ドラマ「教場II」感想

ドラマ「教場II」を見ました。以下、感想を書いていますが、ネタバレ含んでおりますので未見の方はご注意ください。

去年、あまり期待せずに見たら思いの他魅力的だったこの作品。キムタクの新境地ではないでしょうか。こんな雰囲気の出せる人だったんだなあと、木村拓哉さんに対する見方が変わりました。続編の放送を楽しみにしていて、今年はテレビの前で今か今かと始まるのを待って視聴しました。

結果、前作と同じくらい引き込まれる作品でした。続編て、最初の作品が好評だとハードルが挙がって評価が厳しくなるものですけど、前作と同じくらい雰囲気がよかったです。

警察学校の中を垣間見れる機会は、なかなかないですし。もちろん、あれはドラマでフィクションですけど、すべてが嘘というわけではないですから(^^;

まずキムタク。木村拓哉さん。すごいなあ。教官の風間役がぴったりはまってました。これをもし他の人がやったら、魅力が半減すると思う。とにかく不気味というか、冷たいというか、何考えているんだかわからないところがいいです。前作で、実はいい人というのはわかってしまってましたが、それでも今作で漂い続ける不気味さ、ドキドキしました。

風間教官、実はとても優しい人ですね。だって、警察学校はあくまで学校で、そこを卒業して実際に勤務についてからの方が、つらいことも危険なことも多いわけです。学校という温い環境で耐えられないなら、早目に辞めたほうが本人のためでもあり、また社会のためでもあります。どんな人にも、適性やその人にあった職場があります。警察に合わないことが明らかなら、「辞めろ」をつきつけることは、実は優しさなのではないでしょうか。

「教場II」が始まった直後に、前作の出演者宮坂(工藤阿須賀さん)が、落ちこぼれる学生を励ますシーンがあるのですが、私はこれを見た瞬間に、「アチャー」と、思いましたね。宮坂は警察に合っていないと思ったけど、やっぱりなあ、という感想です。

宮坂は優しい。でもその優しさは、強さを伴っていないと思う。前作で、同期に拳銃で脅されてその事実を黙っていた弱さ、やはり性格は変わらないなあと。

警察学校の訓練が厳しかったり、連帯責任があったりすることなど、それはふるい落としに必要なことだと思った。一定の厳しさは必要。卒業後はもっとひどい理不尽に晒される。対峙するのは本物の犯罪者だから。正しく職務を遂行していても、怒鳴られることもあるし、犯人と格闘して怪我をすることも、命を失うこともある。

皆と一緒の訓練で、自分だけできないことがあれば練習するしかない。連帯責任で他の人たちに迷惑をかけるのが情けないなら、努力するしかない。恥ずかしさも、申し訳なさも、耐えるしかない。それができないなら、警察官になるのは無理だと思った。それは、誰かに励まされてどうというものではなく、自分で答えをみつけるしかない。最初の洗礼に、宮坂のよけいな優しさはむしろ、邪魔になるんじゃないかと。前作を見た時に宮坂を卒業させるべきじゃないと思ったけど、この、「教場II」の冒頭で、それを再確認したのでした。

宮坂の仕事は、警察官にふさわしい人材を、卒業させて現場に送りこむこと。落ちこぼれが出ないように励ますことではないはずです。それに、警察官は危険な仕事だから、適性のない人を温情で卒業させれば、その人が命を失う可能性もある。優しさって、ただ、「怒らない」ことではないと思います。励ましてやりたいのをぐっとこらえて、生徒たちが自分で立ち上がってくるのを見守る。それが、警察学校での宮坂の役割ではなかったかと。自分で立ち上がる心の強さも、警察官には必要なことだと思いました。

宮坂が、交通整理の途中で亡くなったのは衝撃でした。でも宮坂は、自分によく似た学生を気遣うあまり、その人に気をとられて注意が散漫になっていた面も否めないわけで、宮坂の性格を考えると警察官になったことが果たしてよかったのかどうか。簡単な挨拶だけにとどめて、後は切り替えて交通整理に集中することができていたら、命を失わなくてよかったのかもしれない、と思ってしまいます。

