映画『はやぶさ』感想

 映画『はやぶさ』を観た後、プラネタリウムで星空を堪能しました。

 以下、映画の感想を書いていますが、ネタばれを含んでいますので未見の方はご注意ください。

 映画は、竹内結子さん演じる水沢恵が、とてもいい味を出していたと思います(^^)
 元々好きな女優さんだったんですが、可愛いのに地味、そして挙動不審、というキャラを見事に演じてらっしゃいました。

 人の目をきちんと見られない気弱さ、その一方で好きなものに一直線になれる情熱、不可能な量の翻訳をきっちり期限までに仕上げてしまう天才ぶり、いろんな表情を見せる水沢に、どんどん惹きこまれていきましたよ。

 そして、水沢だけではなく、「はやぶさ」プロジェクトを成功に導いた多くの人たち。水沢以外は、みんな、モデルの方がいたみたいですね。誰もが本当に魅力的で、みんなの努力が実り、無事打ち上げとなったときの映像では、思わず涙が出てしまいました。

 ここまで来るのが、大変だったんだなあって。

 当たり前ですけど、一人の力じゃなくて。
 宇宙が好きで、「はやぶさ」に託したそれぞれの熱い夢が、結集してやっと形になった瞬間だったから。

 鹿児島の内之浦で打ち上げがあったとき、それを現地の方々が、老若男女、みんなわくわくして嬉しそうに見上げてるんです。それを見たとき、胸が熱くなりました。

 無数の力が合わされば、奇跡が起こる。

 目に見えない人の思いも、重なれば大きな流れをつくる。

 ロケットの発射を、みんなが子供にかえったような無心な目でみつめている姿。

 開発に携わった方々の思いも、もちろんですが、その他にもたくさんたくさん。いろんな人の気持ちが、「はやぶさ」を応援していたんだなあと。

 宇宙はあまりにも大きくて、謎だらけで。

 私も日常に疲れたとき、ふと宇宙のことを考えると、不思議な気持ちになります。
 人はどこから来たのだろう。
 この世界は、なんなのだろうと。

 そして、たまにプラネタリウムへ行って星の話などを聞きますと、自分が悩んだりしていたことが、とても小さなことに思えてきます。

 宇宙の大きさに比べたら、どうでもいいや(笑)という。

 あんまり、あんまりにも圧倒的で。宇宙凄いよ。本当に。

 頭のいい科学者が、全力で立ち向かっても、なかなかその全貌をつかめないほどの巨大な宇宙。調べても調べても、答えはもっともっと、その奥、もっと深くへ。

 だから宇宙は、多くの人を魅了してやまないのでしょう。

 この映画は、人間賛歌だなあ、と思いました。
 登場人物一人一人が、愛おしくなります。

 皆さんそれぞれ、すごい科学者だと思うのですが、一方で日常生活は科学とはまったく関係のないところでの葛藤があったり。

 私が印象深く覚えているシーン。鶴見辰吾さん演じるエンジン開発担当責任者の喜多が、マンションの理事会?に出席している最中、携帯に仕事の緊急連絡が入る、という場面です。
 どうみても、高級マンション、という感じではなくて。
 本当に庶民的な、よくあるマンションの会合、という風景の中。

 喜多さんは、周囲に謝りながらその場を抜け、職場へ一直線に向かうのですが。どこにでもありそうな理事会の平凡な風景と、電話の内容、最先端科学の対比がとても、強烈なインパクトでした。

 世界でも有数の最先端の技術を扱う人であっても、人間で。一歩、仕事を離れれば、私たちと変わりないような日常の生活があるんだなあって。

 夢を追い続けることの素晴らしさ、も、この映画を見て思いました。

 どんな仕事も、結局は、「夢」とか「好き」という気持ちがあってこそだと、そう思いました。だからがんばれるのだと思います。
 この、「好き」という気持ちだけは、その人本人にもコントロール不可能な、不思議な感情で。

