映画『エンド・オブ・ザ・ワールド』 感想

映画『エンド・オブ・ザ・ワールド』を見ました。以下、感想を書いていますが、ネタバレ含んでおりますので、未見の方はご注意ください。

この作品は、原題が Seeking a Friend for the End of the World なんですけども、日本語のタイトル『エンド・オブ・ザ・ワールド』の方が、原題よりも合っているなあと思いました。だって、主人公は友達を探していたわけじゃないから。彼が探したのは、地球最後の日にふさわしい、心から愛する人とのロマンチックな日々。

結果は、ほろ苦く、でも温かかった。

アメリカ映画なのだから、最後は絶対大団円。もしかして、奇跡が起こって、地球に衝突するはずの小惑星が直前で軌道を変えたとか、そういう大どんでん返しがあるんじゃないかな、なんて私の期待は、あっさり裏切られたわけですが。

うん。なんだろう、この観終えた後の、胸に残るほんのりとした温かさは。二人とも、そこから先を生きられなかったことはわかるのに。それでも、二人はとても幸せな気持ちで、旅立ったような気がして。

『エターナル・サンシャイン』の製作に携わったのと同じ人が、『エンド・オブ・ザ・ワールド』の製作にも名を連ねていました。わかる~(*^-^) この温かさは、同じものだ。同じテイスト。

エターナル・・の方は、異性の愛。そしてこの、エンド・・の方は、友情かな、と、私は思いました。ちょっとだけ表現は違うけど、でもその根底には、深い愛があるのです。だから私もその愛に触れて、ほっとしたし、癒された。

そうか、そう考えてみると、原題の Seeking a Friend の言葉に託された製作者の思いも、わからなくはない。

恋人を求めたけど、それは違うと気付いて、だけれどもかけがえのない、人生最後の日にそっと寄り添ってくれる、大切な友人をみつけました、という話なのかなあと。

私は主人公のドッジとペニーの間に、いわゆる、恋を見出すことはできませんでした。ドッジは、ペニーのことを女性として好きなのではないと思う。ただドッジは、友人としてペニーの幸せのために手を差し伸べたのだと思います。そばにいて、添い寝して「大丈夫だよ」って言ってあげることが、ペニーにとって一番の慰めになると知っていたから。

そしてペニーも。地球最後の日を前に怯えて、緊張して、非日常の中で気持ちが昂って、それを恋だと思ってるけど、冷静になってみたら絶対、ドッジはタイプではないと思う(^^;

二人は元の性格が違いすぎるからね。

ペニーは子供っぽいところがあって、あと数日で命が終わるという極限状態を独りで耐えることはできなくて、誰かを求めた。ドッジはその手をとった。たとえ地球最後の日であっても、彼は泣いている小さな女の子をほっておけない人だったから。そういうことなんだと思いました。

この映画の終わり方が好きです。静かで、穏やかで、優しい空気が流れて。ふっと意識がとぎれる。そんな終わり方。後味がいい。ペニーがどんな気持ちで最後を迎えたのか、よくわかる。

ドッジはたぶん、高校時代の恋人オリヴィアに今手が届く、となったときに気付いてしまったんだろう。ああ、なにもかも幻だったって。思い出のままならずっと、美しい。好きだった気持ちも、好かれていたことも、当時は本当のことだったろうけど、もうあの日の二人はいない。
昔のオリヴィアなら、手紙を寄こさなかった。言外に助けてのメッセージをこめて、離婚を知らせることは決してなかっただろうから。

ペニーが眠っている間に、お姫様だっこして彼女を小型飛行機に乗せる姿がかっこよかったです。
ドッジは嘘をつかなかった。飛行機の約束、ちゃんと守ってあげた。きっと起きてたらペニーはあれこれ言い訳して、ぐずぐずと飛行機に乗らなくて、そしたら時間がもったいないから。黙って飛行機に乗せてあげたドッジの優しさ。そして、限られた時間を、快く息子のために使う父の優しさ。

映画の中には、人生最後の日々を、思い思いに過ごす人々の姿が描かれます。暴動や、略奪もあり。

でも虚しいよね。最後に人を傷つけて、楽しいだろうか。たとえ裁かれないとしても。投石し、火を放ち、雄叫びをあげて。うーん、これはわからない感覚だ。もはやお金目当てではないし、純粋に暴動を愛する、そういう人たちもいるということか。

パーティーで、乱痴気騒ぎ、というのはわからなくもないですが。でもこれも、本当に性格によるでしょうね。ドッジにとっては、むしろこうした大騒ぎは苦痛でしたね。

見終って、私もしみじみと考えてしまいました。残された時間が3週間なら、私はなにをするだろうかと。

旅行で行ってみたい場所はあるのですが、きっと交通機関はマヒしているだろうからそれは無理だろうし、世界が混乱する中で遠出するのは少し怖い。

一番に思いついたのは、庭か、もしくは近所にある、うちの畑で。青い空でも眺めながら、きっと一日中、のんびりゴロゴロするだろうなあと。ピクニックじゃないけど、水筒と、それからサンドイッチなんか持って行って。
そして、夕日の美しさを堪能するのだ。茜色に染まる雲、光と影のバランス。やがて暗くなったら、西の空に金星が輝くのを見る。レジャーシートに寝っ転がって、星座をみつける。この季節は蚊も多いだろうから、蚊取り線香もっていかなくては。

私、たぶん、それを最後の日までずっと続けるね。ときどきは、自転車にも乗るかもしれない。風をきる感覚が気持ちいいから。それでまた庭や畑に戻って。大きく深呼吸したり、咲いてる花を愛でたり。空気に混じるハマユウの香りをかぎ分けたり。

そうか、私の究極のゴールって、そこだったのかと。自分でも少し、驚きました。最後の日にやりたいことって、あんまり大したことじゃなかった。ていうか、今でも休日にはやっているようなことだった(;;;´Д`)ゝ

じゃああれだな、私ってものすごく幸福な日々を送っているんだな、日常で。

そんなことを、気付かせてくれた映画です。

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