見たのは、こんな夢だ。
私は学校の寮にいる。広い部屋に、いくつもベッドが並べられている。
眠れなくてそっと起き出し、廊下に出る。
廊下では、当番の子たちが忙しく働いている。みんな、首から所属を示すIDカードを下げていて。私は自分がそれを持ってこなかったことに気付き、あせる。
しまった。別の色のでもいいから、持って来ればよかった。あればごまかせるけど、なかったら変に思われるかもしれない。
私は学校を抜け出すつもりで、歩いていく。不審げに見る子もいたけど、声まではかけてこない。ほっとしながら、頭の中で脱出ルートを素早く計算している。どこを通るのが一番、安全だろうか。誰にも見とがめられることなく、出て行かなくてはならない。
けれど、永遠に戻ってこないつもりはないのだ。夜が明けるまで少しだけ。外の空気を吸うだけだ。庭に犬が放たれていることを思い出して、噛まれはしないだろうか、と心配になる。無謀だったかもしれないと。
2階の、建物正面の部屋に出る。庭に面した壁は全面がガラス張りで、室内は真っ暗なのに、外の噴水はネオンに照らされて華やかに彩られている。
音楽と光のショーが始まり、その美しさに圧倒される。毎夜毎夜、私の知らないこの場所で、こんなにきれいなショーが展開されていたんだ。こんなに綺麗なんだったら、これから毎日、こっそり来よう。
振り返ると、付属の小部屋では当直の看護師さんたちの申し送りが始まっている。なぜ夜勤の看護師さんがこんなに大勢いるのか、不思議に思う。
私のいるこの場所は、学校ではなかったのか。まるで病院なみの手厚さだ。これだけの人数が夜勤しているってことは、なにかあるんだろう。私の知らないなにかが。
校内はどこも真っ暗闇。当番の子たちは、3~4人のグループを組み、それぞれ指示された通りに働いていた。2階正面の部屋も、電気はついていない。たくさんではないが、目を凝らすと部屋の隅にはうごめく人影がある。
部屋を抜け出し、歩いているところをみつかれば怒られることはわかっていたが、私はあまり気にしていなかった。ただ、きらびやかな花火のような噴水が、とても印象的な夢だった。