 この映画を見たから、というわけではないのですが、実は私も最近、自分がずっと憧れていた職場に、就職しました。覚えることも多くて大変なのですが、やはり「好き」という気持ちがあると、がんばれてしまいますね。
 「好き」という気持ちは魔法のようなもので。
 仕事を進めていく上での、尽きないガソリンのような感じです。

 映画の中で、高嶋政宏さん演じるカメラチームリーダーの坂上は、水沢にとても素敵なアドバイスをしていたと思いました。

 水沢は、最初は兄のために宇宙関係の仕事を選んだのかもしれませんが、実は自分自身も、宇宙のことが大好きだったんだと思います。でも、それに気付いていなかった。

 映画の冒頭で、西田敏行さん演じる的場と、講演会後に嬉しそうに言葉を交わす水沢の姿に、それは表れていました。あれは兄のために、的場に近付いたのではなく。水沢自身が講演の内容に興奮し、思わず話しかけずにはいられなかった、そういう場面だったと思うのです。

 兄のためではない。自分が宇宙が好きで、この仕事を選んだのだ。
 水沢がそれに気付いたとき、彼女はもっともっと、大きな力を発揮できるんだろうなあと思いました。

 そして、そんな貴重なアドバイスをしてくれた坂上自身は、プロジェクト途中で契約終了となり、はやぶさの成功をスタッフとして見届けることもできず現場を離れるという現実・・・。

 映画の終わりの方で、なぜか坂上が砂漠に現れたシーンは、余計なものだったと思います(^^;
 あそこは、水沢が坂上の不在を意識するところがあれば、それだけでよかったなあ。
 坂上が再登場してしまうと、いかにもテレビ的というか、映画的なハッピーエンディングのようで。
 あのまま、ほろ苦い砂漠シーンで良かったような気がします。

 ところで、坂上が契約切られた(というか、契約終了で、再契約がなかった?)のは、やはり上の人間に予算のことなどで噛みついていたからでしょうか。
 登場するなりいきなり、くってかかるシーンだったので、恐いキャラだなと一瞬思ってしまったのですが。でもよく考えると、上に盾突く人は、部下にしてみたら頼りになる上司だなあって。
 坂上が率いるカメラチームは、上からの無茶な要求に四苦八苦していたわけで、でも末端の部下が上層部に物は言えないし、あそこではっきり意見を言った坂上の行動は、中間管理職としては立派なものだったなあと思います。

 坂上が、マイ定規で焼き魚の身をほぐすシーンは、大好きでした。科学者にありがち(といったら偏見か)な変人ぶりが、面白すぎます(^^)

 坂上は、はやぶさプロジェクトの成功を見届けたいという気持ちは大いにあったでしょうが、契約終了で現場を離れることになっても、さばさばと割り切っていたのが素晴らしかった。彼のような人なら、この先どこへいってもいい仕事をしてくれそうです。
 とはいえ本当は、彼のような人ほど、残って日本の宇宙開発のために働き続けてほしかったですが・・・。

 この映画で一番不満だったのは、冒頭の的場の講演場面。講演を聞きにきた人達を、「興味ない人たち」に描いてしまったことです。これはちょっと見ていて、あまり気分のよいものではありませんでした。
 たしかに、一般人は宇宙のこともよくわからないし、専門的知識もないし。
 でも、ああいう場にわざわざ出てくる、というのは、宇宙に関心の高い人たちだと思うんですよね。それを、いかにも「なんとなく来たけど、宇宙のことなんて興味ないし、な~んにもわかりません」的にデフォルメして描いてみせるのは、馬鹿にしてるようにもみえて、なんだかなあと。

 生瀬勝久さん演じる、謎のはやぶさファンの姿は面白かったです。はやぶさプロジェクトの成功後、なぜかきっちりと片付いた素敵なお部屋。あれ、この人、もしかしてちゃんとした人だったのかな~と思いきや、「明日ハローワーク行こう」発言に、プッと吹き出してしまいました。いや、明日じゃなく、今日行こうよ、みたいな。

 『はやぶさ』、上演時間は長めですが、かなりお勧めの映画です。これを観た日の夜は、絶対星空を眺めたくなります。

 私は映画の後、ご飯を食べてプラネタリウムへ直行しました。

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