また好きな香りをみつけてしまった(^^)
もう無条件で、「これいい!!」とピンとくる香り。
それはしょっちゅうあるわけではなくて。私は花を見るととりあえず匂いを嗅いでみるのだけど、心の底から「コレだ!!」と叫びたくなるようなのをみつける瞬間は、そうそうない。
泰山木(たいさんぼく)の花。
お店に売られていて、最初は花の大きさに戸惑った。なんだろうこれ、珍しいなあーと。
花自体は、特別複雑な構造をしているわけでもなくて。色も単純な白。ことさら、目を引く派手さはない。
葉は、花にふさわしく大きめで、艶々している。バケツに無造作に入れられているその白い花に、顔を近づけてみると芳香が鼻をくすぐった。
なんともいえない、体が清められるような香り。爽やかなんだけど、それはオレンジとも違うし、百合とも違って。いや、百合は似てるなあ。百合の匂いに、魔法のスパイスを足したような。
その魔法のスパイスは、お香のようなものを想像した。
なんというか、心も体も、清められるというか、厄落としになるような感じ。
家に帰って大きい花瓶に生けた。芳香は部屋中をひそやかに、でも確実に満たした。
仏教的な花、というイメージを抱いた。蓮華の花にも似ているような。極楽があるなら、きっとそこにはこの花も咲いているんじゃないかと思う。大きな寺院に似合う花。
時間がたつと、つぼみは大きく開いた。お店で見たときよりもまた一段と、花は大きく見える。開ききった花の中心から、雄しべ(だと思う)がポロポロとこぼれて落ちた。それもまた、風情がある。
ずっと部屋にいれば鼻も慣れてしまうけれど、外出先から戻りドアを開けた瞬間には、いつも新鮮な驚きと陶酔がある。思わず深呼吸して、それから花に顔を近付けて、香りを確かめる。
この花の香りを確認するたびに、「清冽」という文字が頭に浮かぶのはなぜだろう。ほんと、清らかなイメージなのだ。深山の清流。自らが清いだけではなく、触れるものすべてを、浄化していく感じで。暖かく包み込むのではなく、ピリっとするくらいの厳しさもあって。だけどその、悪いものを払いのけるような白い手の力が、怖いのではなく心地がよくて。
泰山木は「清冽」な花だと、そう思いました。