。本能で、悟っちゃってたんじゃないかと。
 それでも、尊敬してて、大好きな部長の元で働ける幸せを、噛み締めてる感じがよく出てました。

 部下の美希役の中園友乃さんも、あ~いるいる、こういう感じの新入社員、という感じで、とにかく可愛い。あ、ドラマ内では、別に新卒の新入社員というわけではないんですけど、チーム内では一番の新人だと思われます。
 初々しさが新鮮でした。
 彼女の目に、どれだけ須藤部長が眩しく映ったか、容易に想像できます。

 あ~いるいる、こういう感じの人、という意味では。轡田役の中原丈雄役さんもすごかったです。役そのものになりきって、馴染んでいて。
 ああいう立場の人は決断も早いし、押しも強い。話し方はいかにもやり手の局長という感じで、違和感がまったくありませんでした。
 ドラマを見ているというより、本当の会議の場に、自分もいるような気持ちになりました。

 須藤部長のライバル牧村役は、鶴見辰吾さん。
 気のせいか、須藤部長より年が若いような感じがしてしまって。それと、穏やかな感じがするので、須藤部長と張り合うと、少し押され気味になってしまっているような感じがしました。

 かといって、他にどんな役者さんがよかったかというと、思い浮かばない・・・。佐藤浩市と同年代で、張り合っても負けないだけのアクの強さがあって、対照的なライバルになり得る人・・・誰だろう。

 そして、死後もなお、須藤部長と牧村の両方から愛され続ける永遠のマドンナ、かおり役の本上まなみさん。本上さんすごく可愛いんだけど、セリフに感情がのっていないっぽいところがあって。もしかしたらわざと、そういう演出にしたのかもしれないですが、主人公が忘れられずにいる、永遠のマドンナ、というのには少し、薄い感じもしました。

 あれだけ魅力的な須藤部長が、忘れられずにいる女性、ということで。なにかこう、特別なものを持っている感じがあるとよかったかなあ。視聴者もぐいぐい引き込まれるだけの、不思議な魅力のある女性だと、もっとよかったと思います。

 といっても、他に具体的な女優さんは思いつかないですが。
 ふとした瞬間の横顔に、ハートを鷲掴みにされるような笑顔の女性。

 ドラマの中で、映像はとても美しかったです。かおりのお店の大きな窓。そこから差し込む光。

 主人公の胸に、大切にしまいこまれた最愛の人。思い出というフィルターを通して、それは現実より数段きれいに補正されていると思うのですが、幻想的な雰囲気がすごく素敵でした。

 ドラマとしては1時間もない短いものですが、内容は濃いです。キャラクターひとりひとりの個性も確立されていて、輝いています。これ、あえて短くまとめることで、映像になっていない場面を自由に視聴者が想像できて。逆に長いドラマにするより、面白くなっていると感じました。

ドラマ『平清盛』第15回 感想

 特別思い入れがあって見ているドラマではないので、時間があれば見る、程度だったのですが、今日の回はあまりに清盛が気の毒でした。

 毎回見ているわけではないので、あれなんですけども。

 清盛の責任じゃないところで、あれだけ悪しざまに罵られるというのは、見ていてつらいものがあります。

 なにかというと、「不吉」だの、「平氏に災いをもたらす」だの言われてしまうし。血がつながらない、でも実の弟同然に可愛がっていた家盛の死に際しては、宗子から母親とは思えない非情な言葉を投げつけられてしまうし。

 清盛は、弟の死を悲しむことすら許されないのかと。
 血が、そんなにも大事なのかと。

 そもそも、宗子の態度が、家盛を苦しませたんじゃ?と思いました。それまでは、無邪気に兄を慕う弟だったはず。

 忠正が清盛にひどいこと言ってるのに、それをやめさせない忠盛にも、苛々してしまいました。清盛を我が子として養育することは、棟梁として自分が決めたことなのに。

 忠正も、文句があるなら忠盛に言えばいい。

 赤ん坊の清盛に、どんな選択肢があったというのか。

 そして、ドラマ後半。曼荼羅に色付けをしていた清盛を、忠盛がやめさせようとする場面。

 忠盛があまりに自分勝手すぎて、清盛に同情してしまいました。いまさら、全部をなかったことにしようったって、無理です。それは、清盛を我が子として育てたことを否定するということで。じゃあ清盛に、いったいいまさら、何者になれというんでしょうか。

 ドラマとはいえ、清盛の気持ちを想像すると痛すぎて。

 最後に宗子が出てきます。その優しい言葉も、そらぞらしく聞こえてしまいました。

 これだけ「お前は望まれない子」なのだと、一門の者みんなから口ぐちに言われたら。心は壊れてしまうでしょう。そして、それを後からとりつくろったところで、傷跡は残りそうです。

