第二の太陽

 ちょっとがっかりするような出来事があり、眠ろうとしたのだけど、なかなか眠れなかった。

 ロンダ・バーンのMAGICを読んで、感謝の魔法も習得したはずなのに(゚ー゚;

 落ち込むと、感謝すら、難しくなる。とにかく気力がなくなる。

 それで、早めに就寝したのだが。眠れない。あーだこーだと、うだうだいろいろ考えていた。カーテンの隙間からもれる灯りが、微妙な影を作っていたので。

 それをスイッチに例えたりしていた。

 これ、昔、よくやったんだよね。
 ゼロスイッチ。このスイッチ押せば、すべてが無になる。全部最初から、なかったことになる。

 壁に映るゼロスイッチを、押してみた。何度も。

 昔はこれ、畳に映る影でやってたなあ、とか思い出しながら。ゼロスイッチの概念は、少し、気持ちを楽にしてくれる。

 それで、また目を閉じて。いろいろ考えて。普段ならすぐ眠れるのに、今日はなんだか無理で。

 そしたらカーテンの隙間からこぼれる光が、明るい。
 うそ、もう朝になった? そう思って、そっとカーテンを引いてみると。

 うわあ! と。思わず声が出そうになった。
 明るいのだ。空高く、月が昇っていた。少しも欠けることのない完璧なシルエット。そうか。満月か。

 窓を開けて、ベランダで涼んだ。夜の空気は心地いい。辺りは静まり返っている。この静けさには・・・感謝だ。嬉しかった。

 いくらこの月が美しくても、辺りがうるさかったら、とても眺める気分にはならなかった。この、なにも聞こえない空間が、ありがたかった。

 空高く昇った満月が、これほど明るいとは。こんな夜中に、月を眺めたことはしばらくなかった。毎月、こんなことになっていたんだろうか。

 第二の太陽だなあ、と思った。それほど光は明るかった。

 

 だからといって、気持ちが完全に浮上する、とはいかないのだけれど。いくらかの慰めにはなった。

 あれほど好きな読書も、好きな食べ物も、音楽も。救いにはならなかった。すべてにだるさを感じていたし。無力感に支配されて、不愉快な感覚に苦しんでいたけれど。

 この月と、なんの物音もしない静かな世界には、少しだけ心が安らいだ。

 静謐な世界。旅をする気にはならないけど、どうせ存在するなら、こんな静かな世界に、存在してみたい。

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