風に吹かれて葉ずれの音を聴く

 先日、ある資格試験を受けに、試験会場の某大学へ行ってきた。

 集合時間まで1時間近くあったので、少し歩いたところにある校舎の、外階段に腰をかけて参考書を広げた。

 その日は天気がよく、肌に心地よい温度のひんやりとした風が吹いていた。見上げると、辺りには大木が数本あり、緑の葉の向こうに太陽の光がきらきらと輝いていた。

 休日の大学には、クラブ活動のためにやってきたと思われる大学生がちらほらと見えて、その談笑の声がいいBGMになった。

 

 なんて平和で、素敵な光景だろう。

 私はしばらく、うっとりとしてその場の空気を楽しんだ。

 差し込む日の光は、強すぎず、弱すぎもせず。話し声、笑い声が遠くから聞こえる。歩いていくのは、大学構内を散歩する親子。

 風が吹くたびに木々の葉が揺れて、不思議な音を立てた。

 外階段に座っているのは自分しかいなかったので、思いきりリラックスできた。

 おまけに、遠くからは詠唱が聴こえてくる。教会で歌われるような、厳かな宗教音楽系の曲。思わぬプレゼントだ。合唱部の練習だろうか。

 それはめったにないほどの、素敵な空気だった。

 映像も音も、温度も匂いも。完璧で優しい空間だった。包まれているだけで、幸せな気持ちになる瞬間だった。

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