『ガラスの仮面』46巻 美内すずえ 著

『ガラスの仮面』46巻を読みました。以下感想を書いていますが、ネタばれしていますので、未読の方はご注意ください。

物語は、視力を失いつつある亜弓の、演技の特訓シーンから始まるのですが、私はあんまり亜弓さんの練習風景には興味がないです(^^;

紅天女っていう究極の演目を演じるのには、亜弓さんでは無理ではないかと。

亜弓さんは、魂のかたわれを失うことはないだろうから。

やっぱり、真澄さん(マスミン)とマヤの結びつきあってこその、紅天女なんだと思います。もちろん、そこにすんなり行き着いたらドラマにならないので、強力なライバルとしての亜弓さんが存在しているんだろうけど。

これ、マヤが演じることになるんだろうなあ、と、勝手に予測しております。そして、それと引き換えにマヤは、マスミンと引き裂かれるのかなあと。だからこそ、紅天女の阿古夜が、完成するというわけです。

・・・と、思っていましたが。

そんな運命の二人、という設定を根本から揺るがすようなエピソードが、46巻にはありました。

ウェディングドレス事件。

マスミンの婚約者の紫織さん(シオリー)、マヤを真澄さんから引き離すために、罠を仕掛けます。

ウェディングドレスの試着中に、マヤにジュースを持ってこさせ、よろけたふりをして倒れかかり、ジュースを白いドレスにこぼすのです。その傍で、呆然としているマヤ。手には空のグラスを持ったまま。傍目には、マヤがジュースをぶっかけたように見えます。

そこにマスミン登場。

>いってみろ! 彼女になにをしたんだ・・・!?

ブチギレモードです。

あんまりです・・・。マヤもショックを受けて、うまく説明できないのに。マスミンらしくない。もっと冷静な人なはずなのに。なんで一方的にシオリーの肩を持つんだろう。

あげくに、マヤが落としたバッグの中からシオリーの婚約指輪が転がり出たのを見て、マヤが嫌がらせで指輪をとったのだと思いこむんです。

さすがにマヤはきっぱり否定しますが、(そりゃそうです、ウェディングドレスが汚れた事件はまだしも、指輪の盗難まで疑われたら、必死で身の潔白を訴えますよね。呆然としてる場合じゃないし)

しかーし。驚くべきは、マスミンの態度でした。

目の前にマヤがいて、事情を説明しているのに、信じていないんです。マヤがシオリーに嫌がらせをしたと決め付け、こんなセリフをはきます。

>きみがおれを憎んでいるのは知っている

>それだけのことをおれはしたからな・・・!

>だったら俺を憎め!!

>俺のフィアンセは関係ないだろ・・・!!

あ・・れ・・?

なんか、マスミン性格変わっちゃってるし。

こんなの、マスミンじゃありません(;;)

これは・・・こんな真澄さんを見たくありませんでした。

マヤがこの瞬間、マスミンを見限っても無理はないほど、ひどい対応だと思いました。

恋愛って、信頼関係だと思うんですよね。

人は・・・嘘をつきます。

たとえば誰かと誰かを引き裂くために、平気で嘘をつく人も、いるわけです。どちらを信用するか、ということなんだと思います。

愛した人を信じるのか。

その人を糾弾する人を信じるのか。

マスミンは、目の前にいるマヤの言葉を信じなかった。これは、ガラスの仮面の世界そのものが崩れてしまうほど、衝撃の展開ではなかったでしょうか。

いくらその後で謝っても、償いきれないほどに。

マスミンがマヤを心の底から思うのなら、どうして信じられなかったのか。

なぜ紫織さんを信じ、マヤを疑ったのか。

マヤには嫌われていると思いこんでいる・・・・そんなこと、説明になりません。だって、目の前にマヤがいて、そのマヤが自分の口で語っているのに。その言葉を信じない? そんなの、ひどすぎます・・・。

これねー。マヤのことを、人づてに聞いて、それで疑うっていうのならわかるんですよ。

マスミンの中にある強い思い、「俺は嫌われている」っていう確信が、どれほど彼を苦しめているかっていう、逆に言えば、マヤへの思いの熱さを読者に訴えかけるような、そういうエピソードにもなり得たと思う。

でも、自分の目の前で、マヤがマヤ自身の言葉で語っていることを信じなかった。これじゃ、ただのヒドイ人、になってしまうと思います。

この46巻には、マスミンがマヤをかばって暴漢に殴られ続ける、というシーンもあるんですが。これ、もしかしたらウェディングドレスや指輪エピソードで株を下げたマスミンが、名誉挽回するための設定だったのかもしれませんが、私はこれを見ても、フーン、としか思えませんでした。

マスミン、相手が誰であっても、かばったと思うから。

たとえば紫織さんが傍にいたら?

ぜーったい、同じことを言って、同じようにかばっただろうなあ。

それが、女性である限り。

さすがに、聖さんとかだったら、ああいうふうに一方的に殴られ続けるというのはなかったと思うけど。

相手が女性なら、やはりポリシー的なもので、そこは盾になったんじゃないかと。

シオリー。

シオリーにはあまり、腹も立たない。哀れだな、と思う。

もちろん、実際自分がマヤの立場だったら、とんでもないことを仕掛けられて腹も立つだろうけど。

傍から見てるとシオリーは、ピエロの役割でしかない。

絶対勝てない相手に、ムキになって向かっていく。手に入れても幸せにはなれないものにむかって、泣き喚いて駄々をこねてる。

それより、マスミンがマヤを信じなかったことが、私には衝撃でした。

設定が破綻してしまう。

だってそんなの、魂のかたわれなんかじゃないと思うし。

他の誰が信じなくても。

マスミン、あなただけは、マヤを信じるはずなのに。

マスミンがマヤを信じてあげなかった。

それどころか、マヤを罵倒した、という、大事件があった46巻。

私の中で、真澄さまの評価はガタ落ちです(^^;

好きだったんだけどなー。

不器用なマスミンも、鈍感なマスミンも、みんなまとめて好きでしたけど。今後は少し、違った目で見ることになりそうです。

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