映画『テルマエ・ロマエ』感想

 映画『テルマエ・ロマエ』を見ました。以下、感想を書いていますが、ネタばれしていますので未見の方はご注意ください。

 古代ローマ帝国の浴場設計技師ルシウス(阿部寛さん)が、タイムスリップして日本へやって来る。現代日本でお風呂の技術やアイデアに触れ、それをローマに持ち帰り再現し、大評判になる・・・というお話です。

 もう、この設定聞いただけで面白そう(^^)と思っちゃいます。
 実際、前半部分は笑える場面がたくさんありました。私たちにとっては当たり前だけど、そりゃ古代の人から見たら不思議だろうなあっていうことが、銭湯にはたくさんあって。

 描かれた富士山の絵を、ベスビオ火山と勘違いするところもよかった。出会う日本人の顔を、「平たい顔族」と表現するセンスも凄いです。
 ルシウスは、平たい顔族を、ローマが征服した異民族、奴隷と思っていて、「奴隷のくせになんて進んだ文明をもっているんだ」と、あくまで上から目線なのも笑えます。

 人のよい銭湯の常連らしきおっちゃんたちが、あれこれルシウスの世話をやくのが微笑ましかった。そうですよね~。あれだけ濃い顔の人で、どうやら言葉も通じなくて、銭湯のこともよくわかってなさそうだったら、気になってつい面倒みちゃいますよね。

 フルーツ牛乳に感動するルシウス。

 牛の乳なのに果実の香りがして甘いって・・・。その発想はなかったなあ。うん、でも確かにその通り。

 映画見てたら、フルーツ牛乳飲みたくなりました。お風呂の後に飲むと、美味しいんだよね。コーヒー牛乳もいいし、マミーも好き。

 ヒロイン真実(上戸彩)さんが勤める、浴室のショールームにタイプスリップしてくる場面も最高でした。

 そこで、ジャグジーにも出会っちゃうのね。
 ルシウスの脳内では、ショールームで知る最新機能のほとんどは、その裏で奴隷が大勢働いていることになっていて。そこらへんの、事実とのギャップが面白かった~。
 トイレに入れば音楽が流れるんだけど、ルシウスは当然、隣室で奴隷たちが演奏していると思っていて・・・。そういう勘違いがいちいち、笑えました。

 前半は本当にコミカルなシーンが多かったのですが、その分後半は、少し間延びしてしまったようにも感じました。

 歴史が変わってしまうことに、なぜ真美はそこまで危機感を抱き奔走したのかなあ、とか、そのへんも謎です。真美が古代ローマ史マニアで、あのへんの時代のことをよく知っていて、というなら話はわかるのですが、そうでもなさそうだし。

 後半はもう少し、なんとかならなかったのかなあと思いました。前半のテンポがすごくよかっただけに、残念な感じがしました。

 ルシウスと真実を、変に恋愛モードにさせなかったところは正解だと思います。ちょっとした憧れというか、ほんわかしたムードがとても可愛かった。それくらいでとどめておいたところが、好感持てました。
 だからこそ、真美の体が透き通り、別れが近付いたときの切なさが美しかった。

 満点の星空。揺れる炎。初めての笑顔。

 泣きながら、だけどちゃんと、真美も人生におけるお守りのようなものをしっかりと、ルシウスからもらって、現代に帰って行くんだなあと。だから、安心して見ていられました。

 ルシウスはたくさんのものを、真美やおっちゃんたちから学んだけれど、その逆もしかり。
 真美は、ルシウスの生き方に、大きな感銘を受けたのだと思います。

 見終わってつくづく思ったんですが、この映画、阿部寛さんなくしては成立しなかったな~と。もう、ルシウスが愛しすぎる(^^)

 平たい顔族とのギャップがすごい。そして、筋肉質で美しい体。まるでギリシャの彫刻のようでした。ルシウスの生真面目で、仕事に対しては妥協を許さない生き方。それは、素の阿部寛さんにも通じるものがあるのかなあ~、なんて、考えてしまいました。

 思い返してみますと、阿部さん。映画は『はいからさんが通る』の少尉役でデビューでしたね。あの役は正直、あまり合っていなかったと思いますが(あれは、キャスティングした人に責任があります。ドイツ人とのハーフで、色素の薄い美青年って、その設定からして無理があると思う)、このルシウス役はもう、阿部寛さんがぴったりすぎて、他の人など思いつかない。

 ルシウス役をを阿部さんがやってなかったら、映画のよさは半減してたと思います。

 真実役の上戸さんも可愛かったなあ。普通の格好しただけで、なんでこんなに可愛いんだろうっていう。
 実家の旅館に帰ってくるシーン、いろいろ着こんで大変なことになってるんですが、普通だったらむさくるしい感じになるのに、上戸さんだとオシャレなんだな。

 あと、ケイオニウス役の北村一輝さん。異彩を放ってた。
 女好きの設定なんですが、女性を口説くそばから、殺してそうなオーラが出てるのは何故~(^^;
 恐いんです。狂気のようなものを感じて、ゾクっとしてしまった。青ひげ、みたいな・・・。
 味のある役者さんなのですね。本当に独特で、目立ってたと思います。

 それから個人的にすごく驚いたこと。旅館のおっちゃんたちの一人、館野を演じた竹内力さん・・・いつの間にこんなに貫録がついたんだろうっていう・・・・。

 私の知ってる竹内さんは、アイドル枠だったんです。たしか、セーターの本とかにも載ってたような。例えるなら、野村宏伸さんみたいな感じだったのに、いつのまにこんなにイメージ変わったんだろう。同一人物です、と言われても、にわかには信じられないくらいでした。

 この映画の中で、私が一番綺麗だなあと感動した場面は、ルシウスがアントニヌスに大事な話があると告げる前の、回廊シーンです。

 映像の、光と色の加減がなんとも言えず素晴らしかった~。

 古代の荘厳な建築に射す、夕暮れ、少し手前の光。(あれ、夕暮れだと思うけど、違うかな~)
 柱の表面の凹凸が、絶妙な影を作っていて。

 胸を打つ光景でした。その向こうになにがあるのか、そこは映し出されてなかったけれど。きっとあそこは小高い丘で、あと1時間かそこらで、辺りはもっと赤く、染まり始めるのかなあって。

 正確には、まだ夕焼けって時刻ではなかったのかもしれないですが。ほどなく始まる夕暮れの寂しさを、その色を、想像させる光の色だったんですよね。昼の眩しい、透明な強い光とはまた違っていたような。

 『テルマエ・ロマエ』、見に行って良かったです。

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