吸血鬼再演にこっそりつぶやいてみる

 『ダンス・オブ・ヴァンパイア』、ついに再演決定です。

 ああ、でも、もう2006年版とは全く違いますね。なんといっても、サラが違う。

 以下、あくまで超個人的な感想です。ネタバレ等も含みますので、舞台を未見の方はご注意ください。

 フワフワ夢見る、足元が大地から浮いちゃってるんじゃないかというような、浮世離れした少女、サラ役を好演していた剱持たまきさんが降板しました。

 今度のサラ役は、初演から続投の大塚ちひろさんと、今回あらたにキャスティングされた知念里奈さんです。

 うーん。これは私が描いていたサラ像とは、全然イメージが違うなあ。

 まず大塚ちひろさん。舞台『レベッカ』で「わたし」役を演じていた大塚さんはぴったりだったけど、この「サラ」役はどうかなあ。大塚さんは、夢見るというよりも、現実的なイメージがあるのです。

 しっかりしているというか、大人びているというか。

 伯爵の誘惑を、フンっと軽くかわしそうな余裕を感じるのです。

 そう。言うなれば、もう大人になってしまった、的な。

 だから、きっと伯爵なんかには誘惑されないし、街に行きたければ、迷うことなく出て行きそうなのです。そこには、アルフの助けすら、必要ない。

 声も雰囲気も完成されていて、揺らぎがないところがサラとは違うような気がするのです。

 そして知念里奈さん。知念さんも、サラのもつフワっとしたイメージはないなあ。知念さんは歌唱力がありますが、その歌声には強さと悲壮感があり。そしてその強さは他者に攻撃的というよりも、自分を叱咤激励しながら動かしていくような、激しさというよりも、優しさに裏打ちされた力のような気がします。

 私の考える理想のサラは。

 浮世離れしているというのが大前提にあって。夢ばかりみていて、誰かがふっとその背中を押せば、意志とは違う方向へも危うい足取りで進み始めるような、そんな人です。

 赤いドレスじゃなくて、白いドレスが似合う。それもフリル付き。

 サラが笑うと、まるで陽がさしたようにぱっと、その場が明るくなって。その幼さに、その無邪気さに、思わずこっちまで微笑んでしまうような。

 ふらつく360度の可動性みたいなものが、サラの魅力なのだと思います。今泣いてたかと思えば、もう次の瞬間笑ってる、みたいな。

 サラのその危うさが、クロロック伯爵の目にとまったのではないでしょうか。

 伯爵は白いドレスの似合うサラに、赤いブーツを贈り、舞踏会へと誘う。最初はブーツ、それからショール。舞踏会用の、綺麗なドレス。

 馴染まなかったその赤が、次第にサラの魅力を引き立てていく。

 この舞台で、サラの果たす役割は大きいと思います。だからこそ、サラ役には、いっそオーデションで新人の女優さんを抜擢してほしかったなあ。東宝ミュージカルアカデミーがせっかくできたのだから、そこの学生さんや卒業生で、有望な人はいなかったのでしょうか。

 アブロンシウス教授役には、市村正親さんに代わって、石川禅さん。

 ということは、コメディ路線というより、少しシリアス路線の場面展開になるのかもしれない。どんな教授を見せてくれるのか楽しみです。

 ヘルベルトとクコール役は、初演と変わらず吉野圭吾さんと駒田一さん。

 これはねー。もう不動のキャスティングでしょう。キャラぴったりです。

 そして、サラに次いで大事だと思うアルフレート役を、泉見洋平さんが初演に引き続き演じることになりました。泉見さんが演じる熱血青年像は、舞台の魅力を何倍にもしてくれるので、続投は嬉しいです。

 泉見さんは、舞台の上でどんどん変わっていきましたね。回を重ねるごとに、アルフレートになりきっていったと思います。アルフレートがサラに熱をあげればあげるほど、2人の温度差が面白くて、どんどん舞台に引き込まれました。

 アルフはWキャストで、浦井健治さんも同じく続投です。

 浦井さんのアルフは、泉見さんとは対照的な、ナルシストな青年の印象があります。

 そして、マグダ役にシルビアさん、これは驚きでした。

 『レベッカ』のダンヴァース役が強烈すぎて、そのイメージがまだ頭の中でぐるぐると回ってます。

 でもそれを抜きにしても、マグダというキャラには合わないような気もするんですよね。マグダは小悪魔的な色気が必要なキャラで。色っぽさと、蓮っ葉な部分がないと、面白くなくなってしまうから。

 シルビアさんはどちらかというと、さっぱりした体育会系のイメージです。

 公式ホームページのセンス、いいですね。雷鳴、赤い靴、月明り、夜の雲。メインの画像は、初演時に帝劇の柱に貼られていた、あのカッコイイ伯爵様だし。

 ただ、月明りに浮かび上がるお城の画像は少し安っぽくて、むしろないほうが、想像がふくらんでよかったのになあ(^^; それとあのキャッチコピーは・・・・他に候補はなかったのかなと・・・・。

 宣伝担当のリー君。また楽しいブログをやってくださいね。

 あの2006年の、夢のようなキャスティング。回を重ねるごとに、変化していった舞台。同じものを望んではいけないとわかっていても、つい比較してしまいました。

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