ドラマ『ラヴソング』第3話の感想を書いています。以下、ネタバレ含んでおりますので、未見の方はご注意ください。
この第3話は、気が付くとさくらの視点で、神代を見ていました。特に、一番印象的だったのは、ライブ前の屋上シーン。
これがねー。私には怖かった(^^;
ちょっと浮かれながら、「先生のこと想って歌ってもいいですか」なんて告白もどきをしたさくらですけども。神代の沈黙が怖い。返事がない。それを待つ恐怖感といったら。
もし自分だったら、耐えられないだろうと思いました。いくら浮かれてたとしても、この重い空気感にはさすがに気付く。それが、自分の思っていた方向ではないということに。
神代は優しい人だと思うのですよ。
さくらにギターも買ってあげてたみたいだし。企業内カウンセラーとしての業務を逸脱してて、心配になるくらい。それに明るいし、軽口も叩くし、そういう人がですね、黙り込んでしまうっていう、この重さ。
さくら、やっちまったなーと。固唾をのんで画面を見守りました。なんて答えるんだろうって。
YESかNOか。どっちにしろ、うまい返しなんてないと知りつつ。
YES→さくらに変な期待をもたせてしまう。心を弄ぶ嘘をつくことになる。ただしさくらの初舞台は成功する。
NO→さくらが落ち込み、初舞台は大失敗に終わる。おそらく今後、さくらは夏希の治療を受けない。
さくらの吃音を治してあげたいと思っている神代が、どう答えることがベストなのか。それにしても、私には長すぎる沈黙に思えました。実際には短い時間のことだったのかもしれませんが。見ている私には、苦しいくらいの時間でした。
神代の顔でなく、背中が映ったときには、この人は今どんな顔をしているんだろう、と。果てしなく想像が広がりました。普通じゃない、というのはわかったので。なにかとても考えこんでるような。真剣になっているんだろうな、と。
>次に進む、か
そのつぶやきは、さくらに向けたものではなく。まるで自分に言い聞かせるように。こうすることが正しいんだと確認しているかのように思えました。
その上での言葉。
>じゃ、今夜は君だけを想ってギターを弾く
言葉だけをとらえたら、甘い決め台詞みたいに思えますが、このときの神代の表情といったら。
こんな顔を目の前で見たら、凍り付くんじゃないかと。だって、神代がめっちゃ怒っているのがわかるから(^^;
それは、さくらだけを怒っていたのではないでしょうが。
暴力的に(神代にとっては)、春乃との記憶を蘇らせる、さくらへの苛立ち。
いつまでも過去に囚われ、感情をコントロールできない自分への情けなさ。
そして、すべての根源である春乃への、たぶん理不尽な怒り。
神代の過去になにがあったか、詳しいことはこれから明らかになるでしょうが、彼が春乃の死にとても傷ついていることだけは確かです。好きな音楽も封印してしまうほどに。
最後、アンコールを拒否して、舞台を降りる神代。そりゃそうだろうなあと思いながら見てました。「じゃ、今夜は君だけを・・・」って、さくらに告げたときにすでに怒ってたし、いっぱいいっぱいだろうなと想像できます。
普段は大人な神代ですが、一番弱いところを突かれたら、身を守るのに精一杯で。
さくらを思いやる余裕がないのですよね。
さくらはトイレに直行して泣けるだけ、まだいい。若くて、女の子だから、それができる。
でも神代は。
大人の男はどんなにつらくても、平気な振りをするしかないし。まして、過去を知る夏希の前で、弱い姿は見せられないのだろうなと、その胸中を想像しました。
第3話は、なんといっても、神代の背中です。
屋上で、さくらの告白もどきに黙りこむ背中。言葉はなくても、たくさんのものを語っているような気がしました。