遠野なぎこさんの自宅で、遺体が発見されたというニュース。痛ましいです。個人事務所だからなのかその後の発表もなく。NHKの朝ドラで一世を風靡した人の最後としては、あまりにもさびしい。
遠野さんは、母親から虐待を受けていたそうですが、それでも母親に愛を求め続けた。
ただそれは、無理だったと思う。どうあがいても愛をくれない相手から、愛を求め続けても自分が傷付くだけだから。お母さんは変わらなかったでしょう。
最後、お母さんは自死されたそうですが、もし遠野さんが献身的にお母さんの面倒をみていたとしても、結果は変わらなかったと思います。だから、遠野さんは絶縁していて正解だった。離れていれば、それだけ傷が少なくてすみますから。
遠野さんは兄弟とも絶縁していたそうですが、兄弟は結局、お母さんの子供なので、それも無理はないというか。お母さんの遺伝子を受け継ぎ、お母さんに育てられれば、それはもうお母さんのような兄弟になってもおかしくない。
遠野さんとわかり合えなかったとしても、当然だと思います。そのことによって遠野さんはとても孤独を感じたでしょうけど。
どんな親に当たるかというのは、運です。親に限らず、家庭環境含め、すべてが運。生まれてきたときにある程度決まっている。
何不自由なく愛されて育つ子もいれば、極貧の中、虐待されて育つ子もいる。理不尽だといえばそれまで。でもそれがこの世の理だと思う。
もし遠野さんに相談されたら。私はきっと、諦めと、妥協を提案していました。まず、諦めること。
もう仕方ないですから。幻を求めても、余計に傷付くだけ。もはや諦めるしかない。認めたくないけど、認めるしかない。自分の親が毒親であると。
それから、妥協、ですね。できる範囲で、自分を褒める。自分の人生に意義をもたせる。
遠野さん、妹や弟の面倒をみたそうです。自分だけが虐待されて、それでも、虐待されない妹や弟を虐めるのではなく、食事や生活のお世話をした。立派です。
たとえ誰が褒めなくても、素晴らしいことだったと思う。当の妹や弟は、遠野さんが除外された、母親の再婚相手の籍に入り、そのことで遠野さんは弟妹が裏切ったように感じたようですが。
仕方ないです。母親も、弟妹も。人の気持ちを変えることはできない。
遠野さんには、自分で自分をほめてあげてほしかった。よくやった。すごいと。弟妹は遠野さんに助けられて、普通の人生を歩めた。そのことだけでも素晴らしいじゃないですか。そう考えると、遠野さんも救われたんじゃないかな。
生まれた時から家庭環境を選ぶことはできず、親兄弟も選べない。だから、後は妥協するしかないです。いいところを見て、ちょっとでもいい方向を選ぶ。そして自分を褒める。
遠野さんは家族には恵まれなかったかもしれないけど、そのぶん幸運だったことは、芸能人としての成功でしょう。どんなにお金やコネを積んでも、売れない人は売れない世界。本人の努力や才能とは別に、運が大きく左右する芸能界。
遠野さんはNHKの朝ドラで、主役を務めました。それって、ものすごく稀なことであり、幸運だったと思います。家族に恵まれなかった分、そういうところで運がまわってきたのかも。
朝ドラの主役をやって、それっきり・・・ということもありませんでしたね。いくつかのドラマに出て、テレビのバラエティーでも毒舌を買われ、一定の知名度がある女優さん。芸能界を目指す人は多いけれど、こうやって実績を作り、代表作もあり、名前を挙げれば多くの人が、ああ、と思い出す女優さんになったのは、すごいことだと思う。
だから、諦めて、妥協してほしかったなあと思ったりします。絶対に手に入らないものを求めて求めて、傷だらけになってた気がする。
親との関係性が悪い人って、結構多いと思います。いちいち口に出さないだけで。そして、虐待は受けていなかったという遠野さんの弟妹だって、遠野さんに知らないところで、いろいろあったと思います。遠野さんにあれだけの虐待をしたお母さんが、弟妹だけには何一つひどいことをしない、なんてことはないでしょう。
遠野さんの前では、遠野さんだけを虐めたかもしれない。でも、遠野さんがお母さんから離れたら、ターゲットは弟妹に向かっていたのではないかなと思います。自死されたお母さんを発見したのは弟さんだったようですが、弟さんもまた遠野さんとは別の、虐待を受けていたのではないでしょうか。そして弟さんは、有名人である遠野さんが発信する、「母からの虐待」という言葉に、傷ついていたと思います。
今も、虐待に傷付き、毒親との関わりに悩む人は多いと思うので、考え方として、「諦め」と「妥協」を取り入れてほしいです。
あなたの人生には意味がある、と思います。自分が傷付いたから、誰かを傷付けまいとした、優しくした、そしてあなたの犠牲の上に、誰かの「普通の人生」が成り立ったなら、それは素晴らしいことだと思います。誰が知らなくても、それはすごいことなのです。
遠野さん。発見された遺体が本人なら、今は苦しみを忘れて、安らかに眠っているのでしょうか。生きていてほしかったけれど、今安らかな気持ちでいるなら、苦しみがなくなったことをよかったと思います。どうか、安らかに。