 せめて、忠盛だけは、一貫して味方であってほしかったなあ。というか、忠盛、自分で決めた選択なんだから責任もってくれ~、と。心底、そう思いました。

ドラマ『メイちゃんの執事』感想

 2009年放送のドラマ『メイちゃんの執事』。
 その中で、こんな場面が印象に残っている。

 執事同士が決闘をするシーンだ。執事は戦いを前に、お嬢様にこう語りかける。

>わたしを信じてください
>信じてくだされば、わたしは必ずその信頼にこたえます

(中略)

>メイさま、ご指示を

>やばいと思ったら、負けてもいいからね

 迷った末に絞り出した答えがこれかーい、という、理人(このドラマの主人公、メイちゃんの執事です)のショックと失望。
 この台詞を言われたときの理人の表情が、なんとも言えません。いや、顔の表情自体は、そんなに大きくは変わらないんだけど。それは執事としての鉄壁の理性がそうさせているのか。もちろん、感情をむきだしにするようなことはないんだけど。

 でも目の前のお嬢様からはっきり「怪我するくらいなら、負けて私の前から去りなさい」と言われたも同然なわけで。そりゃ、へこみますわな。勝てんわ~。この状態では勝てん。モチベーションが下がりすぎる。

 理人も、目の奥がふっと、曇るんですよね。悲しそうに。

 「あなたが負けるはずはない。勝って。私のために。これは命令よ」
くらいのことを言われちゃったほうが、ずっと嬉しかったろうなあ。

 怪我するから・・って、優しいんだけど、その優しさはむしろ、執事のプライドを傷つけるだろうって思いました。

 ちょっと考えさせられちゃったりして。

 結果はどうであれ。その人を信じる、というのはとても大切なことなんだろうなあ、と。
 愛する人からの信頼は、無限のパワーになる。

 それに。わがまま言われて嬉しい瞬間って、あると思うんですよね。もちろん、ケースバイケースだけど。「私はあなたに、○○してほしい。あなたがそうすることを、私が望んでいるから」って、そりゃあ事実それだけをみたら、たんなる自己主張にすぎないのかもしれないけど。

 傍からみたらわがままにしか思えないその願いを。
 世界でひとり。自分だけがかなえてやれるとしたら。それをかなえたとき、その人が思いっきり嬉しそうに、自分だけのために微笑んでくれるとしたら。

 俄然、燃えますよね。お利口じゃないかもしれない。それを願う側も、受ける側も。でも、馬鹿みたいに誰かのためにがんばってしまう姿は、真剣で、まっすぐで。いい。すごく、いい。

 信じることは素晴らしい。
 それを教えられたような気がする、名場面でした。

 心配してくれることは嬉しいけど、だからって、二重にも三重にも安全策を提示されて、失敗すること前提みたいな警告受けたら。
 そんな状況じゃ、力なんて発揮できないよね。
 むしろ、失敗を深層心理では望んでいるのかと、疑いたくなってしまう。
 失敗したときには、「ほらごらんなさい」と、ドヤ顔で。

 なんの根拠もなくても。ただ、目の前にいるその人を信じて、その人を願ったなら。奇跡だって、ごく当たり前のようにおこるかもしれない、と思いました。

 このドラマ、コメディ基本に作られているみたいで、脚本とか演出とかぶっ飛んでいるのですが(^^; それを大真面目に演じきっている出演者の方々、好感度アップしました。

 ばかばかしい~ってなってしまうようなセリフや行動も、気持ちをちゃんとこめて、全力でその人物になりきっているのです。

 ただ、向井理さんの白髪ウィッグは、どうかと思います・・・。あれはなかったほうが、かっこよかったんじゃないかなあ。特異なキャラを目立たせるため、という狙いはわかるんですが、とにかく似合ってなかった。
 もっと本人に似合う色を選べばよかったのに。

 その点、W主演の水嶋ヒロさんと榮倉奈々さんは、ちゃんとそのよさを前面に押し出していたなあと。

 水嶋ヒロの執事姿は眼福でしたし、榮倉奈々ちゃんはとにかく可愛い。そりゃ理人も惚れるわ~と思いながら見てました。とくに、精神病んだルチア役の山田優さんを見た後では・・・。ひぃぃ・・山田さん、執着が凄過ぎて、恐い(^^;
 ルチア様に追われて全力で逃げ切って、その後で榮倉奈々ちゃんに出会ったら。そりゃ、天使に見えますわ。

 どこからどうみても、庶民の元気っ娘という風情がよかったです。眼鏡外す前も、その後も。どっちも可愛い。

 あと。このドラマで水嶋ヒロって演技派なんだなあと、思いました。実はどちらかというと苦手なタイプの俳優さんだったんですが。このドラマの柴田理人役は、本当にかっこよくて好きになりました。

