『ミネハハ』フランク・ヴェデキント著

『ミネハハ』フランク・ヴェデキント著を読了。モデルの市川実和子さんが翻訳したとのことで、どんな感じに仕上がっているのか楽しみに読んだのだが、あまりピンとこなかった。

文章には、書き手のセンスがあると思う。そのセンスが自分に合うか合わないか、それによって、感動があったりなかったりする。

この訳された本の文章は、私の心に響かなかった。笑う水、という意味だそうだが、タイトルのインパクトは強烈。

映画『エコール』の原作本だ。この原作に触発されてあの映像を作り上げたのはすごいなあ、と思った。

正直、あまり男性に見て欲しくはない映画だ。

映画の中の色使い、光の加減など、とても印象的だった。あの本を読んで映画を撮ってくださいと言われても、ああいう作品に仕上げることができる人がどれだけいるだろう。

『エコール』は、まるで夢の中の映像のようだと思う。謎だらけだし。答えはみつかるようでいて、最後まであやふやなまま。隔離された森の中。空気は澄んでいて、湿った土の匂いが漂ってきそうで、自分もその中にいるような気持ちになる。

最上級生が、たった一人で出かけていくときの、白い背中が妙に印象に残っている。どこへ行くんだろう。そこになにがあるんだろう。いつか学年が上がって、自分もその秘密を知ることになるんだろうか。そんなドキドキ感。(映画の中ではすっかりイリスに感情移入していたので)。

本を読んだ影響なのか、妙な夢をみた。

私は深い森の中にいて、目の前に死体が2つ。現実なら、恐ろしくて逃げ出さずにはいられない状況なのだが、私は落ち着いてその2つの死体を見下ろしていた。といっても、布がかけられていて、顔はわからない。ただ、その布が森の湿気を吸い、次第にその下の人間の形をあらわにしていく。

2人のうち1人は、軍服を着ている。私はその人の死に際を思い出す。どんどん冷たくなっていくその人に、ずっと寄り添って見守っていたこと。泣こうがわめこうがどうしようもない、圧倒的な死の現実を、思い知らされたこと。

戻らなくては、と思い森を抜けようとするが、来るときには容易く渡れた川が増水していて、しかも雨が降り始める。浅瀬を探すが、どこにもない。川のすぐ向こうには、建物の明かりが見える。あんなに近くにあるのに、戻れないというあせり。私がここにいることを、あの建物の中の人たちは誰も知らない。だから、助けにくることもできない。

こうなったらこの雨の中。暗い森の中で、一晩を過ごすしかない。覚悟を決めたところで、夢から覚めた。

色も匂いも音も、私の夢はリアルだ。いったいなにを暗示した夢なのか。不条理さが夢の最大の特徴なのだとしたら、『エコール』という映画もまた、夢のような映画だったと思う。最後まで、謎は解けなかったから。

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