ドラマ『WITH LOVE』の感想

 10年ほど前に、『WITH LOVE』というドラマが放送されていました。

 竹野内豊さんと田中美里さんが主演です。以下、感想を書いていますが、ネタバレも含んでおりますのでご注意ください。

 このドラマ、なにが凄いって、竹野内さんの美貌を、あますことなくドラマに活かしているところが素晴らしい! 

 当たり役って言葉がありますけど、このドラマの主人公、CM作曲家の長谷川天(たかし)役は、竹野内さんにとって、まさに当たり役だったと思いますね。

 あらすじは、CM作曲家の長谷川天(たかし)と銀行員の村上雨音(あまね)が、間違いメールをきっかけに「hata」と「てるてる坊主」としてメール交換をするようになり、お互い素性を隠して本音を書いているうちに恋におちていく・・・という、映画の『ハル』みたいなお話です。

 主人公2人の心境の変化、その背景に描かれる人間模様がよく作られていて面白かったです。その一方、?というツッコミどころも満載で、回によって演出の差が激しいなと思ってましたが、後でその理由がわかりました。

 脚本や演出が、複数の人によるものだったんですね。

 だから、自分の好みの場面があるときもあれば、全く理解できないシーンも、両方存在したというわけです。

 私は最終回の演出が苦手でした・・・。

 ドラマで複数の脚本、演出というのは、よくあることなんでしょうか。一人の人が全部やったほうが、一貫性があるような気もしますが。

 やっぱり人によって、物事の捉え方って違いますよね。回によってドラマの持ち味がブレていくのは、残念な気もします。

 私が一番素敵だと思ったシーンは、薄暗いバーでの、天と雨音の出会いです。

 天は連れの女性に罵声を浴びせられ、グラスの水をひっかけられるのですが、その水がたまたま近くにいた雨音にかかってしまいます。

 ひっかけた側の女性は、怒りながら店を飛び出し、残された天は冷静に、「申し訳ない」と雨音にハンカチを差し出します。これがもう、ため息がこぼれるほどの美青年なんです。まさに少女漫画の世界で。

 この1シーンだけで、このドラマは成功したと思います。

 天(たかし)は元々バンドで成功したのですが、ボーカルのリナという女性とつきあっていて。その彼女が突然失踪したことからバンドは解散。その後彼は、CMなどの作曲家として活動していきます。しかし、リナとの絆が深かっただけに、その突然の失踪が彼に与えたショックは大きく。

 リナの失踪から立ち直れない天(たかし)が、「hata」として「てるてる坊主」にメールを打つところに、胸を打たれました。

 それがなかったら、間違いメールの相手に返事なんてしてないだろうなあって。リナが最後に残したのがてるてる坊主だったから、同じ名前を持つ相手に反応したのです。

 天は、仕事は成功してるし美人のガールフレンド(藤原紀香さん演じる佳織)もいるし、傍目から見て幸せにはみえるんですけど、心にぽっかりあいた穴があるんですよね。それが、リナの失踪。

 誰よりもわかりあえてると思い、全幅の信頼をおいた相手が、ある日突然いなくなった。

 その答えを探し続けてる、演技がうまかったです。竹野内さんは、あんまり表情を変えない。変えないんだけど、瞳が寂しさを物語るというか。

 部屋の雰囲気がまた、天の設定にぴったりで。無機質。コンクリート打ちっぱなしの、モノトーンの部屋。 

 GFの佳織とは打ち解け、互いに干渉しあわない緩い関係ではあるけれど、決して部屋の鍵は渡さない、とか。

 理由もわからないまま置いていかれて、傷ついてる。だからもう一度誰かと、深く関わるのを怖れてるんだと思いました。

 天は淡々としていて。あんまり物事に動じなくて、そのクールなところがかっこよかったです。表情を変えないけど、でもそれは心が動いてないわけじゃないんだなあ。

 天なりに考えてるし、思いやりをみせたりもする。

 ドラマの中で、雨音は及川光博さん演じる吉田につきまとわれます。雨音の友人たちは、天に「彼氏のふりをしてほしい」と頼むのですが、これを引き受けてしまうところが偉い。最初は嫌がって「どうして俺が・・」という感じなのですが、結局は助けてしまう。

 

 これも、優しさだと思いました。困って助けを求められたら応じてしまうという。これ、天には全くメリットないですからね。このとき、雨音のことをなんとも思ってないですし、こういう他人の恋愛に干渉すれば、相手の男に逆恨みされることもあるわけで。

 対する雨音は・・・。私はドラマの雨音を、好きにはなれませんでした。仕事でも、自分のミスをあんまり反省してなくて、うまくいかないことを人のせいにしている部分があったような。