 理人のライバルとして、弟の剣人を佐藤健さんが演じてらっしゃるのですが。もう見てて、完全に勝負あったな~と思いました。剣人では勝てない。剣人のキャラでは、無理。
 メイちゃんが理人に惹かれるのは必定で。

 理人はいつも、自分の感情を抑えながら、ゆっくりとしゃべるんですね。一言一言を丁寧に形にする。誠実さが伝わってきて、いいなあと思いました。

ドラマ『新金色夜叉』名場面

 春の宵の空気が大好きだ。

 今日の夜空はどんより曇って、空気は雨の匂いがする。この、湿気を含んだ空気が、いいのだ。

 コートは着てるけど、外を歩くと暖かい。マフラーが要らないくらい、今夜は暖かく感じた。

 星の見えない夜、外を歩いていると、必ずといっていいほど、私の脳裏によみがえる台詞。
 昔、夢中になって見てたドラマ、『新金色夜叉』のワンシーン。

>宮「星も見えないのね。暗い空」
>貫一「ああ。まるで宮さんの髪の色を、ぬりこめたようだ」

 なにぶん古い記憶ですので、一言一句正確に、とは言い切れないのですが、たしか上記のような会話をするシーンがあったのです。

 すごく、いい雰囲気で(^^)

 二人の間にあった憎しみや確執が消えさり、つかの間の甘い逢瀬を楽しむ、という場面でした。これがまた、とても胸を打つシーンだったのです。

 姦通罪のあった時代。いくら宮が離婚に向けて動こうとしても、どうしようもできず。
 表立って交際することなどできない二人が、夜の闇にまぎれて、互いの存在を確かめ合う、という。

 別に抱きしめあうわけでもなく、約束をするわけでもない。
 二人でいることがなにより幸せで。
 いろんなしがらみでがんじがらめに縛られた二人が、一瞬だけ自由になれたその、圧倒的な幸福感。

 むしろこのとき、星も月もいらなかったんだろうなあ、と思います。宮さんにしてみたら、星も月も見えないその暗闇が、まるで自分たちの立場を象徴しているようで、思わず言葉にしてしまったのではないだろうかと。

 その、少し憂いを含んだ宮さんの言葉に、その黒は宮さんの髪の色だと返した貫一さん。
 時間はかかっても、きっと大丈夫。必ず幸せにしてあげるっていう自信があるからこそ、言えたんだろうなあ。

 その後ふたりがどうなったか・・・・以下、ネタばれしていますので、ドラマを未見の方はご注意ください。

 最終回。どうなることかと固唾を呑んで見守る私の目の前で、ふたりはあっさり永遠の別れとなりました。
 宮さんが心臓の病で・・・です。

 原作は未完ですので、これはドラマのオリジナル結末ということになりますが、私はテレビの前で、唖然呆然、固まってしまったのを覚えています。

 急展開、というか、最後の最後でこれかい、と。
 月の輝く晩に、愛する人の胸の中で、というのはいかにもドラマ、という感じでしたが、あまりに唐突すぎて私にはなかなか受けとめられなかった。

 貫一さん、救われなかったしね(^^;

 だって、ずーっと兄妹のように育ってきた相手で、幼いながらに結婚の約束も交わしていて。当然結婚するものだと信じていたのに、年頃になった途端、見ず知らずの男に急にかっさらわれて。
 悔しくて悔しくて、相手の男ばかりか最愛の宮さんまでも憎んで。復讐を誓うことでやっと自我を保っていたのに、いろいろあって、やはり宮さんを憎みきれない、救おうとしてしまう自分を発見し。

 お互いに誤解も確執もとけ、心を通わせて。でもまだ片付けるべき問題は山積みで。それでも時間さえたてば、ひとつひとつ整理すればいつかは必ず、一緒になれると。信じていたのに。

 待ちわびたその時がやっときて。もう誰にも隠さず、晴れて一緒になれるという、まさにその瞬間、お別れとは。

 あの後、貫一さんはどんな人生を歩んだんだろう。
 そんなことを考えたりしました。

 役者さんもうまかったんですよね。
 宮さん役が、横山めぐみさん。『真珠夫人』の瑠璃子役や、『北の国から』の れいちゃん役で有名ですけど。私にとっては、宮さん役が一番でした。

 そして貫一さん役の石橋保さん。この方が貫一さん役でなかったら、私はここまでこのドラマにはまらなかったかも。それくらい、見事に演じてらっしゃいました。
 若さゆえの真っ直ぐ感が、伝わってきました。憎むことで精神の均衡を保っていたのに、憎みきれない、それを上回る愛情との板挟みで苦しむシーン。目で、しぐさで、もう全身で叫んでるんですよね。言葉はなくても。「宮さんが大好きだー」って。

