ある本を読んでいたら、この言葉が心に残った。
entangled world 繋がる世界、である。世界は少しずつ影響し合い、そして全体を見れば、一つなのだという考え方。
entangle という単語から、私は糸を想像した。ぐるぐる絡まって、絡まりながらも広がっていく。その一つの糸をずっと辿っていけば、いつかは目的の場所にたどりつくことができるというイメージ。
本当の目的にたどりつくまでには、いろんな景色があって、それは余計なものといえるかもしれないけど、道筋にある以上は、目標に必須のステップ。
なんだか、いい響きなのである。entangled world 。ジャングルの奥深く、小さな蝶の羽ばたきでさえ、世界に影響を与えないはずはないのだと、その本は書いていた。
これもまた、新鮮で美しいイメージだ。その蝶はきっと瑠璃色。日を受けて、七色に羽ばたく。誰にも知られないその、静かなはばたきが、世界に繋がっていくなんて。
羽が上下するたびに、眩しい鱗粉がキラキラ飛び散る。
entangled world という言葉から、sound horizon の『LiNK』という曲を思い出した。
>ぼく達がこの手で 紡ぐ未来は
>優しい夢のように 微笑む綺羅星(Shining Star)
この曲は泣けます。どこまでも優しくて、愛にあふれてて。
この曲の中にも、「世界は繋がっている」という台詞が出てくるのだ。
個は、全体の一部にすぎないという発想。そういえば、ユングの集合的無意識という概念も、これに繋がってくるなあ。
こういう考え方って、温かい気持ちになる。そうそう、ネットの世界も、回線を通じて世界が繋がっているといえる。無線なら、線さえもいらない。情報はすべて、目の前にある。ただ、手に入れたいと願うだけで、それはたやすく自分のものになる。
現実世界では会ったこともない人と、情報を共有できるってすごいことだ。いい時代に生まれたなあと思う。インターネットの普及は、世界を変えた。
そういえば、米航空宇宙局(NASA)が発表した、地球から75億光年離れた恒星の爆発を観測衛星がとらえたという記事。75億年かけてたどりつく光って、どんなんだろう。あんまりスケールが大きすぎて、クラクラする。実感がわかない。
人類が誕生する遥か前から、宇宙はあった。人類がこの先どうなろうとも、淡々とそこに、宇宙は存在し続ける。理屈も、理由も、存在の前にはあまりにも無力だ。だけど、人間って可愛いなあと思う。
宇宙の存在を知ったとき、同じような知的生命体を求めて、心は果てない旅に出たんだよね。
日々、宇宙からの膨大な電波を受信し、解析する。そして自分たちを紹介する情報を載せて、ボイジャー号を打ち上げた。いつか地球外知的生命体が、それを見つけてくれると信じて。
地球人のメッセージには、いまだ、誰も答えてくれないけど。その事実は、この広い宇宙で、地球がひとりぼっちだという、証明のようにも思われるけど。研究が進めば進むほど、宇宙はどんどん広がっていく。
確率でいえば、地球のような星は必ず存在するんだよね。だけど、通信する手段がない。あまりに遠すぎて。
だから今この瞬間も、遠い星の誰かが、地球のことを思っているかもしれない。この宇宙の中で、互いに触れ合えないほど遠い存在である誰かが、やっぱり空を見上げて、地球を思っているかもしれないという想像は、私をゾクゾクさせる。
姿も形も、まったく違う相手なのか。それとも地球とよく似た環境の、よく似た進化を遂げた相手なのか。いつか、通信しあえる日がくるのか。それとも、距離には勝てないのか。
宇宙にひとりぼっちだという孤独から逃れるように、人類は空に手をさしのべている。そう思うと、人間が愛しくなってくるのです。