『ダンス・オブ・ヴァンパイア』リー君の心意気

 ついに「ダンス・オブ・ヴァンパイア」CD発売決定です。当初は発売の予定がなかったそうですが、リクエストの多さに東宝が動いたのですね。すごい。DVDや、再演もこの先、もしかしたら実現するのかも。

 第一幕は大塚サラ・浦井アルフレート。第二幕は剱持サラ・泉見アルフレート。という組み合わせだそうです。ただし、主なナンバーは、ボーナストラックとしてもう一つのペアのものも収録するとか。

 私は、このペアの組み合わせに感動しました。「愛のデュエット」と「サラへ」は、それぞれ剱持さんと泉見さんが一番だと思っていたからです。だから第二幕がこのペアであることは、偶然ではないと思いました。私と同じように感じた人が、この組み合わせを選んだのでしょう。

 愛のデュエット。伯爵と一緒になって歌う前、最初はサラが1人で苦悩を吐露するのですが、このシーンの表現力は剱持さんが抜きん出ていますね。本当に苦しんでいるのが伝わってくる。伯爵の誘惑に、なぜ抗えないのか説得力があります。

 思春期というのは精神的にものすごく不安定な時期で、わけもなく落ち込んだり、腹を立てたり、泣き出したり、自分で自分をコントロールしかねるときがあります。それは、体の成長に心がついていかない戸惑いだったり、周囲が自分を大人として扱うことへの違和感だったり、そりゃあもういろんなことがあるわけです。そういう感情の揺れを、剱持さんはうまく歌い上げていると思います。最初の頃に見たよりも、後になるにつれてこの「愛のデュエット」を激しく歌うようになった気がします。先日、剱持サラを見たときに、「あれ、こんなに苦しみながら歌ってたっけ?」とびっくりしました。それだけ、サラ役になりきって、役を自分のものにしたんだと思います。

 泉見さんもまた、熱さにかけては剱持さんに負けていません。「サラへ」を歌うとき、アルフの心はサラのことでいっぱいになっていて、どんな敵にも立ち向かうのだと体中で叫ぶように訴えます。たしかにアルフは臆病だし、抜けてるところがあるし、傍から見たら頼りにならない情けない青年なのですが、この「サラへ」を真摯に歌い上げる泉見アルフを見ていると、アルフが好きになります。アルフには、体面もなにもないのです。傍から見てどんな姿に見えようとも、彼は大真面目にサラを愛し、守ろうとしているのです。その姿がいかにも若者らしい純粋なものだから、好感が持てます。

 計算などない。ただ激しく愛を歌う。歌わずにはいられない、あふれだす感情。若いっていいなあ、そうだよね、この激しさ、この単純さが若さなんだよね、としみじみアルフをみつめてしまいます。

 公式HPのリー君のセンスが気に入りました。予想ジャケットその1とその2。その1はいつもの写真かと思いきや、伯爵の顔の向きが微妙に違う。そうです。サラではなく、正面のこちらを向いている写真なのです。これは初めて見ました。今回の舞台を宣伝するにあたり、何百枚と撮ったうちの1枚なのですね。実際広報に使われるのは一部だけだから、日の目を見ずに没になった写真は山のようにあるんでしょう。その貴重な1枚。ただ、顔の向きが違うだけなのに、それだけでまったく印象が違います。小さな写真なのに、伯爵の目力の凄さ。いいものを見せてもらいました。リー君、ありがとう。この写真を使ったのは、リー君の心意気ですね。

 その2のセンスに関してはもう、言うことはありません。もし、その1とその2が発売されて、私がそのうちの1枚を買うとしたら、絶対こちらのジャケットを買います。全然怖くない伯爵の牙写真。吸血鬼がこんなに怖くなくていいのか?という疑問はさておき、この表情を撮ったカメラマンに拍手。

 伯爵の優しさと、気弱さが伝わってくるこの写真。(中森明菜の歌を思い出しました)。リー君の「まあ、ないな、これは」という言葉に笑ってしまいました。PCの前で本当にそう呟いてる姿が、リアルに想像できたから。

 海外の吸血鬼は不気味で恐ろしいのに、日本版の伯爵の愛らしさといったら! なんなんでしょうこの人は(笑)

 どちらのジャケットにも、ちゃっかりリー君が写っているところがいいですね。

 ただ。これだけジャケットを誉めておいてこう言うのもなんですが、CDよりも実際の舞台を見る方をお勧めします。CDを買って、何度も聞くよりも舞台の生の音に触れた方がずっといいです。私は今のところ、CDを買うつもりはありません。その予算で、チケットを買いました。

 8月が終われば、もう帝劇に行ってもあの音楽に浸ることはできません。それは寂しいけど、この舞台をこの時期に見られたのは、本当に幸運でした。感謝です。

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