2005年 レ・ミゼラブル観劇記 2回目

 レ・ミゼラブルを見に行ってきました。今年はこれで2度目です。以下、感想を書いていますが、ネタバレも含んでいますので、未見の方はご注意ください。

2005年3月15日(火)18時 帝国劇場にて

バルジャン=山口祐一郎

ジャベール=岡幸二郎

エポニーヌ=新妻聖子

ファンテーヌ=井料瑠美

コゼット=剱持たまき

マリウス=藤岡正明

テナルディエ=徳井優

テナルディエの妻=森公美子

アンジョルラス=小鈴まさ記

司教=高野二郎

 今回の主目的は、山口バルジャンと岡ジャベールです。山口さんに一番合ってるのが、岡さんとの組み合わせだと思うんですよ。私見ですが、とにかく一番好きな組み合わせ。司教さまとの出会いから慈愛を学んだバルジャンに対し、まるで機械のように無機質な感じのする岡ジャベールがよいのですよ。その冷たさが対照的で、見ごたえがある。

 それに山口さんは岡さん相手だと、全然容赦してない感じがして、迫力が増すのです。山口さんは相手によって自分の芝居を変えるけれど、岡さんを相手にしたときが一番、安心して全力を出せてる気がする。岡さんには、どう向かっていっても、必ず受けとめ、はね返す安心感があるのです。だから、レミゼラブルコンサートの頃から、私の一番好きな組み合わせは山口×岡でした。そしていざ、観劇した感想は・・・・。

 

 あれ、岡さんてこんなに声が若かったっけ?と思ってしまいました。それが第一印象。バルジャンに対して、ジャベールがこの声だと少し若すぎるかも・・・という危惧です。でも、迫力は山口バルジャンに負けてません。対決シーンには引き込まれてしまいました。やはり、岡さんうまいですね。なんとなくですけど、プライベートの山口さんと岡さんって、お互いに全然性格が違って、理解し合えないような気がします。もちろん舞台人として、互いに尊敬はしているでしょうけれど、人生に対する考え方とか、生きてきた環境がまったく別な気がするのです。そういうところが、バルジャンとジャベールを演じるときに、いい効果を生み出しているのかもしれません。相容れない2人、という雰囲気を感じるのです。馴れ合いではなく。

 山口バルジャンは、司教様との出会いから改心のシーンまでがものすごくよかった。レ・ミゼラブルの楽曲を、思いきり堪能しました。「ジャンバルジャンは死んで生まれ変わるのだ」のところが、特に好き。仮出獄許可証を破り捨てる動作と合わせて、一人の人間の壮大な再生物語を見ているのだと、胸がいっぱいになります。

「彼を帰して」の歌いだしが、いつも以上に優しい声でびっくりしました。いつも、こんな歌い方だったっけ?と。一つ一つの言葉を、ものすごく丁寧に、撫でるように歌っていました。

 エポニーヌの新妻さん。やはり、エポニーヌは新妻さんがいい。初日のANZAさんもよかったけど、新妻さんを聴いてしまうと新妻さんに魅入られてしまう。ANZAさんの声から甘さをとって、ちょうどよくコショウをきかせた感じ。気の強さだったり、孤独感だったり、プライドの高さだったり。私が想像するエポニーヌ像にぴったり当てはまる声でした。声量もあるし、聴いていて気持ちがいい。これから期待の女優さんだなあと思います。

 ファンテーヌの井料さん。はかないイメージでよかったです。病室でコゼットの幻を見るシーンでは、死期が迫っているのがひしひしと伝わってきました。前回の観劇記でも書いたけど、

「あのとき工場で~」とバルジャンに悪態をつくシーンもいい。どんなに怒っても、どこかか弱い印象があって、バルジャンが思わず守りたくなる気持ちも、わかります。

 コゼットの剱持さん。澄んだ声がコゼットにぴったりです。

 マリウスの藤岡さんは初めて拝見したのですが、今までマイベストだった岡田マリウスよりも、いいと思ってしまいました。なんていうのか、声に魅力があって、歌がうまい。凛としたものを感じます。優しいだけじゃなくて、自分の信念にプライドをもっているところがにじみでていて、こういうマリウスだからエポも惚れたのか、と納得してしまいました。