 そして、クラシカルな背広が似合うところも素敵でした。特に、茶色がお似合いだったのです。

 まだ宮さんと和解していない時期に。宮さんに呼び出され、茶のレトロな背広で、思いつめた顔で待ち合わせに向かう情景が、なんとも印象的でした。
 負けまいと、心に言い聞かせてるんだろうなあと思って。
 懐柔されまいと自分を叱咤しているだろうに、でもその場所へ向かうこと自体、すでに負けちゃってるんですよ(^^;

 それにも気付かない。まっすぐな情熱。

 私は、月も出ない真っ暗な夜には、『新金色夜叉』の台詞を思い出すのです。

『ニューヨーク恋物語』感想

 『ニューヨーク恋物語』を見ました。昔のドラマなので、今見ると出演者がみんな若い、若い! 以下、ネタばれありますので、ドラマを未見の方はご注意ください。

 主人公の芽野明子を演じる岸本加世子さん。演技もお化粧も、濃い感じです(^^) 真っ赤な口紅には、時代を感じました。たしかに昔は、こういうはっきりした色の口紅流行ったなあ。

 そして明子が恋する謎の男、田島。田村正和さんが演じてらっしゃいますが、これがまた、えらくカッコイイのです。なんだこの不思議なオーラは?というくらい、ニューヨークの街が似合ってらっしゃいます。

 なんだろう。負けてないっていうのかなあ。あのエネルギッシュで洗練された街に、すっと溶けこんでるのがすごいです。その街で生きる人、そのものになりきっていて、それがいいんですよ~。さまになってます。

 このドラマ、明子は田島に惚れこんで、仕事もなにも投げ出してしまうほど尽くすのに、結局、田島は明子に感謝以外の気持ちを抱かなかった、というところが、せつなく、またリアルでもあります。

 実際、田島が実在するとしても、明子のようなタイプには惚れなかっただろうなあって思う。

 明子本人にも、それがわかって。悲しいけれど、彼女は自ら別れを選ぶのです。アル中で廃人のようになった田島を、立ち直らせた彼女は、また独りで日本へ帰っていきます。

 

 明子が自分でも言っていた通り、田島は明子に感謝はしていたけれど、それは恋愛感情ではなかった。
 もうこれは、どうしようもないですね。好きになろうとして、好きになるものではないし。恋愛って、どうしようもない、自分でも自由にならない感情の流れだから。

 明子がずっと田島と一緒にいたら。
 延々と嫉妬し続けることになったと思います。田島が惹かれる女性、すべてに対して。

 ドラマを見ていて。もう、最初から最後まで、明子に恋愛感情を抱かない田島と、そんな田島を好きになった明子の、すれ違いぶりが明らかでしたね。
 うわー、これはせつない、と思いながら見てました。

 どんなに好きでも。もうこれは、理屈じゃないんですね。田島にとっての恋愛対象にはならないんだから、どうしようもない。
 彼は、助けてくれたことには、感謝してると思います。田島は明子を、恩人だと思っているでしょう。もし明子が困って助けを求めることがあれば、全力で助けてくれると思う。でもそれは、恋人の窮地に心を痛める男性の視点では、ないんですよね・・・。
 あくまでも、恩人に対しての、感情しかない。

 友人のような、パートナーであろうとする田島と。
 恋人同士になりたい明子と。

 埋まらない溝が、悲しかったです。

 

 最後、明子が日本に帰ったのは、大正解だと思いました。このまま田島の傍にいれば、つらい思いをするだけだから。

 そして別れ際、最高の思い出をくれた田島は、優しい人です(^^)

 決して、本心からの言葉ではないけれど。飾り物の甘い囁きをくれたんですよね。

 きっと、明子が欲しかったであろう言葉。

 もうあの場では、いいんです。明子もわかってるから。それが嘘だって。でも、いいじゃないですか。二人はもう会うこともない。最後に、明子が望むなら甘い言葉のひとつやふたつ。

 明子の意向に副おうとする田島。
 素直に受け入れる明子。

 去って行った明子に、涙する田島。
 でも・・・その涙さえ。恋人に対する涙ではなかったと、私は思います。どん底の自分を、全力で救ってくれた親しい友人、深く関わり合った人との別れの寂しさ、なのだと思うのです。

 タクシーに乗った田島。サングラスで瞳の表情は見えないけれど、運転手に行き先を告げる声はすでに、過去を振り切っており。

 井上陽水さんの名曲『リバーサイドホテル』が流れだす頃には、田島にはまた新たな、明子のいない日々が、始まろうとしていて。

 心に残るドラマでした。