素敵な夢をみた。ある一軒家のカギを渡される夢である。「自由に使っていい」と言われて、大喜びする。月光の中に浮かび上がるその家は、荘厳な雰囲気を醸し出していた。
門扉の向こうには庭もあり、植物を眺めながら月光浴ができそうだった。そこは静まり返った空間で、ゆっくりと寛げそうで、そのことがとても嬉しかった。
その家に入り、再びカギを閉めてしまえば、もう本当にひとりきりで、誰に煩わされることもない。
渡されたカギを握り締めると、ほんのり冷たく。その冷たさがまた、心地よくて。カギを握り締めて、私はその家を見上げていた。外から見ただけでも、その内部のしんとした空気が伝わってきてワクワクした。
中に入る前に、目が覚めてしまったのは残念。せっかくだから、内部の探検もしたかった。
山に行って、誰もいない場所でぼーっとしたいと思うから、こんな夢をみるんだろうか。
夜の風景といえば、今でも印象深いのは、アメリカで見た、グリフィス天文台へ向かう途中の道から眺めた街の夜景。
天文台での思い出より、そのとき車の窓から見た景色の方がずっと鮮明に、記憶に焼きついている。
夜景スポットはたくさんあるし、それから数えきれないほどの夜景を見たけど、あれを超える景色に出会ったことはない。はっと、胸をつかれるというのは、ああいうことなんだろうと思う。うわあっと思って、ただ見ていた。ずっと。
そしてあれから何年たっても、ときどき思い出すのだ。
なにも劇的なドラマがあったわけでもなく。別に恋人とドライブしていたわけでもない。私の目に映った灯りは、その一つ一つが人生を感じさせて、飽きもせず言葉もなく、ただ眺めていたのだ。
またあの、グリフィス天文台へ向かう道を、いつか車で行くことがあるんだろうか。そのとき自分の胸には、どんな思いが去来するのだろう。