2009年放送のドラマ『メイちゃんの執事』。
その中で、こんな場面が印象に残っている。
執事同士が決闘をするシーンだ。執事は戦いを前に、お嬢様にこう語りかける。
>わたしを信じてください
>信じてくだされば、わたしは必ずその信頼にこたえます
(中略)
>メイさま、ご指示を
>やばいと思ったら、負けてもいいからね
迷った末に絞り出した答えがこれかーい、という、理人(このドラマの主人公、メイちゃんの執事です)のショックと失望。
この台詞を言われたときの理人の表情が、なんとも言えません。いや、顔の表情自体は、そんなに大きくは変わらないんだけど。それは執事としての鉄壁の理性がそうさせているのか。もちろん、感情をむきだしにするようなことはないんだけど。
でも目の前のお嬢様からはっきり「怪我するくらいなら、負けて私の前から去りなさい」と言われたも同然なわけで。そりゃ、へこみますわな。勝てんわ~。この状態では勝てん。モチベーションが下がりすぎる。
理人も、目の奥がふっと、曇るんですよね。悲しそうに。
「あなたが負けるはずはない。勝って。私のために。これは命令よ」
くらいのことを言われちゃったほうが、ずっと嬉しかったろうなあ。
怪我するから・・って、優しいんだけど、その優しさはむしろ、執事のプライドを傷つけるだろうって思いました。
ちょっと考えさせられちゃったりして。
結果はどうであれ。その人を信じる、というのはとても大切なことなんだろうなあ、と。
愛する人からの信頼は、無限のパワーになる。
それに。わがまま言われて嬉しい瞬間って、あると思うんですよね。もちろん、ケースバイケースだけど。「私はあなたに、○○してほしい。あなたがそうすることを、私が望んでいるから」って、そりゃあ事実それだけをみたら、たんなる自己主張にすぎないのかもしれないけど。
傍からみたらわがままにしか思えないその願いを。
世界でひとり。自分だけがかなえてやれるとしたら。それをかなえたとき、その人が思いっきり嬉しそうに、自分だけのために微笑んでくれるとしたら。
俄然、燃えますよね。お利口じゃないかもしれない。それを願う側も、受ける側も。でも、馬鹿みたいに誰かのためにがんばってしまう姿は、真剣で、まっすぐで。いい。すごく、いい。
信じることは素晴らしい。
それを教えられたような気がする、名場面でした。
心配してくれることは嬉しいけど、だからって、二重にも三重にも安全策を提示されて、失敗すること前提みたいな警告受けたら。
そんな状況じゃ、力なんて発揮できないよね。
むしろ、失敗を深層心理では望んでいるのかと、疑いたくなってしまう。
失敗したときには、「ほらごらんなさい」と、ドヤ顔で。
なんの根拠もなくても。ただ、目の前にいるその人を信じて、その人を願ったなら。奇跡だって、ごく当たり前のようにおこるかもしれない、と思いました。
このドラマ、コメディ基本に作られているみたいで、脚本とか演出とかぶっ飛んでいるのですが(^^; それを大真面目に演じきっている出演者の方々、好感度アップしました。
ばかばかしい~ってなってしまうようなセリフや行動も、気持ちをちゃんとこめて、全力でその人物になりきっているのです。
ただ、向井理さんの白髪ウィッグは、どうかと思います・・・。あれはなかったほうが、かっこよかったんじゃないかなあ。特異なキャラを目立たせるため、という狙いはわかるんですが、とにかく似合ってなかった。
もっと本人に似合う色を選べばよかったのに。
その点、W主演の水嶋ヒロさんと榮倉奈々さんは、ちゃんとそのよさを前面に押し出していたなあと。
水嶋ヒロの執事姿は眼福でしたし、榮倉奈々ちゃんはとにかく可愛い。そりゃ理人も惚れるわ~と思いながら見てました。とくに、精神病んだルチア役の山田優さんを見た後では・・・。ひぃぃ・・山田さん、執着が凄過ぎて、恐い(^^;
ルチア様に追われて全力で逃げ切って、その後で榮倉奈々ちゃんに出会ったら。そりゃ、天使に見えますわ。
どこからどうみても、庶民の元気っ娘という風情がよかったです。眼鏡外す前も、その後も。どっちも可愛い。
あと。このドラマで水嶋ヒロって演技派なんだなあと、思いました。実はどちらかというと苦手なタイプの俳優さんだったんですが。このドラマの柴田理人役は、本当にかっこよくて好きになりました。
理人のライバルとして、弟の剣人を佐藤健さんが演じてらっしゃるのですが。もう見てて、完全に勝負あったな~と思いました。剣人では勝てない。剣人のキャラでは、無理。
メイちゃんが理人に惹かれるのは必定で。
理人はいつも、自分の感情を抑えながら、ゆっくりとしゃべるんですね。一言一言を丁寧に形にする。誠実さが伝わってきて、いいなあと思いました。