『Ghost Stories』Retold by Rosemary Border 感想

『Ghost Stories』Retold by Rosemary Borderを読みました。以下、感想を書いていますが、ネタばれしていますので未読の方はご注意ください。

これも、本屋さんの洋書コーナーで気に入って買ってきた本。タイトルと装丁に惹かれて。

中身も大事だけど、やっぱり装丁も大事ですね。この装丁じゃなかったら、買ってなかったと思います。

雲間に覗く月。不穏な光。灯りのついた屋根裏。古い洋館。

そしてタイトルは、『Ghost Stories』

ほぼ一目惚れでした。洋館大好きだ~。ディズニーランドのホーンテッドマンションが好き。今はなき二子玉川のサントリーモルツクラブも好き。蔦が這えば、なおワクワクする。

中身はと言いますと、複数の作家が書いた短編小説を、簡単な英語で書き直したものになってます。英語学習者向けに、ステージ分けされたシリーズの一冊。これはステージ5となってます。

確かに、学習者向けに書き直されているだけあって読みやすいのですが、それだけにちょっと味気なさを感じてしまった。整理されてわかりやすくまとまってるんだけど、味がないのです。

日本語にしろ英語にしろ、文章には人それぞれの癖があって、読んでるとそれが伝わってくるんだけどこの本は。
いかにも教科書的というか。
学習用なんだから、目的通りだろうと言えばその通りなんですが。お行儀よすぎて、透明な水みたいで。物足りないと思ってしまいました。

書き直した方は同じなので、すべて同じテイストで仕上がってます。

あと、面白かったのは、本編じゃなくて、その後。

英語学習用の本ということで内容の理解度を確認するためなのか、けっこうな分量のページを割いて、簡単なテストみたいなものが載っているのです。でも、解答がない(^^;

えぇ~、まさかの解答なし?と思いました。
一度本編に軽く目を通した後でやってみたところ、けっこう難しくて、やっぱり解答は欲しかったです。穴埋め問題もあるのですが、わからないところが結構ありました。

それと、その問題編の最後にですね。
それぞれの短編に出てくる登場人物の、気持ちを想像した文章が6つ載ってまして。
どの文が、誰を指すのか、またそのときに何が起こってましたか、なんて聞いてるんですけど。

英語の範疇を超えて、国語の問題になっちゃってるような気がしました。
懐かしの、現代文、模試、みたいな。

果たしてこれ書いた著者でさえ、そんなこと思ってんのかな、という。
誰が何を考えていたのか、明文化されてなかったら、想像するしかないわけで。それに答えなんかあるのかいなっていう。

消去法で行けば、たしかに答えは書ける、と思う。
そもそも、選択肢の数は限定されてるから。その中で一番当てはまるっていうのを考えていけばいいんだもの。

だけど、ちょっと深読みすると、なにか違うような気がして。
書かれた問題文は、もちろん一般的なことが書いてあるんだけど。いったんあまのじゃくに考え出すと、本当はあの人そんなふうに思ってたんじゃないかもよ、もしかしたらこうかもよ、なんて反発したくなったり。

本編には、6つのお話が載っていますが、全体的にあんまり恐くなくて拍子抜けしました。

特に、『Fullcircle』by John Buchan に関しては、恐いどころかほのぼのしてしまった。誰も不幸になってないし、むしろ、幸せになってるんじゃないかと。
家が人を変える。あると思いますよ~。
毎日いる場所だもの、影響を受けないはずないって思う。家には、人の気持ちも宿るんじゃないですかね。

昔、言われたなあ。
繰り返すんだそうです。居住者が変わるとき。退去の理由って、たいてい前に住んでた人と同じだとか。

だから、なるべく幸せになって出てった人の後に住むといいそうです。

本編の中で、恐さに順番をつけるとしたら、1位は『The Stranger in the Mist』by A.N.L. Munby でした。

幽霊のおじいちゃんが山をさまよっていて、迷子になった人をみつけては地図を渡すのですが、その地図は古すぎて、その地図通りに行くと、崖下に真っ逆さまというお話。
主人公はすんでのところで助かりますが、実は以前に、同じような状況で崖から落ちて死んだ人がいて・・・という。

悪意のなさが逆に、恐ろしかったです。助けようと思ってるのに、その行為こそが人を死に至らしめるという。
しかも、永遠に同じこと繰り返すわけですから。誰かとめて~と思っちゃいました。このままほっといたら、同じことが起きてしまう。

それができるのは、九死に一生を得た主人公しかないわけですが、本人にその気はなさそうです。いいのか? それで。

Bram Stokerの『The Judge’s House』に関しては、6つのお話の中で一番悲惨なラストなんですが、あまり恐いと感じなかったのは理由があって。私がもし主人公だったら、絶対もっと、抵抗してたなあと思うから。やすやすと、幽霊の思い通りになんてさせない。物っ凄い憤慨して、全力で立ち向かってたと思う。

私、幽霊とかみたことないですが。
そういうのをあんまり怖いと思わないのは。もし私が逆恨みで幽霊から被害を受けそうになったら怒るし、なんだか勝てそうな気がするっていう根拠のない自信です。

幽霊より、生身の人間の方が怖いなあ。

もし対決するなら、生きてる凶悪犯を相手にするよりは、絶対、幽霊の方が勝てそう(^^; まあ、そういう存在がもしあると仮定したら、ですけど。

この本を読んで痛感したのは、文章って味なんだなあと。

好き嫌いは分かれると思いますが、文章には書き手の気持ちが、にじみでてくるんですよね。そして、こうした学習用に書き直された本のお行儀のよさは、面白くない。

好きも嫌いもなく、つまらない。退屈に感じてしまう。

同じストーリーで同じ結末でも、原作で読んだらもう少し違う感想をもったかもしれません。

もう、この先こうした、学習用に書き直された本を買うことは、ないと思います。それよりは、たとえ難しくても、原作を読んでみたいです。

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