帝国劇場で上演されている、「モーツァルト!」を観劇してきました。以下、その感想です。ネタバレしてますので、未見の方はご注意ください。
やっと見ることができた~、という感じです。そして、記念すべきモーツァルトの初観劇は、なんとセンターブロックE列(前から5列目)。期待に胸を膨らませて見ました。
モーツァルト、井上芳雄君。若くて傲慢で、自分の才能に絶対の自信を持っている若者のエネルギーが、舞台上で弾けてました。私の抱くモーツァルトのイメージと重なりました。
モーツァルトって、わりと恵まれた人だったと思うのですよ。シューベルトとか、ベートーベンとかに比べたら、華やかな人生だったと思う。生きているときに、その才能が世間に認められてますし。病と闘ったわけでも、命をおびやかすような貧困に苦しめられたわけでもない。
垢抜けているし、上昇志向もあるし、若さゆえの生意気な部分だったり、情熱の爆発だったり、いかにも「モーツァルトらしいなあ」と感じる部分が多々ありました。
井上さん自身が、シンデレラボーイのような経歴なのですよね。東京芸大在学中に抜擢されて、「エリザベート」のルドルフ役でデビュー。そして「モーツァルト」で主役。東京芸大に入っている時点で、すでに王子様ですねえ。
本人の努力もさることながら、東京芸大って、恵まれた人でないと入れないところだと思うので。才能と、それを応援できる家庭環境。
やっぱり、合うキャラ合わないキャラというのは、あると思います。モーツァルトは、井上さんのイメージに合うのです。洗練された役が合う。暗かったり、どうしようもない傷をひきずった役だったら、努力しても壁を越えられないと思う。泥臭い役も、似合わなそう。
「エリザベート」、井上ルドルフで見てみたいです。これも、きっと似合うと思う。生まれながらの品のよさとプライドを、きっとうまく演じてくれるでしょう。
そして大司教コロレド様。山口祐一郎さんが演じているのですが、登場した瞬間から視線を一身に集めてしまう。まさにスターの貫禄でした。なにも声を発していなくても、そこにいるだけで空気が重い。
色と欲にまみれた、とんでもない破戒僧を想像していましたが、これが予想と正反対。うーん、品があるわ、このお方。あまりにも堂々としていて、それが批判を許さないほどの神々しさを醸し出しているのです。
実は、人間くさいシーンが多いのですが、山口コロレドだと、それを人間ぽい、と感じないのです。たとえば、馬車に乗っていて急にお腹が痛くなっちゃうシーン。お付きの人が、慌ててお世話をしますが、本人はお世話されるのが当たり前で、そこに恥ずかしいという気持ちはまったくありません。乱れた髪さえ、それを少しも恥と感じていない。
人に仕えられることを当然として人生を過ごしてきた、そういうオーラが漂ってました。きれいなお姉さん4人に囲まれてのお取り込みシーン。まったくエロさがないのにびっくりしました。いや、お姉さんたちはがんばっているのですが、なんというか、コロレド様の背筋のよさが、すがすがしく。実際に背筋をぴんと伸ばしていたかどうかはともかく、なんだか「お姉さんたちの誘惑をまったく意に介さず」的な雰囲気が伝わってきたのでした。
私、このコロレド様がけっこう好きになりました。見る前は、どんな嫌な人物だろうと思っていましたが、なかなかどうして、真摯な人物のような気がします。ただ堕落しただけの人物だったら、きっとモーツァルトの才能に気付くことはなかったでしょうし、固執もしなかったでしょうね。
マント捌きは必見です。長身だから、赤に金の刺繍のゴージャス衣装がよく似合います。存在感にうっとりでした。
ちょっと長くなってしまったので、続きは後日。