 たとえば、間違って他人の書類を天に渡してしまい、天に確かめたところ「捨てた」と言われて憤慨するのですが、これ、天を責める権利なんてどこにもないわけで。

 天にしてみたら、もらった書類の中に1枚変なものが混じってたから、深く考えずに捨てただけだと思うんですよね。間違って渡したのは雨音の責任で、捨てたと言われて「ひどい」なんて言われる筋合いはないわけです。

 彼氏のふりをしてもらったことに対しても。雨音はキスされて憤慨しますが。流れを見ていると、天がそれほど出すぎた真似をしたとも思えなくて。

 吉田はかなり執拗だったし、初対面でも天はそれを見抜き、これくらいしなければ、諦めないんじゃないかと思ったんでしょう。

 友達が勝手に頼んだことなのに・・・と、天に怒りをぶつける雨音には呆れてしまいました。全部友達のせいなのか?という。そりゃ、後で友達には怒ってもいいと思うけど、そもそも全く関係のない天をあの場所に引きずりこんでおいて、怒るというのが理解できません。変なこと頼んですみませんでしたって、それくらいは言っても罰は当たらないような・・。

 そもそも、私が最初に「ダメだこりゃ」と呆れたのは、雨音が借りたハンカチを返すのに、佳織の目の前で、平気で天に声をかけたところです。

 普通女性連れの男性に声かけるときって、気を遣うと思うんですが。誤解されたくないし。

 それを平気で、声がけする無神経さに驚きました。この時点で、雨音に共感できなくなっている自分がいました。

 このドラマの中で、いいなあと思ったのは天と、天の所属する会社の社長(浅田美代子さん)ですね。

 社長は、妙に媚びたところがなく、ビジネスライクで気持ちがよかったです。このドラマは、作曲家とスポンサー、広告代理店の力関係を描いてるシーンもたくさんあって。きれいごとで済まない業界の、裏の一面なども出てきましたが、そんな中でも社長は、一本筋が通っている人物だと思いました。

 ビジネスはビジネス。

 それが逆に、優しさなのです。

 表面だけ友達面するよりその方がよほど、本音勝負のような。口先だけの、その場限りのお世辞よりよほど、真剣で。

 天の才能に惚れている社長だからこそ、辛口のコメントも言うし、それが結局は、天のためになっている。他には誰も、本当のことなんて、言ってくれないから。

 天の気持ちが伝わってくるドラマだなあと思ってみてました。表面上は社会的に成功しているし、なんの文句があるんだって感じですけど。内心、信じていた人が突然いなくなったショックは大きく。そして、ゆるやかに続く昔なじみの女性との関係も、癒される部分がある一方で、このままじゃいけないというジレンマが、あったんじゃないかなあって。

 どんなに仕事で成功しても、それをわかちあえる人がいなかったら、きっと寂しいだろうなあ。ある意味、そのために人は働いているんじゃないかとも、思うのです。心から信頼できる誰かと、喜びをわかちあうために。

 帰っていく場所を持たない人は、だから空虚なんだと思う。そして天もやっぱり、満たされてはいなかったような。

 後半、リナと再会したシーンがよかったです。そうなんですよ、意外に、いなくなった本人はケロっとしてるもんです。でも、もう一度会うことは重要だった。納得する部分があると思うので。人づてではなく、本人同士が向かい合うことが必要だった。リナが自分の意志で失踪したということがわかれば、天にはもうそれ以上、思い残すことはないはずです。リナに再会して、天はふっきれたと思う。失踪した張本人にちゃんと向き合って、理由はなんであれ、本人の意志でいなくなったのだと、それを確認できたのだから。

 自分の中で納得できなければ、思い出はいつまでも美しく、人の心を縛りつけるものなのでしょう。

 

 

 このドラマの残念なところは、最終回ですね。演出もそうだし、脚本も、ハッピーエンドではないほうがかえって、盛り上がったのではないかと思いました。天がピアノを弾き始めたとき、ウエディングドレス姿の雨音が涙を流すシーンがよかったです。そのときを最終回にすればよかったのに、と思いました。あのとき初めて、雨音は天があの「hata」だと気付いたわけで。でももう、戻れない。

 自分を「hata」ではないと否定する天の優しさも、ぐっときました。今さら名乗ったところで、仕方ないという気持ちはよくわかります。あえて、別人だと否定することで、雨音の心の負担を軽くしてあげた。

 せつないけど、二人は抱きしめあうこともないまま、天が否定したまま別れて最終回を迎えた方がよかったのではないかと思います。そして最後にもう一往復だけ、メールを交換し合ったら、よかったのではないかと・・・。メールで始まった2人が、それぞれ成長してまた、元の生活に戻っていく。ほろ苦いけど、そんな最終回が見たかったです。