 テナルディエの徳井さんは、初めて見るのですごく楽しみだったんですけど、歌の部分がもう少しよければなあと思ってしまった。存在感としては、テナルディエにぴったりだと思います。背の低さだったり、しぐさそのものが面白くて、そこだけ見ると、ミスターテナルディエ。だけど、惜しいのは歌。下手じゃないんだけど、いかにも楽譜どおりに、きっちり歌ってますという感じで余裕がみえないんです。歌うことそのものに神経をとがらせて、そこに表情を乗せる余裕がない感じ。

 声だって悪くないし、舞台に立ったときに醸し出す個性的な雰囲気は天性のものなのに、歌だけが・・・・もったいないと思いました。もっと練習して慣れてきて、ずる賢さやお調子者の表現が歌にこめられたら、素晴らしいテナルディエになると思う。上手に、楽譜を崩していけたら、もっとおもしろいと思う。そういう徳井さんが見てみたいです。

 森公美子さんとの相性は、最高でした。

 テナルディエ妻の、森公美子さん。この方は、とにかく芸達者。余裕があるんだなーと思います。歌もセリフも演技も、完璧に頭の中に入っているので、毎回空気を読みながら絶妙のタイミングで客席を笑わせにくる。レ・ミゼラブルは暗い話だけど、森さんがいると救われる気がする。徳井さんとの相性がよかった~。徳井さんの歌にもう少し余裕がでてきたら、最強のコンビだと思いました。

 アンジョルラスの小鈴さん。個性的で、とても美しい声ですが、アンジョルラスというイメージではないかな~。学生のリーダーにしては、あまりにも大人の男性すぎる感じです。どちらかというと、太くて低めの声だから、若さあふれる・・・・というよりは渋い感じ。血気盛んなイメージはないですね。落ち着いた、大人の魅力という声です。アンジョルラスは少し、キャラが違うのではと思ってしまいました。

 司教さま、高野さんは、厳かな声が心に沁みました。やっぱり司教さまは高野さんでないと、落ち着かないです。高野さんの声を聴くと安心する。

 ガブローシュの局田さん。なんでこの方の声はこんなにもせつないのか。歌声を聞いただけで、涙が出そうになります。虚勢を張っていても、ガブローシュの生きてきた人生の過酷さが伝わってくる声なのです。元気であればあるほど、けなげに思えて泣けます。女性なのに、どうしてこんなに少年役が似合うんでしょう。子役がやる以上に、リアルさを感じます。私の中では、ガブローシュといえば局田さんです。

 本日のリトルコゼットちゃんは、ものすごくきれいな声でびっくりしました。きっちり歌いあげてます。ただ、あまりにもきれいできっちりしているから、コゼットの不安とか悲しみが伝わってこないのが残念でした。バルジャンと手をつなぎ、森を歩くシーン。歌の中に、バルジャンに対する感情が全然感じられなかったのです。初日は逆に、歌が不完全な分、そこにコゼットの戸惑いが感じられたかな。どちらが好みかというと、やはり感情表現を優先させてほしい。いくら上手にうたっても、そこに心がないと悲しいのです。

 小さな子だから、歌を歌って、そこに感情をこめてというのは難しいと思うけれど、どちらかといえば歌を崩してでも、自分の気持ちを表現してくれた方が、観客に伝わるものが大きいはず。

 娼婦同士の罵りあいシーンの女性陣2人が、すごく迫力あって印象に残りました。あれ、なんていう役なんだろう? 「あたしのこのショバ荒らすのか~」「梅毒を撒き散らし~」のシーンです。いつも以上に、迫力があった感じ。

 帝国劇場は、健康増進法の施行に伴い、全館禁煙となりました。あの煙りくさい一角がなくなって、空気がきれいになりました。帝劇、グッドジョブ。どこの劇場でも、禁煙にしてほしいです。煙は流れてくるので、一ヶ所で吸われると辺り一帯がみんな臭くなるのです。臭いだけじゃない、健康にもものすごく悪い。

 いまどきタバコを吸ってる人って、ちょっと・・・・・な人が多い気がする。

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