ドラマ『相棒 season13』最終回 感想

 あまり熱心に見ていたドラマではなく、むしろ見ていた回の方が少ないくらいなのですが。最終回は気になっていたので、見た感想を少しだけ書いてみたいと思います。ネタバレありですので、未見の方はご注意ください。

 

 水谷豊さん演じる杉下右京に感じた違和感・・・。

 右京さんは、犯罪者になってしまったカイト君に、「待っています」なんて言う人ではないと思う・・・。

 ここが、どうしても??でした。右京さんて、そういうキャラじゃないと思うなあ。絶対許さないと思うけど。そして、二度とカイト君に会うこともないと思うのです。

 逆に、会ってどうするというんだろう。なんて言葉をかけるんだろう。二度と、信頼できないだろうに。

 右京さんのキャラだと、あの空港でもしカイト君が話そうとしても、そのまますーっと立ち去ってしまうんではないかと。無言のまま。何を言われても、振り返ることなくそのまま行ってしまいそうです。
 もちろん、カイト君のことを憎んでるとかではなく、自分自身を許してないと思うんですね、右京さんは。
 一緒にいながら、上司でありながら気付けなかったことを。
 だから、カイト君に請われたところで、今さら彼と話すことなんて絶対ないだろうなあ、と思うわけです。

 あそこで、「待っています」だなんて、一番右京さんに似つかわしくない言葉で。右京さんはそんな、嘘をつくだろうかと。

 待ってて、どうなるんでしょう。二度と一緒に仕事ができるわけではないのに。かといって、お友達として仲良く、という存在でもないわけで。お世辞とか同情とか、そういうものは右京さんに似つかわしくないのに、カイト君に変な期待持たせて、どうなるというのか。涙するカイト君は、その言葉の虚しさを知っていたように思えました。

 待ってるわけないし、未来なんてないもんなあ。右京さんから、本音でない偽りの言葉が出てくるくらいに、二人の距離が離れてしまったことを知ってしまったからこその、カイト君の涙なのかもしれません。

 でもカイト君も変だった。
 普通、空港には行かないだろうと思いました。行ってどうするのかと。三年も右京さんと一緒にいて、どんな人かよくわかっているだろうに。空港で優しい言葉を聞きたかった? 許してほしかった?

 カイト君が動揺したり泣いたりするのは、初めて右京さんに自分の犯罪を告白する、そのときしかないと思いました。そのときこそ、二人の関係が決定的に断絶するときですから。なのに、そこでは案外平然としてて、空港で大泣きって、不自然な感じです。

 逆に、自然だと感じたのは、カイト君が、二件目以降の犯行の理由を「わからない」的に言っていたところ。

 これは正直な感想なのではないかと思いました。

 たぶん、いろんな要素が混ざり合っていたのではないかと。犯罪者への憤りもあり、ヒーロー扱いされることの心地よさもあり、そして何より、どこかで右京さんへの反発もあって。

 カイト君なりに、正義と信じていたものが、右京さんの前では全否定されるから。

 いろんな思いがあって、ふらふらと犯行を重ねていたのかなあと。一つの明確な理由や、定義があったわけではなく。だから、犯行理由を問われたとき、真摯に答えようとすればするほど、「よくわからない」になってしまうのかなあ。○○だろう、と言われればそんな気もするし、××だろうと言われれば、それも否定できないし、みたいな。

 あと、カイト君は案外孤独だったんだなあと思ったのは、恋人の悦子さんのことです。彼女はなんで最初の犯行で、彼の心の闇に気付かなかったのか。結局、同棲していて、子供までできる間柄であっても、心の深い部分で語り合うことはなかったんだなあと。
 だから、もうどうしようもないところまで追いつめられて初めて、カイト君がダークナイトだったと気付いたわけで。遅い、遅すぎる。

 最初の犯行、それから二度目、三度目、カイト君にはものすごい葛藤があったはずです。同棲してる恋人で、心の深いところで繋がっていたら、それは気付かないはずないだろうなあと思うのですが。
 むしろ、右京さんよりも、悦子さんこそカイト君の心に近かったはずなのになあ。

 このドラマは、いつも杉下右京を演じる、水谷豊さんの目の鋭さにどきりとさせられます。怖いなあと思ってしまう。普通刑事ドラマって、主役はいい人のはずなんですけども。
 でもそういうところが、逆にドラマの魅力にもなっているんでしょう。最終回の余韻が、数日たった今もまだ、私の心に残っています。 

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