私がスーパーで会計ををすませ、カゴの中の商品を袋詰めしているときの話。すぐ横のパン屋さんが、閉店間際で、値下げセールをやっていた。パンを詰め合わせして売っていたのだ。
その特売のワゴンの前に、一人の女性がやってきた。詰めあわされたパンの種類は、袋によって微妙に違う。女性はしばし袋を見比べた後、こう言った。
「奥さん、このパン屋さんのパンて、おいしいの?」
話しかけられたのは、すぐ近くでやはりそのパンを見比べていた年配の女性。
「けっこうおいしいわよ」
「ふーん。それで、これはかなりお得なの?」
「入ってるパンは全部、半額なのよ。絶対お得よ」
私はこの会話を聞いて、なんだか笑えてきてしまった。そして、女性のたくましさをつくづくと感じたのだった。なぜなら、この2人はまったく赤の他人。ついさっきまで全然接点のない両人が、今はパンを通じて立派に情報交換をしている。
この能力、女性ならではのものかもしれない。これ、男性だったらありえないものね。おばちゃんパワーというのだろうか。女性のコミュニケーション能力には、卓越したものがある。全く知らないもの同士でもすぐに仲良くなり、親しげに話し始め、互いの情報を有意義に活用するのだ。
まるで古くからの友人のように、気楽に話し始める女性と、違和感なくそれに答える女性。その様子がおもしろかった。女性は太古の昔から、こうして共同で子育てをしてきたのだろうか。そうした横のつながりで、自分たちの子供を、地域ぐるみで守ってきたのか。
人間は群れる動物であると思うが、特に、女性は同性同士の壁が薄い。すぐにうちとける傾向があるような気がする。井戸端会議という言葉があるが、2人以上の女性が集まれば、そこには活発な会話がうまれるのだ。
女性のコミュニケーション力の高さを、実感する出来事であった。