うつつはまことか

 夢をよくみる。

 夢は、浅い眠りのときに見るのだというけれど、私にはそんな感覚はあまりない。

 夢は、もうひとつの世界の入り口のような気さえする(^^)

 そして、私は恐い夢をほとんど見ない。たいてい、懐かしいような、楽しい街並み、この世とは違う、もうひとつの世界ばかりを、体験している。

 今日の夢もその一つ。

 たくさんのショップが入った複合ビル。高さはあまりなく、3階建てくらい。とにかく広くて、歩いても歩いても果てがない。
 その中の書店は、少し変わった本ばかりを集めていて。
 その広さにも関わらず、店員は一人しかいなかった。

 眼鏡をかけ、気だるそうに店番をする店員。
 独特の雰囲気の店内。
 そこには、常連だけが訪れる空間が広がっていた。

 うわあ、いい感じだなあ。こんなところでぶらぶら本を眺めて過ごしたら、楽しいだろうなあ。
 でも、入るのはちょっと勇気いるかも。
 ここ、常連さん以外、あまり歓迎されないのかな。

 このスペースに店員さん一人って、全然、売る気ないな(^^;

 そんなことを考えながら、勇気のない私は、素敵な書店の前を、ただ歩いて通り過ぎた。本当は入ってみたかったけど、気圧されて無理だった。

 一階に下りてみると、プラネタリウムの入り口があった。すでにたくさんの人が、次の上演に備えて並んでいる。
 どうやら、予約制ではなく、当日売り専門らしい。
 予約をしたいお客さんと、スタッフが話をしていた。

 「ちゃんと見たいから、予約ができると便利なんだけど」
 「すべてのお客様に平等にご覧いただくため、各回ごとに並んでいただいているんですよ。申し訳ありませんが、ご予約はできないんです」

 プラネタリウムは人気らしく、行列もかなりの人数だ。
 私は目を凝らして、上演回の内容と、時間を示すボードを見た。

 次の次の回なら、ちょうど時間がよさそうだ。今日はプラネタリウムに寄って行こう。

 それにしても、いつオープンしたんだろう。
 私がいつもいくプラネタリウムは駅から少し距離があるし、時間にも制約が多いからあまりしょっちゅうはいけないんだけど。

 ここにこんないい施設ができたなら、これからは仕事帰りにだって、頻繁に寄れるではないか。嬉しいな。これからはできるだけ、ここを利用しよう。

 すぐそばには、広大なロッカースペースがある。
 そこには大きな荷物を預けられるので、私もさっそく、使ってみた。扉をしめる感覚が、とてもリアルだった。

 というのが、今日みた夢なのだが(^^;

 またこの続きがみたい。よさそうなプラネタリウムだったな~。あの奇妙な雰囲気の本屋さんにも、心惹かれるし。
 思いきって、入ってみればよかったな。

 夢をみるとき、不思議なことは。

 

 夢のなかの自分は、自分自身の存在意義を、まったく疑問に思うことがない、ということなのである。

 普段の私は、わりと真剣に、そもそも自分の意識とはなにか?とか、この世は何なのか、とか。この世界の意味や、現実とはなんなのだろう、なんてことを考えているのだけれど。

 夢のなかの私は、いっさいそんなことを考えていない。
 ただ、そこにいるだけ。

 そうした疑問をもつことを、最初からプログラムされていないかのような存在だ。

 これはなんなのだろうか、と、また疑問に思ったりする。

 現実では、日々、不思議なことっていっぱいあるし、それを追究したいという気持ちも強く、あるのだけれど。
 夢の中の自分は、そんなことには一切、関心がないようだ。
 自分の存在に、少しの疑問も持たない、というのが、夢の中の自分の一番大きな特徴で。

 ただ、そこにいる。
 ただ、生きている。
 ただ、感じている。

 夢の中の自分は、いまここにいる自分より、ほんの少しだけ不自由な存在なのかもしれない。
 それはきっと、幸せなことなんだろうけど。疑問を感じる自由さを、完全に失ってはいるものの。それだからこそ。

 江戸川乱歩の言葉を、今日は思い出したりしている。

>うつし世はゆめ よるの夢こそまこと

 深い言葉だと、思う。

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