警察官だからといって、すべての車が指示に従うとは限らないです。突っ込んでくる車があれば、自分も、歩行者も、命を失います。その危機感を持って交差点に立たないといけませんが、宮坂が漆原透介(矢本悠馬さん)を思うあまり、注意が散漫になってしまったとしたら…。風間教官の「死ぬなよ」という言葉の意味。風間は宮坂の性格がはらむ危険性を、予感していたのかもしれません。

職務中に知人に愛想よく振る舞うこと。普通だったら問題にならないけど、でも警察官という仕事上、それが不適切であったり、亡くなることもあるのだと。それくらい、警察の仕事は命と結びついているのだと思いました。

だからこそ、警察学校の役割は重要なのでしょう。風間教官の厳しさは、そのまま優しさです。

風間教官、ふるい落としに関しては厳しいというよりむしろ甘いと感じてしまいました。私だったら、今回200期でエピソードがあった中で卒業させるのは二人だけ。比嘉太偉智(杉野遥亮さん)と吉村健太(戸塚純貴さん)です。私が教官やったら、警察官が極端に不足してしまうなあ(^^;

別に厳しい基準を設けたわけじゃなく、致命的な欠点のない人を残したら、たった二人になってしまったという・・・。比嘉の場合は、副教官に一方的に誘惑されたということで、本人に問題はないと思いますし。

以下、それぞれの生徒に関して、卒業させたら駄目だと思った点を挙げていきます。

鳥羽暢照(濱田岳さん)。図書館で稲辺を見ていないと嘘をついたこと。なぜそこで嘘をつく?っていう。必要な嘘はつけなきゃいけませんが、ここはそういう場面ではなく。日常で簡単に嘘を付く人は、警察官には向いていないんじゃないかと。それに、風間が目を失う事件で目撃者だったのに、たぶんこれちゃんと通報したり、捜査に協力していないんじゃないかなあ。この辺は、映像で細かく書かれていなかったのでわかりませんが。卒業のときの風間の言葉からしても、鳥羽は、なにかありますね。

事件に遭遇したのに、知っていることを全部話していない、保身のために黙っていることがあるのだとしたら、警察官になってはいけないと思います。

ちなみに定職につくために警察官になるというのには、私は全然アリだと思う。非難される話ではない。逆に、そこを悪いなんて言っていたら、それこそ警察官になる人材が不足してしまうのでは? 絶対警察官になる、それ以外の職業なんて考えられません、ていう人の数はそんなに多くないでしょう。

石上史穂(上白石萌歌さん)。なにかあるたびに手がぶるぶる震えてたけど、風間教官のショック療法でそれが完全に克服できたとは思わないから。それに、それまでの描写で、自分で何とかしよう、という努力がみえてこなかったんだよなあ。

あと、車の事故をわざとやったと同期に告白されて、「つらいことは忘れて」とか、その思考は警察官としてはどうかと思う。殺人未遂だよ? 友達だから? 別の職業ならともかく、警察官としてはまずいでしょう。

忍野めぐみ(福原遥さん)。不適格なのは体格と体力。努力でカバーできないレベルだと思う。この先鍛えたからといって、腕立て伏せが20回を超える日がくるんだろうか(^^;

人当たりはいいけど、いざというときに誰かを守れる最低限の力がないと、警察官としての仕事はできないと思う。

漆原透介(矢本悠馬さん)。時間を守れない点と、パニックになってしまう点。これは致命的ではないでしょうか。いくらなんでも、薬物中毒を疑うくらいの錯乱っぷりは、さすがにこの後いくら努力したところで、本人が直せるものではないと思いました。警察官という職務は冷静沈着が求められます。あのパニックを見せられた上で、警察官になりますと言われても心配の気持ちしか湧いてこないです。

杣利希斗(目黒蓮さん)。警察学校の備品盗んで爆発物作ろうとした時点で、卒業させてはいけません(^^; いくら本人が改心したといっても無理無理。

稲辺隆(眞栄田郷敦さん)。傷害事件なので、卒業もなにも、逮捕される案件ですね。

伊佐木陶子(岡崎紗絵さん)。警察官として働く気がない人を、卒業させてはいけないと思う。正義感とやる気がないと、警察官は務まらないと思うから。警察学校在学中に妊娠というのは、卒業できなくても仕方ない。

