ドラマ『ガラスの家』 主題歌が頭の中を、いつまでもぐるぐると。

 後を引く、そして噛めば噛むほど味の出るスルメのようなドラマ、『ガラスの家』。あらためて、全話を見ました。不思議な余韻を残すドラマです。
 第4回を見て、もういいや~と思ったのになあ(^^;

 見逃していた初回も見ました。なんだか、テイストが思いっきり昼ドラの際どいもので、実は初回が一番、大人向けだったような気がします。じっくん(斎藤工さん)のセリフが、凄かったり。NHKのドラマじゃないなあと。
 私は最初、この作品を2回目から見始めて、ずいぶんアダルトなドラマだと思ったけど、アダルト度は1回目の方が上でした。怪しい雰囲気に包まれております。

 まあ、無理ありますよね。男所帯で3人家族のところに黎ちゃん(井川遥さん)がお嫁に来たら。そりゃあ、ひと波乱あって当たり前です。というか、息子二人は成人してるんだから、家出ること考えないとな~。私が仁志や憲司(永山絢斗)さんだったら、迷わず家を出ますけどね。自分自身の心の平穏のために。
 大豪邸で部屋の物音が一切聞こえないくらいの、お城みたいな構造ならともかく。あの家で同居は無理。絶対無理。

 そういえば今日、美容院で雑誌『VERY』の12月号に出てた井川遥さんの特集記事を見たんですが。綺麗だったなあ。特に4枚目。

 井川さんは、キメキメのドレス姿より、なんでもないラフな格好の方が、美しさが際立つような気がします。
 その記事、たしか4枚目の写真ですね。大き目のニットに、デニムパンツ、フラットシューズという姿が、はっとするほど魅力的でした。もしこの場に仁志がいたら。この姿の黎さんが笑顔で駆け寄ってきたら、そりゃあもう受け入れてしまうだろうなあと。そう思わせる、輝きを切り取った写真でした。

 このドラマのことを考えてるときに、井川さんの載った雑誌をたまたま手にとるだなんて、これはもう、ブログに感想かかなきゃなと思ったので、書いてます、今(^^)そしてドラマを見直してみて、斎藤工さんのかっこよさに陥落。

 いや、違うな。斎藤工さんではなく、斎藤さんの演じる仁志が、素敵なんですよね。仁志の生真面目さと優しさに、うっとりしてしまう。

 私は特に、ドラマ前半部の仁志が好きですね。モラハラ夫のかずさん(藤本隆宏)が黎ちゃんを理不尽に責め立てるとき、反射的にさっとかばうところがいいのです。もう、計算とかじゃなく、言葉や体が勝手に反応してるみたいなところが。この人を守らなければ、という隠しきれない思い。そして、いちいちそれに苛立ち、さらに嫉妬をつのらせるかずさんの姿が、ドラマを盛り上げます。

 かばった場面で、一番心に残ったのは、かずさんの誕生祝いの夜。

>いい気になるな

 かずさんがえらい勢いで黎ちゃんを怒鳴りつけます。見てる私も、一瞬ひるんでしまうくらいの怒声。
 自己主張する黎ちゃんを、力で抑えつけようとする姿は醜い。私はこのとき、かずさんが黎ちゃんを殴るんじゃないかと思って恐かった。

 でもその瞬間、さっと黎ちゃんをかばうように駆け寄った仁志は偉い。もう勝手に体が動いてるって感じで。大切に思ってる人が危険にさらされたら、反射的にああなってしまうのは自然なことなんだろうな。

>そんな言い方するなよ

 いつも父親に敬語で話す仁志の、強い口調。頼もしいなあ。黎ちゃんを守るためなら、そんな風に強くなれるのか。

 しかし仁志の萌えセリフは、他にもあります。
 黎ちゃんと二人で、庭で月を見上げるシーン。

>悲しいときは、いつも月がきれい

 黎ちゃんのなにげないセリフは、でも彼女の唇からこぼれると魔法の言葉に変わります。この人は僕が守らなければ、仁志のそんな強い感情を誘発する、魔性のつぶやき。
 この人は、いつもひとりで、そうやって月を見ていたんだなあって想像してしまいますもん。

