ガラスの仮面、別冊花とゆめの3月号を読んでから、しばらく熱にうかされたように、いろいろな二次創作物パロディを読み漁っていました。
二次創作の数、すごいですねえ。
あらゆるところで、本編に刺激されたパラレルワールドが展開している。
中でも、私が特に気に入った一作がありまして。
不思議なんだけど、その作者さんの他の作品にはそれほど、心ひかれず。いや、正直に言えばたしかに、他の作者さんに比べれば、私好みの作品をたくさん書いていらっしゃるのですが。
それでもその、私の心をとらえた一作だけは、本当に傑出してました。
大好きです、この話。
著作権があるので、載せられないのが残念。
自分だったらこういうパロディ作品を書きたいなあと、ぼんやりしたイメージがあったところに、まさにそのまんまを描かれていたので驚愕しました。自分のイメージでは描ききれなかった細部まで、丁寧に。しかも予想外のサプライズも有り、盛りだくさんでつくられている。素敵な作品でした。
その作品の中で速水さんは、やはりマヤの前では臆病で。
でも追いつめられた状況の中でようやく、動きます。
そして、もう全力で、これ以上できないってところまで力をふりしぼって、マヤの行く末のために尽力するのです。
速水さんはやはり。
優柔不断とそしられるほどに慎重で、怖がりで、でもそれって無理はないなあと、あらためて思いました。
そりゃ私も、今まで速水さんの奥手っぷりにはこのブログで苦言を呈したりしてきましたけども。
じゃああなた。あなたがもし速水さんだったら、どうよ。
ちゃんとマヤちゃんに告白できますか?と問われたら、自信を持って「NO」と言えますね。
言えるはずもない。
絶対気持ちは封印します。
どんなに気持ちが昂ぶっても、全力を挙げてそれを阻止します。
なぜって、うまくいかなかったときに受ける打撃が、大きすぎるから。
まず、精神的な打撃ね。
これは、マヤちゃんが好きな気持ちが大きいほど、その本人から拒絶されたらもう、これは決定的に傷つく。ボロボロになると思う。
誰になにを言われようと速水さんは平気な人だと思うけど、マヤだけは特別。なんというか、心を開いてる感じがするのね。
それで、その開いた口からナイフを突っ込まれたら、そりゃもう、大怪我しますよね。内面は、とてもやわらかいと思う。だからマヤに対しては他の人以上に、虚勢をはらなければいけないし、防御する必要がある。
ナイフでなくても、それが爪でも。先のとがってない棒であっても。
たぶん、速水さんの心にはなにも、緩衝材なんてなく、まっさらな状態だと思うから。臆病になるのも仕方ない。
それと、社会的な打撃。
まあ、いちおうそれなりの企業の社長なので(^^;
女優に真剣に恋をしてあげく振られたとなると、体面が悪いかなと。
ああ、でもこれは、精神的なものと比べれば、軽い要素かもしれませんが。
ただ、速水さんも自分の立場にはそれなりの責任を負っていると思うので、その意味では。マヤに対して慎重になる、自分の立場を慮って、というのはあると思います。マヤのいる世界とまったく関係のない学生とか、会社員だったら持つ必要のない一線を、速水さんは社長ゆえに、もっているのでしょう。
それでもって、冷静に状況を分析してみたら、普通に考えたらマヤに嫌われてると考えても無理はないというか。それは妥当な判断ですよねーっていう。
マヤの母親の死。
私は速水さんにそれほど責任があることとは思っていませんが、それでもまったく責任がないかといえばそんなことはないわけで。
マヤが母親の死を悲しむあまり、誰かを憎むことで楽になろうと望むなら、その相手は速水さんしかいない。
そして実際マヤは速水さんをなじり、怒り、罵ってきた。これは現実にあったことです。
そんな相手に、誰が正気で愛の告白などできるでしょうか。
しかも、マヤが速水さんに惚れる要素って、あんまり見当たらない・・・。
