茶木宏美著 『おれは薔薇』を読みました。以下、ネタばれありの、感想を書いています。未読の方はご注意ください。
薔薇の香りがする人って、その設定がいいですね。それだけで興味をそそられる。ましてそれが、黒いアームカバーの似合う、美形の税務署職員・・・しかもその香りには秘密が! ときた日には、もう読まずにはいられませんでした。
読み終えた感想としては、思っていたよりも少し軽い話だったかなと。
税務署の半田さん(薔薇の香りの人)と、女子高生あけ乃が出会い、そして二人が次第に心を通わせていくわけですが、半田さんの心の扉が開くのが早い!と思いました(^^;
もっと冷酷というか、感情のすべてを凍りつかせている人を想像していたんですよね。
でも意外に人懐っこいような感じ。そもそも、手帳届けてくれたお礼で、あけ乃にお茶をごちそうしてあげるって、その時点でフレンドリーじゃーん、と。
半田さんがもし、あけ乃の言うところの「地獄で生きてる」のであれば、最大限の努力で、人と関わらずに生きているんじゃないでしょうかね。その目には、モノクロームの世界が広がっていて。
通り過ぎる人の誰もが、まるで無生物のように、おもちゃのように。半田さんの中では、他者は自分とは異質のもの、なんの興味もひかれないものとして映っているのではないかと。
いや、違うな。本当はそんなことなくて、誰かに救いをもとめてはいるんだろうけど・・・。でも、世界をそういうふうに思いこもうとしているのが、半田さんじゃないかなーと。
関わらなければ、誰も不幸にしないわけだから。
一番萌えたシーンは竜月先生の事務室で、半田さんとあけ乃ちゃんが二人きりになってしまうところです。あけ乃ちゃんのセリフがまっすぐで、そりゃ半田さんも心揺れるよなーと思いました。
泣く胸があるっていいなあ、としみじみ。言葉なんかより饒舌に、半田さんは愛を告白しちゃってる。
だって、恋愛感情がなかったら、あのシチュエーションで胸は貸さないもの。
半田さんはあけ乃ちゃんの悲しみに共鳴したんだね。
だけどそんな時間は短くて。竜月先生が戻ってきたときにはもう、二人は他人だったし。なんの余韻も残さないよう努力したんだろうな。
竜月先生は気付いてなかったみたいだけど、水絵さん(半田さんの奥さん)は敏感。さすが、全部わかっちゃったみたいで。具体的なものなんてなくても、そこに流れてる空気だけで、理解してしまった。
あけ乃のいる二階の窓を見上げる目が悲しい。怒ってるんじゃなく、嫉妬でもなく、悲しいんだな。
そのとき、水絵さんは半田さんに寄り添って歩いてるのに。見送る側であるはずのあけ乃ちゃんに、かなわないって思ったんだろう。
脅したところで、人の気持ちを手に入れるのは無理なんだよね、そもそも。
このときの水絵さんの、あけ乃ちゃんを見る複雑な表情が秀逸です。
この漫画、それにしてもタイトルがすごいです。『おれは薔薇』って。
どんな世界が広がっているのか、つい手を伸ばしたくなるインパクトがありますね。