疲労困憊

 ずいぶん疲れていたようで、目が覚めたら正午だった。
 ほぼ12時間。眠っていた間、いくつもの夢をみた。現実と変わらないような、もう一つの世界。

 だけど、今日の夢は思い出せない。
 ぼんやりとした輪郭しか、わからない。

 公園を歩いて、いつもの桜の木に挨拶。

 この桜の木、なぜか幹がよじれてるのだ。それも二本並んで。まさか風が強いから、というわけでもあるまいに。

 もう1月もすれば、綺麗な花を咲かせるだろう。花が咲く前の木には、見えないエネルギーが充満している気がする。その時を、今か、今かと待っている感じが伝わってくる。

 桜の木は、根暗なのだそうだ。
 ある人が、そんな話をしていた。桜と言えばお花見。お花見と言えば宴会。そんな、明るいイメージのある植物だけれど、桜の木は本当は、暗い性格なんだと。

 私は、この行きつけの公園の桜の木が、見事にねじれた幹を持つのを見るたびに、その話を思い出してしまう。

 まるでみつめられるのを恥じらうみたいだなあって。
 もしも本当に根暗な性格なら、大勢の人にみつめられるのは苦痛以外の何物でもなかろう。

 桜の咲く季節。賞賛の声の中で、身を小さくして、視線を避けるように顔を背けて。恥ずかしさに頬を染めながら、じっとその時期をやり過ごすのだろうか。

 たしかに。薔薇とは違うもんなあ。と、そんなことを思う。

 薔薇は、プライドが高く、みつめられることにも慣れているイメージがある。孤高の存在。
 綺麗ね、という言葉にも、「当たり前よ。それがなんなの?」と、冷たく、真っ直ぐに見返すような。

 桜が本当に根暗な存在なら。
 山奥の、誰にも見られない桜こそ、のびのびと花を咲かすんだろうなあと思う。

 それはどんなにか、見事な花だろうか。

 季節は、確実に巡るもの。

 夜、空を見上げると、オリオン座の位置がずいぶん西寄りになっていることに気付く。

 冬も終わろうとしている。オリオン座も、やがて見えなくなる時が来る。

 西の空に、シリウスよりも明るく輝くのは金星。

 金星って、本当に金色なんだなあ、としみじみ眺めた。夜空の王者、シリウスは青白いし、東の空に目を向ければ、火星が赤い。

 星にもちゃんと、色があり、個性がある。

 私は、リゲルよりもシリウスが好きだ。

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