楽園パレード

前回の日記の続きです。sound horizonの「Elysion~楽園パレードへようこそ」について語ります。

ライブにはライブならではの演出、CDを聴いているのとはまた違った味わいがあるわけですが、スクリーミング・マッド・ジョージさんの演出でいいなあと思ったところを、今日は語ってみたいと思います。

まず、じまんぐダンス。じまんぐさん、なんともいえない胡散臭さで笑えました。これはCD聴いてるだけじゃ見られないですからね。『笛吹き男とパレード』の曲で、客席下りするんです。そして通路を練り歩くわけですが、この動きがなんともおかしくて、面白い。

仮面とマントがよくお似合いでした。

ロボットみたいにカクカク揺れて。

シャボン玉?飛ばしたり、お客さんとの触れあいも十分ありつつ。これは楽しいでしょうねえ。舞台をただ見ているだけでなくて、お客さんがその世界に入り込める。だって目の前にあの、胡散臭い(笑)仮面の男がいるんだもの。

連呼が笑える。さすがじまんぐ・・・。

このときの、あらまりさんの衣装も好きです。これは、『エルの楽園』PVのときと一緒の服でしょうか。どちらも演出はマッド・ジョージさんですが、いいセンスだなあと思いました。

『エルの肖像』の肖像画も綺麗だったなあ。

私はあれがすべての始まりだったという解釈をしているので、絵にはこだわりがありますが、幻想的で素敵でした。

廃屋であの絵を見つけて、まるで雷に打たれたみたいにショックを受けて、それから少年の長い旅が始まるわけですねえ・・・しみじみ。

ラフレンツェとエルは、あらまりさんがお面をつけてます。このお面もかなりマッド・ジョージさんがこだわって作っただけあって素晴らしいものでした。

歌うときに支障がないように、という配慮だと思いますが、お面といってもちょうど法令線から上の部分だけです。これは遠くから見ると全く違和感ないだろうし、いいアイデアだなあと思いました。

全体を覆ってしまうと歌いにくいし、動きが制限されてしまう気がするので。

正面はラフレンツェ、背面は魔女の装いです。一人二役。うまく作ってあるなあと思いました。

ただ、ラフレンツェが禁を破るときの映像とか動きが、これだけはライブの中で唯一、もう少しなにか他の方法はなかったかなあと思ってしまった場面です。(^^; いかにもという定番だったので、見ていてちょっと照れくさかった。

エルとラフレンツェに関してのみ、お面にしたというのはさすがだと思いました。楽園パレードに加わるABYSS五人娘とは違って、人間ではない面を表現したかったのではないでしょうか。

ABYSS五人娘は元々、まったく普通の人間だと思うのですが、エルとラフレンツェは少し魔族の血が入っているというか、そういう設定なのかなと。

エルは「エルの楽園」PVでも人形で表現されてますね。これは、エル=肖像画のエリスに似せて作った少年の理想、ということなのかなあと。人形に命が吹き込まれてエルになった。だからエルは普通の人間じゃない?

ライブの演出で一番好きなのは、やはり、『エルの肖像』で紗幕が上がって一気に盛り上がるところと、それから『エルの楽園 side A』。

Elysion(楽園)とAbyss(奈落)が背中合わせにあることを感じました。それは、前回の日記にも書きましたが、あのグレムリンぽい天使?にも現れてる。醜悪と美の奇妙な取り合わせ。

『yield』のタンバリン持って踊るあらまりさんは可愛かったです。あの振付いいなあ。歌詞の最後はひどく残酷なものなのに、曲とあらまりさんだけ見てると、ほのぼのしてきます。

『stardust』の真っ赤なドレスも、あらまりさんにぴったりでした。バラを抱えて客席降り。歌いながら一輪ずつ配るのは、最高の演出です。お客さんも、ドキドキしちゃいますね。あれ生のお花だといいなあ。

もし生なら、切り口のところにエコゼリーのような保水剤をつけていてほしいですね。細かいことですが、もらったお客さんが帰宅するまで、全く水がないのではお花が可哀想なので。

まるでミュージカルのような、すばらしいライブでした。これ、やり方によっては帝国劇場で舞台としても興行できるんじゃないかと思いました。音楽も重厚で、一つの物語として出来上がっている。お芝居としてやるなら、もう少し話の流れをわかりやすくしなければいけないかもしれないけど(謎が多すぎるから)、ミュージカルとして見てみたいと思いました。