堂本真矢(高月彩良さん)。盗癖ある人は、警察官無理でしょう。

坂根千亜季(樋口日奈さん)。忍野が二人組に暴行受けそうになっているのに、ちゃっかり逃げた姿は警官失格だと思いました。明らかに不穏な空気で、残された忍野が酷い目にあうのが誰の目にも明らかなのに。自分の身を守るために逃げた。これはもう、警察官としてはありえない。

忍野の指を棒で折ろうとした暴行犯二人組も、警察官になってはいけない人材ですね~(^^; あの二人、ちゃっかり卒業したのかな? あんな人が警察官なんて、世も末です。

私、忍野が脅迫される場面、この先を風間教官がどう裁くのかなあと思って、ドキドキしたんですよね。二人にこんな風に脅されましたって、もし忍野が相談したら、「君は警察官だろう。自分の身は自分で守れ」と一蹴されたんだろうか。

確かに、忍野は自分で立ち向かう勇気をもたなければいけないし、それ以上に、奴らにやられない体力、技術を身につけなければ。いったん警察学校の外に出たら、犯罪者と対峙するわけで。その時に、犯罪者に腕をつかまれて、その腕すら振りほどけないなら、警察官として駄目だと思うのです。

今回、教場IIのドラマの中で、一番強烈なシーンは、副教官の田澤愛子(松本まりかさん)が、風間の命令で窓辺に立たされるところ。田澤は足を踏み外し、比嘉の腕一本で支えられるけれど、最後は落ちてしまう。

エアマットの空気を抜けとトランシーバーで言われた消防の方は、びっくりしてましたけど、リーダーらしき方がうなずいていたところを見ると、風間教官と打ち合わせ済と思われます。ただ、それにしても、一歩間違えたら田澤は転落死。それだけのリスクを冒してでも、風間は田澤と比嘉に何を教えたかったのか。

ドラマ後半で、田澤は以前の上司への恨みを、風間にぶつけていたことが明かされましたけど、それはないな~(^^;あれ、男性への歪んだ愛情にしか見えなかった。誘惑して、従えたい、コントロールしたい、という。それがかなわない、誘惑しても拒絶されるなら、相手を破壊してしまいたいという激情。成績トップとか、総代とか嘘をついたのも、自分をよく見せたい、みんなの関心をひきたいという自己愛。

きれいな人だから、最初はたいていの人が引っかかるだろうけど、それは本当の愛情じゃないし、長続きしない。その繰り返して、傷ついている女性にみえました。

風間教官は、田澤と比嘉の男女としての絆をすっぱり断ち切りました。比嘉は、手を放した。田澤は、どんなに嘆願しても、比嘉にも風間教官にも助けてもらえないことを知った。情のかけらも残らないほどすっぱり、二人を引き離すにはあそこまですることが必要だったのかもしれません。

田澤が警察学校の生徒である比嘉を誘惑したこと。それは、単なる誘惑ではなく、今後の比嘉の命に関わるような重罪であったともいえるのか。心が乱れ、きちんと学ぶことができなくなれば、中途半端な状態で警察官になるわけで。知識不足、訓練不足が直に、命の危機に直結する職業。それが警察官。

風間の凄みを感じました。単なるいい人ではない。教官として生徒を守るためなら、あらゆるリスクをとる。自分も含めて。

そして、なんのかんのいいつつ、結局総代として卒業していく杣の姿には、違和感満載です(^^; 親が警察の偉い人だと、すべて流されるのか~、そうなのか。杣は警察官になっちゃいけない人だと思うけど、風間教官でもそれがとめられない。それが組織だ、ということか。

今回のドラマ、直前で伊藤健太郎の事故があり、編集が大変だったようですが。物語の多少のチグハグさは、そのせいだろうなあと思いました。本当はもっと、繊細に、こまかいところまで計算尽くされた映像になっていたのでは? 199期の話が、なんだかオマケ的な、あまり重要でないものになっているように感じました。

伊藤健太郎には反省してほしいです。事故はともかく、逃げたのは絶対にやってはいけないこと。私はドラマの「アシガール」大好きだったけど、もう見る気が起きなくなってしまいました。もう、私の中では「アシガール」は幻の作品になってしまった。

教場は、今後シリーズ化されるのでしょうか? 見終ってからも、いろいろ考えさせられるドラマでした。

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