種をつないでいく農業

改正種苗法が可決されてしまいましたけれど。種をつないでいく、という農家の自家増殖が禁止されてしまうのは、とんでもないことだと思う。少しでも植物を育てた人なら、わかるはず。植物はみんな、種や苗で、どんどん子孫を増やすのだ。それが自然なことなのだ。

その自然の営みを、駄目だとするのは人間の傲慢だと思う。

育成者の権利を強くすれば、(これまでにない儲けが見込まれれば)、当然、多国籍企業が参入してくるだろうなあ。この種の市場に。

莫大なお金をかけて開発、市場を席捲、その上で、農家が自家増殖を禁じられれば、種を登録した企業は安定して莫大な利益を手に入れられる。「今は登録品種も少ないから大丈夫。登録されていないものは、自家増殖できますし」なんて、意味のない法案擁護だと思う。

だって、増えるじゃん(^^;これから明らかに、増えるよね~登録品種。だって、新品種の開発促進のために、育成者権を強くしたわけだから。

この改正種苗法って、日本で開発されたブドウやイチゴやサツマイモなんかが、海外で勝手に品種登録されてその国のブランドとして売られていることの対策であるっていうけれど。

自家増殖禁止して、海外の流出とめられるのかね? それは、日本で開発した新品種を、即座に海外でもそれぞれの国で登録するしか、とめる方法なくない? 自家増殖禁止したところで、別に自家増殖した種や苗を、毎年海外に流出させているわけじゃないんだから、抑止力にならないと思うんだけど。

食の問題は、即、命や健康にかかわってくるので、とても心配です。改正種苗法を、また改正しなきゃいけませんね。

だって、以前に巨大企業モンサント(現バイエル)が、海外の裁判で農家を訴えてましたよ。

2004年5月、カナダの最高裁は訴えられた農家に敗訴を言い渡しました。裁判の内容はこうです。提訴は1997年。モンサント社の社員が、モンサントが特許を持つ遺伝子を持つ種を、パーシーさんの農場で発見しました。それで、パーシーさんが種を盗用した、と裁判所に訴えたのです。

パーシーさんはその種を、近所から飛んできたものだ、と主張しました。それに、その種は、モンサント社の除草剤とセットで使うものであり、自分はモンサントの除草剤をまいたことはないと。

モンサントは、特定の除草剤に耐性をもつ種を売る商法、やってますよね。その種を植えて、除草剤をかけると、その種以外の植物はみんな枯れてしまうというやつです。種だけが育ってバンザーイって、自然の摂理を考えたら、リスクは大きいと思いますけども。それも、すぐには顕在化しないリスクが。

そのような除草剤が体に入って大丈夫なのか、また、そのような遺伝子組み換えをした種を食べて、未来に影響はないのか。

パーシーさんにしてみたら、勝手に風にのってやってきた種が、自分のところの作物と混ざって、それを「登録した作物だ。特許がある」だなんて迷惑な話です。それに、モンサントの除草剤を使っていないことも、故意に種をまいたわけではない証明になるはずで。

なのに最高裁では、パーシーさん負けました。

これが、日本で起こらないなんて、言えないです。巨大企業は裁判のノウハウもお金もたっぷり持ってます。日本の中小農家が、「おい、お前のところは俺が開発した登録品種の種を、勝手に栽培しただろう」なんて言われて裁判を起こされたら・・・。農家を続けていけるのだろうか?

種や苗の特許って、芸術や工業製品の特許とは違うと思うのです。種は、気が遠くなるくらいの年月を、先祖が繋いできたもので、ある意味生き物。それを、新品種を開発したから、と。自家増殖を禁じるのは、どうなんだろう? そこまでの権利、あるのだろうか?

同じ品種でも、土地によって多少、味や形の違いが生まれます。そして代を経るごとに、違ってくることもある。そして、露地栽培なら、種なら、自然の交雑もおこるでしょう。

種を支配下に置く権利、どこまでを認めるべきなのか?

少なくとも、国内の農家の自家増殖を禁止することは、間違ってると私は思います。

その土地にあった種を、よりよい品種を、つないでいくのが農家だと思うのです。種は買うものではなく、つないでいくものだと思います。

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