エコール

先日、映画『エコール』を見てきました。以下、感想を書きますがネタバレ含んでますので、未見の方はご注意ください。

PG12指定の映画なのですが、その意味がよくわかりました。これは、男の人には見てもらいたくない映画かも、です。女性限定で公開すればいいのに、と思ってしまいました。

映像がきれいなんだろうなあという期待で見に行ったのですが、綺麗で不可思議な雰囲気はステキでした。結局謎は謎のまま残り、見た人それぞれが、解答を自由に思い巡らすような形の作品です。

高い壁に囲まれた森の中。少女が棺桶に入れて運ばれてきて、外界と隔絶された世界の中で寮生活を始める。年齢別に色分けされたリボン。最年長の紫の少女たちは、新たに幼い女の子が仲間に加わると同時に、外の世界へ出て行く・・・。

その「学校」がなんのために存在するのか、なんのための学校なのか、謎が明かされることはありませんでした。幻のような世界でありながら、「この学校の生活は舞台を見たお客からのお金で成り立ってる」という、妙に現実的な説明はあったしなあ。近いうちに、原作を読んでみるつもりです。そのときにはまた、その感想を書きます。

物語の最初に登場するのは、最年少のイリス。棺桶の中から起き上がって、戸惑いながらもあまりにもあっさりと自分の運命を受け入れるところが、不思議でした。それがこの映画の原題、innocenceにつながるのでしょう。

無邪気で、疑うことを知らないから。素直であるということ、なにものにも染まっていないということ。だからこそ、どんな運命をも、ただあるがままに受け入れる。最年少のリボンが赤いところが、気に入りました。ちなみに最年長は紫。これもピッタリだと思います。

小さな女の子を象徴する赤いリボン。大人へ孵化しようとする紫のリボン。紫にはいろんな色が内包されている気がします。不安や恐れ、そして好奇心や希望。外の世界に旅立つ前の1年間は、その紫のリボンが最年長の印。

映画では、最年少の赤がイリス。学校に来たばかりで、同じ立場ですぐに友達になったローラは、脱出をはかって亡くなります。イリスは、ローラが逃げた夜、真実を黙っている罪に怯え、眠れずに膝を抱えて震えていました。

何事もない平穏な学校と寮の毎日にも、秘密の影は見え隠れし、映画を見ている観客の恐怖感を煽ります。なにかの瞬間に、すべては崩れ落ちてしまいそうな予感がするのです。イリスは、アリスは、そしてビアンカはどうなるんだろう?と心配になります。

最年長の子だけが、夜、灯りに導かれて先生たちの住む建物へ行くという設定も、謎めいていてワクワクしました。等間隔に灯る光が幻想的です。その先生2人というのも、子供達とは対照的な大人の女性で、おそらく元はこの学校の生徒であったと思われるような・・・。

少女達の身の回りの世話をする高齢の女性2人も、きっと元生徒ですね。そこにどんな人生があったんだろうと、想像がふくらみました。

登場人物たちがそれぞれ個性的で、印象深い映画でした。でも、見終えた後に、かなり気が滅入りました。それは、自分にもそういう時代があったことを強烈に実感し、そしてもう2度と、それが戻らない時代であるということを痛感したからです。森の中で戯れ、笑い合っていた少女達の姿。もうそこに、溶け込むことはできないんだなあと・・・。

この映画、女性ならそこに秘められた隠喩を、わりとたやすく解くことができるのではないかと思いました。

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