杉田かおる著『杉田』を読んだ。以下、ネタバレありますのでご注意。
杉田さんに関する見方が、変わった。苦労してきた人だったんだなあ。興味深く、一気に読んでしまった。セレブ婚が騒がれたけれど、杉田さんにとってはお金だの名誉だのは、あまり関係のない話だったようだ。お互いが、お互いを理解し合えるという相手にめぐりあえた幸運。それが大事で、他のことは後からついてきたのでしょう。
本の中には、ある教団への信仰とそこからの脱会、父親との縁切りの話が綴られていた。ここまで赤裸々に書くのは、どんな気持ちだったんだろうと思う。結婚して、強くなったから書けたんだろうか。自分をしっかりと持っていなければ、こういう告白はできないと思う。自分をさらけだすことは、自分の弱さをみせることで、だから渦中にいる間は文字にできないのではないか。
今この本を書いたということは、過去は杉田さんの中である程度消化できたということなんだろう。そのことに、救われる気持ちがした。
宗教の恐さを感じた。宗教に救いを求める人は多いが、それで本当に皆が救われるとは限らない。むしろ、もっと深い闇に落ちていくこともある。心が弱くなっているときほど、注意が必要だ。
父親のことを書いた記述は、痛々しかった。きっと書きながら、何度も嫌なことを思い出したんではないだろうか。そういう記憶を甦らせる作業は、杉田さんをどんなにか苦しめただろう。でもそれ以上に、書くことが杉田さんを救ったんだろうか。
世の中はきれいごとだけでできているわけではない。だけど、譲れない一線がある。そういう信念を、杉田さんには感じた。その一線を守っている限り、人は何度でも立ち直れる。本当に怖いのは、自分の魂を誰かに譲り渡してしまうこと。
杉田さんの父親もひどいが、母親にも怒りをおぼえた。どうして、杉田さんを守らなかったんだろう。母親だけでもしっかりしていたら、杉田さんがここまで苦労することはなかっただろう。母親なら、子供を守るためには鬼になって外敵に立ち向かわなければ。
杉田さんは今、スタートラインに立っているんだと思う。これまでの過酷な経験が心に及ぼした影響は、そんなにすぐ消えるものではない。自分が相当本気にならなければ、自分は変えられない。酔って暴力をふるってしまうという自分を、治せるかどうかに結婚生活の将来がかかっているのではないだろうか。それを変えられなかったら、破綻は時間の問題だ。
華やかにみえる女優さんも一人の人間で、いろんな葛藤と過去を抱えた存在なのだと、あらためて実感した。