最後に、あらまりさんの衣装とメイク、すごく似合ってました。あれだけ舞台で何曲も歌い続けることができるなんて、すごいです。

『Elysion ~楽園パレードへようこそ~』 Sound Horizon

2005年に行われた、sound horizonのライブ映像を見た。

すごいものを見てしまった(^^;

3つの才能が集合して、素晴らしい作品を作り上げてる。

まずなにより、作詞・作曲を手がけるREVO(レヴォ)さん。

そして、ヴォーカルとナレーションを担当するaramary(あらまり)さん。

最後に、演出担当のスクリーミング・マッド・ジョージさん。

もちろん、他にもJimang(じまんぐ)さんとか、楽団のみなさんとか、舞台を支える皆さんがいるのだが、前述の3つの才能が合わさって大変なことになってます。

この世界、好きだなあと思った。ライブというより、ミュージカルを見ている感じ? 曲の合間、合間にナレーションが入る。多彩な音。意味深な言葉。

あっという間に、幻想の世界へ引き込まれました。

1つ1つの曲は独立してるんだけど、実はそれが全部つながっているようで・・・。全部が合わさったとき、まるでファンタジー小説のような世界が広がるのです。

解釈については、見た人の数だけいろいろあると思いますが、私なりに感じたことを書いていきます。

なんだかこの音楽聴いていると、小説が書きたくなりますね。

これは、楽園を求める人間の業を歌った、長い輪廻の物語だと思いました。

すべての始まりは、『エルの肖像』だという気がします。少年は、深い森の中。廃屋にある、白い少女の肖像画を見て魅入られてしまうのです。

ライブの中で、あらまりさんが歌い上げると同時に、紗幕がさーっと上がり、演奏陣が前へ。フルートが響き渡って、鳥肌が立ちました。場の空気が、一気に盛り上がります。

少年が肖像画の少女に恋をして、壮大な旅が始まるのです。

なにが起こるんだろうというワクワク感で、胸がいっぱいになります。このときのあらまりさんの衣装が素敵。中世の村娘風の、コルセットとスカート。

メイクもいけてます。この、衣装とメイクのセンスがいいですね。マッド・ジョージさんいい仕事してるなあと思いました。

彼はハリウッドでは有名なSFX(特殊効果)アーティストなのですよね。実は今まで苦手だったんですけども。刺激的な作品が多すぎて・・・。でもこのライブの細部にまで渡る、マッド・ジョージさんの世界観は偉大です。

マッド・ジョージさんは『エルの楽園 side A』でも黒子として、妖精の人形を動かしてました。この人形がまた、いい味出してます。

楽園で泣く人などいないというエルの話を聞いてあげる妖精。天使を模しているのでしょうか?でも顔はグレムリン(^^;

そのギャップがなんとも言えません。醜悪な顔のグレムリンが、軽やかな天上の調べに乗って現れ、清らかな乙女エルの傍を舞ってるんですよ。なんて不思議な光景!でもそれが逆に、Elysion(楽園)という名のこのライブにぴったり合っているのです。

エルが死後に行ったと思われるElysionですが、それと背中合わせに、エルの父親が堕ちた奈落があるのではないでしょうか? だから悲しむ大勢の人の声を、エルは聞いたのかなあと思いました。

肖像画に恋をした少年は、肖像画の少女「エリス」を探し続ける。そして「エル」という娘を得るが、「エルの楽園 side E」にあるように、父と娘は亡くなり、2人の魂はそれぞれ別の場所へ。

少年=エルの父=仮面の男は、死後も永遠にエリス=エルを捜し求めて、似た境遇の、不幸の匂いのする女性たちを楽園パレード(死者の行進?)に招き入れ、彷徨い歩く。

これは私の個人的な解釈なので、別の人が見ればまた別の解釈があるでしょう。無限の可能性がある音楽だと思いました。

それは終わらない、どこまでも続く救いのないパレードで。誰もが楽園を求めるのに、どうしてこんなことに?人間の幸せって・・・と考えさせられます。

ちょっと長くなったので続きはまた後日。