7月8日マチネ貸切。『ダンス・オブ・ヴァンパイア』を帝国劇場で見てきました。以下感想ですが、ネタバレしてますので未見の方はご注意ください。
前2回はどちらも1F前方下手での観劇でしたが、今回は初めて1F前方上手でした。見る角度が違うと、違うものが見えて面白いです。初めて伯爵の牙装着シーンを見てしまいました。見たといっても後姿でしたが。その背中に向けて、「がんばれ」と心の中で声援を送ってしまったのは言うまでもありません。
3回目の観劇にて実感。私、この舞台のセンス大好きです。はまってしまいました。『エリザベート』や『MOZART!』より好きですね。楽曲やダンスも素晴らしいです。オーケストラの音に感動します。気のせいか、回を重ねるごとにどんどん良くなってる気がします。出演者の方に余裕が出てきた感じ。間のとり方とか声の出し方、いつも決まってるわけじゃなくてその日の空気を読みながら、変えているんだなあと思いました。
今回の組み合わせは大塚ちひろさんがサラ役で、泉見洋平さんがアルフレート役。大塚さんは相変わらず可愛いというよりも大人の色気を感じましたね。だから、サラ役には少し、違和感があった。歌声は素敵だし声量もあると思うのですが、とにかく雰囲気が色っぽすぎる。こんなに色っぽいと、脚本上まずいんではないかしら?と思いました。サラには子供から大人への過渡期、その独特の雰囲気を醸し出してほしいです。
泉見さんは大熱演という感じで、アルフレートの単純なところがガンガン伝わってきて面白かったです。ふと思ったのですが、そういえば演出の山田さんは、この舞台をアルフレートの成長物語と位置づけていましたね。でも、アルフレートって全然成長していないかも。
臆病なところは変わっていないし、サラの気持ちをくみとる能力にも欠けてるし、最後まで見て「一つ大人になったね、アルフレート」なんて感慨を持つお客さんいないと思う(^^;
この物語に出てくる人物って、みんな愛すべきキャラで憎めないなあと思いました。自分勝手だけど、それが微笑ましくもある。腹が立つんじゃなくて単純に笑っちゃう。『エリザベート』のときには、エリザベートのわがままぶりに、不快な気分になったことが何度もあったのです。すっきりしないというか。その点、この『ダンス・オブ・ヴァンパイア』はガハハって単純に笑える。この違いはなんだろうか。コメディだからかな。とにかく、見終わったときに嫌な感じがないのです。
シャガールの単純キャラもいい。サラのことは本当に大事に思ってるだろうし、命がけで助けにも行ったんだろうけど、マグダには欲望を抑えられない。マグダ役の宮本裕子さんいいですね。声量がないのがつらいけど、雰囲気は抜群です。少し寂しそうな、線の細い美しい人。
シャガールって娘の前では娘思いの厳格な父、愛人の前ではへろへろのエロ親父で、そのどれもが彼にとっては真実なんだろうなあと思いました。佐藤正宏さんは演技うまいですね。憎めないもの。あんまりにもあっけらかんとしてる。罪悪感がなく、欲望におぼれるとはこういうことかと思いました(笑)
シャガールの妻、レベッカの方にこそ、むしろ少し憤りを覚えました。それはサラを助けにいかなかったから。子供って、自分の命よりも大切なものじゃないのかな。夫が助けにいくときに、どうして自分もついていかなかったんだろう。
頭の中で、「ガーリック、ガーリック」の歌が鳴り響いてます。魅力的な楽曲が多いのも、この舞台の魅力の一つ。オーケストラの音楽にうっとりです。クラシックっぽいのもあればロック調もあり。歌に関しては、どことなく教会の聖歌を思わせるようなものもありました。(私だけのイメージかもしれないですが)
目の前で繰り広げられる群舞も、迫力あり。私はチケットかなり恵まれてましたね。たまたま前方席で見られたので、本当にお得だったと思います。でも一番よかったのは、伯爵の表情がちゃんと見られたということでしょうか。
すっかり伯爵ファンになってしまいました。お茶目すぎます。基本的に喜劇キャラですね。教授との初対面シーンなど、すっかりミーハーな人になっちゃってるし。サラに見せる笑顔がいいです。ただ唯一、泣かせるのが「抑えがたい欲望」かな。
伯爵の心の奥底にある、渇望の源はこれだったのかーと思います。
毎日でも聞きたい。
帝劇に住みこんで毎日、あの歌声を聞いていられたらなあ、などと妄想してしまいました。もう中毒ですね。CDでは絶対無理な、あの独特の空気。甘く優しく広がる声。
このミュージカルは、人によって大きく好みが分かれているようですが、私は大好きです。一見するとB級ホラーコメディなんですが、ちゃんと深いテーマや風刺もあって、考え始めるときりがない。深く考えずに単純に楽しむもよし、徹底的に考えて解明をめざすもよし、いろんな楽しみ方があると思います。