容姿端麗っていうのは、人それぞれの好みですしね。
たしかに速水さんはかっこいい設定。
でももし速水さんが、マヤが一目ぼれしてしまうほど好みにピッタリだったら、出会ってすぐに惹かれていたでしょうが。最初の頃はマヤが興味を示すような様子などなかったし。
いくらかっこいい、と世間的に言われる容姿であっても、マヤの好みじゃなかったら、意味ありませんしね。
そして社長であるという立場とか、経済力。
マヤには、まーったく興味のない分野でしょうね。よってパス。
頭脳明晰。
これは・・・マヤは尊敬はするでしょうけど、だからって恋愛には結びつかなそう。
結論。
マヤは、速水さんには惚れないでしょう、第三者的立場から、冷静に観察すれば。
ただ唯一、これは好きになってしまう要素かも、というのがあります。
それは、速水さんが紫のバラの人だった、という事実です。
マヤが、「速水さん=紫のバラの人=大好きな人」として告白をしたら。
あーこれは。
この要素だけは、速水さんも納得する部分かもしれませんが。
「あの子がオレを好きかもしれない」っていう確信を持つための、唯一、本物っぽい理由かもしれませんが。でもこの要素は、あまりにも脆い。
憧れ、ですもん。
憧れなんて、あまりにも脆くて、それに頼るのは危険すぎる。
十代の女子、それもあまり恵まれず、様々な困難の中、天涯孤独のようにして生きてきたその、心の支えだった存在。
そりゃあね、あしながおじさんを好きになるのも無理はない。
淡い恋愛感情のようなものが、生まれるでしょう。
でも果たしてそれって、長く続くのか?と問われれば、私は続かないと思う。
憧れは、夢みたいなもの。いつか、覚める。
いつか身近に、マヤと同年代の、マヤにお似合いの男性が現れたら。
遠くから間接的にマヤを支える紫のバラの人としての存在でなく、実際にマヤの横に立ち、その手をとり、同じ時間を共有するリアルな人間が現れたら、その人の方がずっと強い。
もしも自分が紫のバラの人として愛されたなら、その愛ははかないもの。いつか、砂でつくったお城のように、時が来ればさらさらと崩れ落ちてしまう。
そのことを、考えない速水さんではないと、私は思うのです。
私がもし速水さんだったら。
もしマヤが紫のバラの人の正体を知り、目の前で告白してくれても、それを心底は喜べないかもしれない。紫のバラの人を通しての愛情だと、そう思うから。
速水真澄個人への愛情ではないと、それを冷静に分析しちゃうからなあ。
なんか、どっちにしろ救いのない話ですね。
マヤに好きだと言われなければ、一生片思いで。
たとえ好きだと言われても、「それって紫のバラの人が好きなだけだし・・・いつか君も、現実の、君にふさわしい人を好きになってしまう・・・」って思うわけで。
どっちにしろ幸せな気分にはなれないっていう(^^;
あ。ちなみに3月号では、マヤははっきりとした告白はしていませんよね。
あれってあくまでも演技だと、速水さんは解釈してると思います。
紅天女を演じて、その姿に速水さんは魅了されて、自分の想いを抑えられなくなってしまったけれど。
あれは、マヤに告白されたとは思っていないと思います。
「少なくとも、前のように毛嫌いされてはいないようだ」という思いはあるようですが。だからこそ勇気をふりしぼって、別荘へ誘ったわけです。
>「今度遊びにくるか?」
渾身の力を振り絞って口にした一言。
この後の、「うわー、オレついに言っちゃった・・・」の照れ顔がツボでした(^^)
それと、3月号の時点では。
マヤに紫のバラの人の正体がばれていると、速水さんは気付いていません。
そして、以前からマヤが紫のバラの人に憧れを抱いているのは知っているので、たぶんあの、背広を抱きしめた演技も、心のどこかでは「紫のバラの人を思って抱きしめた?」と思っているんではないでしょうか。
