別冊花とゆめ5月号『ガラスの仮面』美内すずえ 著 感想その1

別冊花とゆめ5月号『ガラスの仮面』を読みました。以下、感想を書いていますが、ネタバレ含んでおりますので、未読の方はご注意ください。
感想を書くために、本誌から引用した台詞などは>で表してあります。
私が勝手に想像した台詞は、☆で表してあります。

混同しないように、記号分けしました。

今回は、桜小路君メイン。

だけどわからないことが一つ。桜小路君の、マヤに対する態度はなんなのだ? 戸惑ってるのだろうか。稽古場へ戻ってこられたことを素直に喜ぶ笑顔のマヤに対して、怒ったような固い表情でフイっと顔を背けるのは。ちょっと、桜小路君の心中を量りかねてしまった。

憎み合っていたはずの、マヤと速水さんの抱擁シーンをみてショックを受けて、次に考えることはなんだっただろうか。
私だったら、自分が目の前で見たことだけに・・・・・察するなあ。

事情はよくわからないけど、もはや二人は憎み合ってなどいない。むしろ、心を通わせあっているのだと。いい大人の男女が、友情でハグなんてしないもんね。

桜小路くんはなにを考えたのだろうか。マヤに対し顔を背けるのは、それってマヤに対してひどくないか? でも、マヤはさすが天然だ。

>怒ってる・・・?

ぼかーんとしてます。そうか、あんまりいろいろ考えたりしないのか。うん、でもそれが今はいいのかも。あれこれ考え始めたらきりがないし、桜小路君に対しては断る以外に選択肢はないのだし。
彼にへたに優しくすれば、結局、

☆マヤちゃん、僕はいつまでも君を待つよ。
☆だから僕を選んで。ずっと君を見ているから。
☆君の心から、紫のバラの人が消えてしまうまで・・・・

的な展開が、ループで繰り返されると思うんですよ。ここはむしろ、嫌いにさせることこそ本当の優しさなのかと。
好きなままじゃ苦しいからね。
マヤに落胆し、マヤを嫌いになれば、桜小路君は楽になれるから。

まあ、そんな相手と舞台で激しい恋を語る、なんてことは別の意味で苦しさを伴うかもしれませんが。舞台の上だけ、であればまだ、ましですもんね。四六時中、報われない相手に片思いしているよりも。

この交通事故をきっかけにして、一真役の本質に近付こうとする桜小路君ですが、事故で体の自由がきかない、その痛みよりも。
自分を相手に稽古しながら、自分を見てくれない、その向こうの誰かを常に見ているマヤへの、複雑な思いこそが一真像を深めるのではないかと思うのは、私だけでしょうか。

>死ねば・・・恋が終わるとは思わぬ・・・

一真の台詞に、こんなのがありましたね。肉体は今目の前にあり、温かさを感じるのに、自分のものなのに。その人の心が今、ここにはない。そういう状況、まさに紅天女稽古中の桜小路君が直面するその状況は、肉体の結びつきの不確かさを、心の結びつきの深遠さを、体感できるなによりの機会なのではないかと思いました。

だから一真は、梅の木を切れたのでしょうから。そこで断ち切られる絆より、もっと確かなものを信じていたのでしょうから。

マヤに対して、どんな態度をとればいいのか。桜小路君はまだ、揺れている状況なのかもしれませんね。だから、かける言葉もなくて、横を向くしかなかったのか。とても、笑顔をみせる心境でもなくて。

☆マヤちゃん、速水社長を憎んでいたんじゃなかったの?
☆マヤちゃん、いつから二人はそんなことになっていたの?
☆マヤちゃん、僕に可能性はもう、ないのだろうか?
☆マヤちゃん、少しの可能性もないなら、どうして期待なんてもたせるの?

桜小路君の心中を察するに、上記のような感じでしょうか?
問い詰めたい。でも、はっきり答えられたらきっと傷つく。
知りたい。でも結果が出れば決定的。
曖昧なままなら、幸せでいられる、不安定でも、それで構わない。

マヤは、黒沼先生が代役を考えず、桜小路君を一真役と決めたことに涙して喜びますが、私はもう一真役が誰であろうと、マヤの演技に影響はないだろうなあと思っています。
マヤが見るのは相手役じゃなく、相手役のその向こうにいる、速水さんだろうから。動きも台詞もすべて、速水さんに向けて語られるだろうなあと。

まあ、マヤはともかくとして。
舞台全体のことを考えたら、「マヤに恋する人物」が、一真役をやるというのは重要ですね。そうでないと、一真の台詞が上滑りしそう。

そうか。そういう意味で、一真役は桜小路君である必要があるのか。マヤは一真が桜小路君でなくとも阿古夜の台詞は語れるけど、一真役はマヤにひたむきな愛情を持つ必要があるわけで。
桜小路君とマヤは、昨日今日知り合ったわけじゃなく。重ねてきた歴史の分、桜小路君の苦悩は深く。だからこそ、観客を引き込む一真が生まれるのかも。

私は今月号を読んで、やはり速水さんとマヤは結ばれないだろうなあと、その思いが一層強くなりました。

結ばれないから、マヤは紅天女を手に入れるんですね、たぶん。速水さんを失う。どんな形かわかりませんが、そうなるんじゃないかなあ。その喪失が、マヤを紅天女として覚醒させる。その感覚の再現こそが、舞台上に本物の紅天女を出現させるのではないかと。

長くなりましたので、感想その2に続きます。

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