雲の海に浮かぶ月の、幻想的な光景を見ていました。満月まであと3日。
上空の風の流れは強くて、刻々と形を変える雲に、月は隠されたり、また輝きを増したり。月の光が雲に当たると、不思議な陰影が生まれます。それは本当に、心を打たれる景色です。
懐かしいような、せつないような。なんとも形容しがたい気持ちが生まれます。この気持ちはなんなんだろう、と。
私は古い洋館や、廃墟や、大きな建物のガランとした静寂が好きなのですが、それを見たりその場に立ったときと同じような、感情が涌き出るのを感じました。
根底にあるものは、いつも同じような感情です。でもそれをうまく形容できる言葉がなくて。一番近いのは、郷愁とか、ノスタルジィ、でしょうか。
どうしてこんな気持ちになるのだろうと思いつつ。その気持ちは不快なものではないから。その感情に、自然と心を委ねるのですけれども。その感情の成分には、悲しさや寂しさも、含まれているような気がします。
本当なら、悲しさも寂しさも、負の感情ではないかとおもうのですが。どうして自分は敢えてそうした感情の涌き出るこうした光景を好きなのか。それを望んでいるのか、謎です。
甘いお菓子の中に、ほんの一つまみの塩を加えることで、さらなる甘さが期待できるから? それを深層心理で知っているから?
月の美しい情景は、単純に楽しく、幸せな感情だけではなく。むしろ、痛みにも容易に置き換えられるような、なにかを掻き立てると思います。
ベートーベンの月光、第一楽章は、今日の月によく似合います。