ダンス・オブ・ヴァンパイア観劇記 その4

 7月5日ソワレ。『ダンス・オブ・ヴァンパイア』2度目の観劇に行ってきました。

 以下、ネタバレも含んでいますので、未見の方はご注意ください。

 今回はアルフレートが泉見洋平さん。サラが大塚ちひろさんでした。このお二人は、雰囲気似てますね。前回見たときの組み合わせである浦井・剱持ペアに比べて、親しみを感じさせるキャラでした。本当に、どこにでもいそうな若者カップルという感じ。

 今回の泉見さんと大塚さんを見て、初めて浦井・剱持ペアの特色に気付きました。それは、浦井・剣持ペアがどこか浮世離れした、生生しくない存在感を持つ稀有な存在であること。

 泉見さんも大塚さんも歌は声量あるし、上手だし、声もきれいだと思うんですが、あくまで「人間」という感じ。だけど浦井さん剱持さんは本当に、遠い国の、どこかのおとぎ話に出てくるようなイメージなんです。

 こういうのは好みの問題だと思いますが、私は浦井・剱持ペアが断然好きです。

 大塚さんはちょっと色っぽすぎるような感じがしました。雰囲気がいかにも女性という感じで、外界を夢見る少女の役としては大人っぽすぎるかなあ。もう十分、駆け引きを知ってるという印象を受けました。完成されているという感じ。

 剱持さんは、アルフレートと対峙したときにどこかで中性的な雰囲気を残していて、そこがとても魅力的だなあと思いました。子供の部分と、大人の部分がうまく同居しているというか。だからお城や舞踏会に憧れるのだと思います。大人の女性は、お城だの舞踏会だのよりもっと他のことに興味を持ちそう。剣持さんからは子供っぽい無邪気さや好奇心が伝わってきました。駆け引きも、大塚さんの余裕にくらべたら全然、まだ大人にはなりきれない感じです。

 それと、中性的という意味では妖精ぽいですね。生生しくないんです。お風呂のシーンも、バスタオル一枚なのでたしかにドキドキするはするんですが、その一方で心のどこかでなんだか遠い存在のように感じている自分がいます。だから、大塚さんを見るとバスタオル姿に赤面してしまうけど、剱持さんだとあんまり色っぽく感じないというか。きれいなんですけどね。それが、あんまりいやらしく感じないというのは、妖精ぽいせいだと思います。

 それとアルフレートの浦井さん。泉見さんを見た後だとよくわかるのですが、彼はほんっとに、この世にいるはずのない王子様キャラなのだと実感しました。生活感まったくなし。あんな人どこにもいない(笑)。だからこそ、剱持サラにぴったり。浦井さんは、親近感のない存在ですね。たとえば職場で、近所で、ああいう雰囲気の人がいるかといえば、絶対ありえないと思う。

 

 2度目に見て気付いたことがあります。シャガールの愛人マグダの歌ですが、演歌っぽいと思ったのは私だけ? なんでマグダはこう、演歌の匂いが漂っているんだろう。作曲者は日本の演歌に影響を受けたのだろうか。ちょっとアレンジすれば、新人女性演歌歌手が歌ってもおかしくないメロディだと思いました。曲中に、こぶしを感じましたよ。

 前回、笑い転げてまともに聴けなかった、舞踏会お誘いのシーン。今度は心の準備をしていたせいでちゃんと聴けました。なんで前回あんなに笑えたのか不思議なほど、今回は冷静に聞けてよかった。あの構図は、公式トップページの構図とかぶるのですね。仁王立ちになって見下ろす伯爵と、それを見上げるサラ。

 フィナーレ、最後に超特大伯爵顔写真が下りてくるのですが、あの写真素晴らしいです。1度目に見たときもいいなと思ったけど、改めてじっくり見たんですがあの表情最高です。顔が「俺様、大勝利!!」と言っているようで笑えました。いろんな風刺やテーマのある深い作品ですが、最後あの写真を見たら、すっきり笑って帰れます。あの表情をとらえたカメラマンのセンスに喝采です。奇跡の一枚かも。山田さんの演出に脱帽です。

 あれ、ポストカードかなにかにしてもらえないでしょうか。劇中で使うだけでは、あまりにもったいない。グッズにしてくれたら迷わず買います。そして『ダンス・オブ・ヴァンパイア』の余韻にひたります。

 最後、ダンサーの踊りも圧巻で感動ですね。手拍子の入れ方が途中で変わるので、今ひとつ盛り上がれずに今回もスタンディングオベーションできなかったのが残念です。心はスタオベしてたんですよ。オーケストラも重厚だし、ダンサーはうまいし、振り付けは面白いし、照明はきれいだし、歌は迫力あるし、伯爵には泣かされるし。これは見れば見るほどハマるミュージカルかもしれません。ゴシックでホラーでコメディで。しかも奥底には人生哲学があったり。いったいどういう舞台なんだよ、と思いました。私は『エリザベート』より『MOZART!』よりも断然この『ダンス・オブ・ヴァンパイア』が好きです。

 一番最初のオーヴァーチュアを聴くと、荘厳で背筋がぞくぞくします。運命が動き始めるときのような、重々しい響き。北の国の吹雪の冷たさも伝わってくるようで、うっとりです。その後のコメディ的要素を全く感じさせない音楽。

 

 自分で思い出して書いてるうちに、また見たくなってきました。

 そうそう、気が付いた点を一つ。それは伯爵の牙です。あれ、あまりにも大きすぎます。なるべく遠くにいる人にも見えるようにと少々大げさに作ったのだろうけど、バランスが悪いと思いました。もう少し小さくしないと滑稽だし、意図的に口を大きく開けたときに見えるくらいでちょうどいいんでは?と感じました。あまりにも牙が大きい(長い)ので、常に牙が見えるような状態で、かっこ悪いです。カーテンコールのときに、すっごく牙が目立ってました。気のせいか伯爵も、牙の付け心地が悪そうにみえたし。例えは悪いのですが、歯並びが悪くて口が閉じられない状態にも、近いような。改善してほしいなあと思いました。

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