Sound Horizonの『エルの絵本 【魔女とラフレンツェ】』という曲についての感想です。
ライブ映像だと、表現が直接的すぎてあまり好きな曲ではなかったのですが、映像なしで何度も聴くうちに、ぐいぐい引き込まれていきました。大人な曲なので、18禁だと思いますが(^^;
曼珠沙華の学名がリコリスだと、初めて知りました。この音の響きがなんとも・・・。不思議な響きですね。別世界を感じさせます。
曼珠沙華という言葉で、目の前には群生する禍々しい花のイメージが広がりました。曼珠沙華(彼岸花)が恐いと感じるのは、その派手な色や美しい形にも関わらず、花束に使われることもなく、「異質なもの。通常の花とは別枠」という暗黙の了解があるから?ですかね。
なによりドキリとするのは、葉がないこと。お彼岸の頃、突然赤い花が咲き乱れ、あっという間に散ってしまうイメージがあります。人目を引かずにはいられないほどの赤、それなのに、あるべきはずの葉がどこにもない。
まるで造花をいきなり地面に突き刺したかのように見えるその姿が、心に不安をかきたてるのです。この花はいったい?と。
私が子供の頃、彼岸花はお寺のそばに群生していたので、よけいに、「死」や、「墓」というイメージと繋がるのかもしれません。
毒を持つ植物ではあるけれど、長時間水にさらすことによって毒抜きが可能で、球根は戦時中に食用とされたこともあったとか。
「生」と「死」。二面性を持つ美しい花。その花が咲き乱れて、そして楽園がある。
曼珠沙華は、どちらの世界に咲くのだろう、と思います。
ラフレンツェのいるこちらか。死者の佇むあちら側か。
どちらの川岸にも、同じ曼珠沙華が咲き乱れているのでしょうか。
鮮やかな赤色に、密かに毒を隠して。ラフレンツェの純潔の結界が破られたから、冥府にしか咲かないはずの花が、狂い咲いたとも考えられます。
『Elysion~楽園幻想物語組曲~』というアルバムの中で語られる、楽園への尽きない憧れ。この世界観が大好きです。楽園は救いで、その楽園に手を伸ばして伸ばして、でも届かない。そのもどかしさは、大なり小なり、誰もが経験するところではないでしょうか。
今頃になってわかったのですが、「エル」は、ラフレンツェの子供だったんですね、きっと。そんな気がします。だから『エルの楽園 「→ side:E →」』という曲の中に、男のつぶやきが入っているのかと。
「エル」を溺愛する男が、なぜその母である女性を愛さないと言いきっているのか不思議でした。でもこの「魔女とラフレンツェ」を何度も聴いているうちに、だんだん謎が解けてきたような気がします。
ラフレンツェが、巫女のような女性だったから。
そもそも、彼は最初、ラフレンツェに子供を産ませようとしたのではなく、ラフレンツェの力を利用して、自分が少年の日に恋に落ちた、あの「エリス」を生き返らせようとしたのかなあと。
その辺りはギリシア神話のオルフェウスとエウリディケをモチーフにしているみたいですが、日本のイザナギ・イザナミ神話も彷彿とさせるものがありますね。
ちょっと長くなりましたので、続きは夜12時過ぎにUPします。