 そして、飛べなかったハードルをついに、飛んでしまう仁志。

>黎さん、一緒にこの家を出よう
>行くところがないなんてことはないから
>そんなことには、僕がさせないから

 うぉー、ついに言っちゃったのね。今まではっきりした言葉だけは、心の中に封じ込めてきたのに。視聴者にも黎さんにも好意はバレバレだったけども。それを形にすることは、今まで決してなかったのに。

 この状況で、こんなことを言われて、よろめかない黎さんはむしろ、なんて貞淑な妻だろうと思いました。
 だってさ、夫は、帰る実家をもたない妻に、平気で「出てけ」なんて言っちゃえる人なんですよ。それは絶対に言ってはいけないセリフなのに。

 一緒に月を見ながら聞いた仁志の言葉は、黎さんの心に、一番深く届いたんじゃないかと。
 それを言われてなお、仁志の胸には飛びこまない黎さん。

 そりゃ確かに、仁志は義理の息子という立場ですから、軽々しく動けないのはわかりますが。人の気持ちは理屈でどうこうなるものではないし。
 もうすでに、かずさんと黎さんの結婚生活は破綻している、と私は思います。この先、一緒にいれば傷が深くなるだけのような。

 それに対して。初めて出会ったときから。仁志と黎さんは不思議と惹かれあっていたわけで。
 黎さんが仁志に声をかけたのもそうですし。声をかけられた仁志も、その瞬間から、黎さんに魅入られてしまっていたように思えました。こういうのは、理屈じゃないですね。波長が合う、というのでしょうか。

 ドラマの中で、二人は当たり前のように、心だけで会話してしまっていました。否定しながら。戸惑いながら。

 対するかずさんは、暴言と、それからうってかわったような甘えっぷりで、黎さんを縛りつけようとしていた。自分から離れていかないようにと。裏返せば、そうでもしないと、黎さんが遠くなってしまうのを、わかっていたんですよね。
 黙っていても傍にいる存在なら、暴言も甘えも必要ないから。

 昔、ある人から聞いた言葉を思い出しました。喧嘩する夫婦は、元から性格が合わないんだと。合うもの同士なら、努力もなにも必要ない。ただ普通に生活するだけで、自然と穏やかな関係でいられると。

 そんなものなのかもなあ、と思います。何故か気が合う、とか。何故か惹かれる、とか。そうした直感は実は、なにより真実だったり。
 初対面でなにも感じないなら、そこには何もないのかもしれませんね。もし運命があるなら、その人がそういう相手なら、なにも感じないはずはない、と思います。

 ところでこのドラマ、実は伏線だったんだけど、それを回収しないまま終わってしまったんじゃないかと思わせる点が2か所あって。
 1つは憲司の怪我。怪我の意味がよくわかりません。思わせぶりな描写だったのに、結局最後までなにごともなく、拍子抜けしました。
 2つ目は、仁志とかずさんの関係です。かずさんは憲司には寛容なのに、仁志には厳しい。期待がそれだけ大きいといってしまえばそれまでですが、私は、よそよそしさを感じました。ひょっとして、仁志はかずさんの実子ではない? 仁志とは血がつながっていないとか? だとしたら、かずさんが仁志にみせた激しい嫉妬もまた、違う意味を帯びてきますね。

 かずさんのモラハラぶりと、途中で手のひらを返すように黎さんに冷たくなった憲司の姿には、共通するものを見出せますが。
 仁志はかずさんの息子で、かずさんに育てられたのに。なぜああいう優しさを身に付けることができたんだろうと。押し付けない愛情だから。いつも辛抱強く自分を抑えて、黎さんが動くのをちゃんと、待っててあげるから。

 スルメドラマです。
 そして、後からじわじわ来ます。頭の中で、西野カナさんの主題歌が、いつまでも鳴りやみません。たぶんしばらくは、私はこのドラマのことを考え続けると思います。

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