 天は・・・、実は雨音をそれほど好きではなかったような気がするのは、私だけでしょうか(^^; メールの向こうにいた「てるてる坊主」という架空の人物に恋していても、それはイコール雨音ではなかったような気がするのです。

 雨音は、思いっきり天に恋していましたけどね。「hata」も天も全部ひっくるめて、もう全身で、「大好きです」光線を発していたような。天は、本当に素敵な人でした。外面も、内面も。

 

 竹野内豊さんはかっこいい俳優さんだなあと思っていても、こんなに美しい表情をみせる人だとは、思っていませんでした。姿だけでも、ドラマを見る価値はあります。あまり感情を表に出さないところがまた、クールで素敵でした。表情を大げさに変えたりとか、声を荒げたり、派手に泣いたりというのではなく。静かに目で語る、という感じです。

 そして、言葉よりも行動で、優しさを示すところがよかった。雨音に比べて、ずいぶん大人でした。それだけ、いろんな葛藤を抱えて生きてきた人なんだと思いました。

 主題歌は、MY LITTLE LOVERの『DESTINY』で、このドラマにぴったりです。

>この世界は 終わっても

 この歌詞がいいんです。人との出会いは儚くて、でもそこで生まれた感情や、学んだことはずっと残るわけで。終わった世界があれば、また始まる世界があって。「hata」と「てるてる坊主」の生きた、メールという小さな世界を、暗示するような歌詞だと思いました。

DESTINY

「ドラマ『WITH LOVE』の感想」への2件のフィードバック

  1. カロンさん、こんにちは。
    WITH LOVEの検索から、カロンさんにたどり着きました。
    放送から21年経ったドラマを偶然2日前に見て、夢中になりました。カロンさんの投稿からも11年経っていますね(笑)
    竹野内豊さんの天は、本当にパーフェクト。竹野内豊さん=天。本当に美しくて、セクシーで、狂おしい人・・・と言う感じで、このドラマは、この1点でほぼ満足できる作品と言えそうです。
    最終回については(笑)を禁じえませんでしたが、恐らくスポンサーの怒りを買ってでも死守したあの無駄な復習時間によって、全くのハッピーエンドでも悲劇でもない天と雨音のこれからの空気感を違和感なくイメージできたかなと思いました。結局、誰といてもいなくても、天はひとりで苦しみ続けるでしょう。だから、雨音のようにどこか無神経な女性が必要かもしれません。来ない雨音を待ってずぶぬれになっていた天の一途さは切なくて胸キュンの極致でしたが、いつ来るかわからない何かを待ち続ける一途さが、天の創作の原動力なのだろうと思います。

    WITH LOVEでたどり着いたカロンさんのお部屋(笑)で、久しぶりにくつろいで過ごさせていただき、ありがとうございました。私にとっての冥王星は、一番遠くて一番引力のある☆です。
    またお邪魔させてください。

    PS.玉置浩二さんがプレゼントしたNever Say Goodbyeという曲をマリーンさんが歌っているユーチューブ動画があります。30年前の曲ですが、最近見つけて感動しました。よろしければ、ぜひ。
    https://www.youtube.com/watch?v=QOdVq4BsGrA

  2. 永倉さんこんばんは。そうですか、放送から21年経った今、夢中になりましたか。お気持ちすごくわかります。このところ、どこのテレビ局もドラマの低視聴率に悩んでいますが、『WITH LOVE』を再放送したら、結構な視聴率がとれるんじゃないかなあと、私もそんなことを妄想したりしています(^^)
    それくらい竹野内さんの魅力が存分に発揮された、時代を超越した名作でした。最終回については本当にどうしてああなってしまったのか、惜しまれますが、間違いメールでの出会い、という、当時としては最先端のシチュエーションを、強調することがおしゃれだと思っての結果なのかもしれません。

    >結局、誰といてもいなくても、天はひとりで苦しみ続けるでしょう

    そうですね。少なくとも雨音と一緒にいて、天が幸せになる未来が見えない…天が会いたかったのは、リナの幻影の向こうに浮かぶ、てるてる坊主だったから。

    ブログ、いつでもまた、遊びに来てください。お待ちしております(^^)

    マリーンさんが歌っている動画、拝見しました。Never Say Goodbye とても素敵な曲なのですが、幸福感あふれる歌詞に違和感が。うーん、違う歌詞だともっと違うイメージの曲になるのかな?と思い、調べてみたら、なんと玉置さんご自身が、後に違う曲名で歌われているのですね。そのときの作詞は須藤晃さん。
    この曲、もし松井五郎さんが詞を書いたら、どんな感じになるのか、聴いてみたいです。玉置さんの作る音は根底に哀しさがあって、ハッピーエンドじゃない感覚があります。
    素敵な曲を教えてくださって、ありがとうございました。

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