今年も春薔薇を鑑賞すべく、近所の植物園に行ってまいりました。
いつもこの時期になると、そわそわします。紫外線の強い時期なので、薄曇りの日を選んで出かけたところ、雨が…。
小雨がぱらつく中、薔薇のコーナーへ。遠くからでも、華やかにたくさんの種類が咲き乱れているのが見えました。そして微かに、薔薇独特の芳香。離れていても香ります。
まず目を惹かれたのが、シャンテ・ロゼ・ミサトです。濃いピンクから薄いピンクまでのグラデーションがとても綺麗。たくさんの花が咲き乱れていました。花弁は幾重にも巻いていて、けれど開花が進んでも反り返るほどには開かず、その形も気に入りました。
今年の私的No.1はこれで決まりかな。
そう思いながら歩き続けていると、園内でさらに、息をのむほどに咲き誇る、白い薔薇の一群を発見。
圧巻でした。
強い品種なのでしょうか。貴重な珍しい薔薇などが、どんなに手をかけても弱々しく、少しずつしか育たないのに比べ、この薔薇には圧倒的な勢いがあったのです。
その薔薇の名は、「マチルダ」。
雨が降った暖かい日です。
ほとんどの花が、つぼみではなく、ずいぶん開いてしまってはいたのですが、その開いた姿もまた風情があり。枯れた、とか、旬を過ぎた、という感じではありませんでした。とにかく一面。白。白。白。その中に、薄くピンクを差したような光景。
近寄ってよく見ると、つぼみはピンク。花が開くにつれ、白に変わっていくようでした。開ききった白い花弁の数枚に、うっすらとピンクがかかっていて。
でも、目の前の光景は、総じて白です。
それは、つぼみがほとんど残っていなかったせいでしょう。ほとんどの花が、開ききってしまって。その白が、清々しいのです。花弁は、シルクのワンピースを思わせます。
葉の緑を、完全に凌駕する白。これ以上花をつけることは難しいと思われるほどの、見渡す限りの白。
白い薔薇は地味で寂しい、という、私がそれまで思っていた概念を、打ち破る衝撃でした。
その白さに心を打たれ、じっと見入ってしまいました。その後も園内を回りましたが、やはり「マチルダ」が、私にとっては一番でした。
後でネットで確認したところ、解説ではマチルダはピンクの薔薇となっていましたが。私には、開ききって白くなった姿が、つぼみのピンク以上に美しく見えました。白でも寂しくないのです。むしろ、温かい。
イメージは、12,3才の、チュチュをつけたバレリーナの少女。清楚。無邪気。あどけなさ。無垢。すっきりまとまったシニヨンヘア。
ちなみに、シャンテ・ロゼ・ミサトのイメージは20歳前後の乙女ですね。ほんのり頬を染めて、片手には本を抱えて、緑のまぶしい丘、大木の影に座り込んで夢をみる、みたいな。
マチルダが1位。シャンテ・ロゼ・ミサトが2位。そして、今年の私的薔薇No.3は、バルカロール。
このバルカロール、まず色がいいのです。ダークレッド。まさに薔薇の中の薔薇。たとえば一輪だけ包んで誰かに贈ったとして、それが堂々と様になる。それだけ存在感のある薔薇です。
赤いビロードのような花弁。その赤も、歴史ある劇場の、多くのドラマを見てきた幕の色のように、決して新品ではないのです。浅くない。見つめれば、吸いこまれそうに深くて。
イメージとしては、中世の貴婦人。年齢は、少なくとも50代以上。少し不機嫌な様子でこちらを見返すような。身につけたドレスの重さを感じます。プライドと、威圧感と。気安く触れられない空気が漂っていました。
雨の日の薔薇鑑賞。花や葉に光る水滴が、晴天の日には味わえない味わいです。晴れた青空をバックに見るのとはまた違った、別の表情を見ることができました。