桜絵巻狸源氏

 宝塚のOGが出演する「桜絵巻狸源氏」に行ってきた。場所は新宿コマ劇場。歌舞伎町は相変わらず雑然としていて、なんとなく怖い。石原都知事が奮闘して、ずいぶん治安はよくなったと聞いたけれど、その前の状態を考えると・・・・。新宿がもっと、安心して遊べる街になればいいなあと思った。

 「桜絵巻狸源氏」は、鳳蘭さんをはじめとする、豪華メンバーが出演するミュージカルコメディ。その時代、その時代のトップスターが顔を合わせるのは、めったにないことだ。最初の幕が上がった瞬間から、華やかさに圧倒された。まさに、ザ・宝塚。お話の中に、昔演じたお芝居のセリフを織り交ぜてあるから、昔からのヅカファンは大うけだった。

 私は宝塚を見に行ったのは「ファントム」の一度しかないので、あまり細かいパロディはわからなかったけれど、「ベルサイユのバラ」や、「風と共に去りぬ」のセリフ部分はわかった。特に、レット・バトラーがスカーレットに詰め寄るシーンなどは、面白かった。宝塚で見たことはなかったが、小説や映画と同じようなセリフだったから、すぐにピンと来た。

 脚本はとてもオーソドックスなものだったので、もう少しひねりがほしいかなーという気持ちはある。だけど、それぞれの出演者にある程度平等なセリフを配分したり、ということを考えると、なかなか奇抜な演出もできないし、無難な線だったんだろうなあ。

 第一部は、ミュージカル。そして第二部は、レビューショーだった。私はこのレビューショーの方が迫力があって好きだ。宝塚のいいところを、ぎゅっと凝縮した感じ。とにかく華やか。きれい。ぼーっと見とれてしまった。舞台に釘付けである。

 OGの方々なので、年齢的には現役生徒さんよりずいぶん上なのだが、舞台の上ではそれを感じさせない。そして、とにかく、スターとしての輝きがまぶしい。

 

 みんな、抜群のスタイル。男役のタキシード姿、娘役のドレス姿。それぞれ、夢のようにきれいだった。特に男役は、実際には女性なので線が細く、漫画に出てくるような美青年の風情。華奢で足がすらりと長く、甘い歌声に観客はメロメロ、という感じだった。

 なかでも、鳳蘭さんの歌には感動した。舞台の上で死にたい、という歌。心がこもっていて、それまでの鳳さんの人生をすべて歌にこめた感じで、この歌は若いスターには歌えないなあと思った。いろんなことがあったからこそ、歌える歌だと思った。

 宝塚は、退団してしまうとこうしたレビューショーに出る機会が、ほとんどなくなってしまうのがもったいない。まだ歌えるし、踊れるのに。トップにのぼりつめた方たちはそれぞれ個性的な魅力がある。東京宝塚劇場はチケットがとりづらく、いつも満席状態なのだから、こういうOG公演を並行して定期的にやればいいのにと思った。

 観劇後の心地よい興奮にひたりながら、新宿御苑を散歩する。私の大好きな公園である。広くてきれいで、たくさんの緑に囲まれているとほっとする。新宿駅のすぐそばにこういう緑の空間があることは驚きだ。森の向こうに、高層ビルが並んでいる。

 天気がよく、暖かな空気の中、たくさんの人たちが寛いでいた。なんて平和で、幸せな情景だろう。池の亀を眺め、プラタナスを見上げ、日本庭園のベンチで一息。雲の流れをぼんやりと見ながら、今年は桜の時期にここへこられなかったことを、いまさらだが残念に思った。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。