もし紫のバラの人が速水さんでなかったら、嫉妬の炎がメラメラ燃え上がってたと思いますが、紫のバラの人=自分、なので、速水さん、軽い陶酔感があったんじゃないかと。
あの子が心をこめて演じているその先に居る幻影は、たとえ幻影であっても紫のバラの人=自分、なのだと。
船上で、速水さんは「阿古夜を演ってくれないか?」としか言っていない。マヤが一真を誰に重ねて演じているのかは、速水さんの立場からしたら、謎ですからね。(読者には丸わかりですが)
恋愛って、不思議なものだと思います。
条件じゃないから。
好きになる要素がなくても、なぜか心が動いてしまう、惹かれてしまう、自由意志を越えた部分で。
マヤは速水さんを好きになり、速水さんはマヤを好きになった。
だからこそお互いの思いを信じられない。
あの子が、(あの人が)、オレ(私を)好きになるはずなどないと。
その人のなにが、そこまで自分の心を震わせるのか。
どうして他の人では、駄目なのか。
なぜ好きになったの?と問われても、明確な答えなんて出ないでしょう。
速水さんもマヤも、同じ言葉しか言えないと思います。
「なぜかはわからない。でも、マヤ(速水さん)でなくては駄目なのです」と。
よーく考えると。
速水さんに、もっと勇気を出してドーンと告白しろ、マヤをリードしろって言うの、酷な気がしてきました。
自分だったら、とても言えない。失うものが多すぎる。
マヤに拒絶されたら、どうしたらいいかわからない。
いろんなものが音をたてて崩れ落ちて、そのことに耐えられる自信がない。
むしろ、マヤこそ、積極的になるべきなのかも。
身軽ですもん。
なんにも背負ってないというのは、言い過ぎかな。
たとえば。速水さんが本当はすっごく傲慢な人で。マヤのことなんてちっとも思ってない、それこそ、ただのチビちゃん、商品としての女優を慈しんでいる人だとしたら。
マヤの一世一代の告白を、かるーく笑い飛ばす可能性もあるわけですよ。
「なんだチビちゃん、どういう風のふきまわしだ。
オレに婚約者がいるのを知っての戯れか。これは大スキャンダルだな。
まあいい。生憎きみの気持ちには答えられないが、きみがオレを憎んでいないと知ってうれしいよ」
たとえばですね。上記のようなことを言われて、マヤがこっぴどくフラれたとしても。間違っても速水さんは、このことを周囲に口外はしないと思うんですよね。そこはやはり、芸能事務所の社長。女優のイメージを損なうかもしれないような暴露話は、慎むでしょう。
そしてマヤも。失恋の傷はすぐに癒えると思うし、きっといつかまた、別の人を好きになれると思うのです。
対して。もしマヤが速水さんにこれっぽっちも気持ちがない状況で愛を告げられたら。 告白されても迷惑で。それどころか、もし憎んでいる相手にそれを言われたら、周りにそれを言ってしまうかもしれない。
若い女性の立場としたらね。あまり深く考えずに、気楽な気持ちで友達に話してしまう危険性があるわけで。
「ごめんなさい。今までよくしていただいたことには感謝してますが、私には全くそんな気持ちはありません。私が阿古夜を演じたから、ですか? あれは全部、演技です。あなたが見たいといったから、お稽古を再現しただけなのに」
「速水さん、私に告白してきたんだよ、びっくりしちゃった・・・」
うわー。これは、速水さんうっかり動けないですね。
マヤちゃんにこんなこと言われたあげく、周囲に噂が広まってしまったら。
まずい、まずすぎます。個人的にも、社会的にも、厳しい。
よっぽど、愛されているという自信がなければ。
速水さんから告白、というのは無理ですね。伊豆の別荘で、マヤの魅力に負けて、理性が崩壊しちゃったら別ですけど。そうしたら、勢いでなんとかなるかもしれないけど。
速水さんが動けないでいることを責めるのは、酷な気がするこの頃です。