ダンス・オブ・ヴァンパイア観劇記 その13

 7月20日ソワレ。帝国劇場で『ダンス・オブ・ヴァンパイア』を観劇してきました。以下、ネタバレも含んでおりますので、舞台を未見の方はご注意ください。

 7月19日のブログに書いた教授の「早く私を・・・」の台詞。あれは、もしかしたら私の勘違いで、最初から2回同じような台詞があったのかもしれない。今日も2回言っていた。あのシーンは全体的に、その日によって多少言葉が違うことが多い。だから私の記憶もおぼろげで、自信がない。変なこと書いてしまって、市村さん、すみませんでした(^^;

 

 アドリブは、どこまで役者の自由裁量に任されているのかなあと、考えてみた。あんまり台本から逸脱してしまうと、注意を受けたりすることもあるんだろうか?脚本を書いたクンツェさんは、言葉の細かいところにこだわりがありそう。この話自体も、いくらでも深読みできるように、きっちり計算された構成の上に成り立っているように思う。

 聞いた話だが、脚本家の橋田壽賀子さんは、台詞に関して一文字も逸脱することを許さないとか。演技力を求めるよりも、いかに正確に台詞をしゃべるか、を重視するという。この場合、役者さんは大変だ。感情にまかせて演技をしたら、多少は台詞が違ってくることもあるだろうに。大筋で間違っていなければ、意味が通じればそれでいいと素人の私なんかは思ってしまうのだが、脚本家だから「言葉に対するこだわり」が人よりは余計にあるのかなあ。

 霊廟シーンは、市村正親さん演じる教授が、上手に場を支配していて楽しい。その日のお客さんによって笑いのポイントは違うし、アルフレートの移動の速さも微妙に違うから、教授がそれに合わせて台詞を変えたり、間を変えたりするのはさすが。かっちり毎日同じことをやっていたら、ああいう楽しい雰囲気は出ないと思う。

 アドリブといえば、ヘルベルトがアルフレートに迫るシーンも見逃せない。毎回、少しずつ趣向が違うから笑える。お風呂のカーテンが開いたとき、どんなポーズでいるか、というのがまずポイント。あの長く、美しい足が露になったとき、客席から笑いがおきるのは、毎回共通しているけれど。

 ちなみに今日は、教授に撃退されて逃げていくとき、負け惜しみっぽくお尻ペンペンをしていた?ように見えた。これは新パターン。B席から肉眼で見てるから、あんまり細かいところはわからなかったけど、そんなふうに見えた。

 山口さんにも、もっと弾けてほしい場面があります。それは、一幕の最後。クコールが伯爵にすりすり甘えるシーンです。もっともっとぶっ飛んじゃっていいと思うのですが、駄目ですか(笑)。あの場面は、消化不良なんです。あんなにクコールが甘えてるのに、比べたら伯爵は冷静すぎ。初めて見たときは甘い声だと思ったけど、日が経つにつれてクコールとの感情の差が明らかになってきた感じ。もっと思い切り、こっちが引くくらい甘~い声で、そしてしぐさで「くぅこぉおおおる」とやっちゃってください。あの甘さじゃ足りません。最近は、あっさり気味でクコールが可哀想。あれだけ派手にパフォーマンスしているんだもの、それ以上に乗ってあげないと気の毒だし、見てるほうも暴走する伯爵を見るのが楽しみなので。

 あっさりにしたい気持ちはわかりますが。だって、「昼間は何もできません」だって、このところずっと、変なアクセントをつけずに普通に言ってますもんね。その後の流れを考えて、敢えて笑いに走らない方向へ行っているのでしょう。

 でも、いいんですよ。行っちゃってください。あそこは思いっきり笑うシーンでいいと思う。その後、「アルフレート」と鋭く呼ぶ一言だけで、空気は真剣なものになるから。もう、そこから先は息をするのも勿体無いくらいの勢いで集中して聴いてます。

 

 「老いぼれに頼るな」のときのポーズが好き。ロングトーンをこれでもかとばかりに披露して、悠然と歩き去る姿が好き。そして、振り返ったときの力強さが好き。

 伯爵にはすっかり心を奪われてしまいました。 

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