春の嵐その翌日

 春の嵐が通り過ぎた後の田んぼには、たっぷりと水が湛えられている。雲はもうない。青空が見えていたが、風はまだ強い。

 川沿いの道を歩いた。
 見渡す限り、田んぼには水が満ちていて、なんだか嬉しくなる。川も、いつもより水位が高い。

 小さな湖のようになった田んぼの水面を、風が吹きぬけると、まるで黒い雲が走ったかのようなさざ波。
 それは、一瞬のうちに、水面を走り抜ける。
 水は波となり、そしてまた、水へと還っていく。

 散歩しながら思った。
 人の一生も、そうなんだろうなあと。水から波が生まれ、また水に戻るのと同じこと。
 体は原子の集合体で、いつかはまた、原子に還る。その繰り返し。

 

 人と他の生き物との違いは、その体に宿る意識だろう。意識はどこから生まれ、どこへ還っていくのだろうか。
 動物にも心はあるけれど、それは人間とは違うものだという気がする。
 人間だけが意識に気付き、その源を追い求めている。

 私は誰? 
 この気持ちは、どこからやってくるのだろう?

 たぶん動物は、そんな疑問をもつことはないだろうなあ。

 たっぷり水を湛えた田んぼで、のんびりと一羽の鴨が体を休めていた。気持ちよさそうにぷかぷかと浮きながら、羽をつくろっている。
 昨日の嵐は怖かっただろう。気温も低かった。鴨は闇夜の中で、じっと体を小さくして、やり過ごしただろう。一夜明け、明るい日差しの中でたっぷりと餌をついばみ、風に吹かれて過ごす心地よさ。

 恐怖、寒さ、満腹の快。
 鴨にはそうしたものを感じる心はあるけれど。生きていること、その存在に対する疑問など、決して抱いたりしないだろう。
 鴨には今この瞬間しかない。

 たぶん人間だけが、自分の存在する世界に疑問を抱く。この世界はいったい、何なのだろうと。

 『The SECRET of QUANTUM LIVING』DR.FRANK J. KINSLOW 著 を最近読み始めた。だから余計に、今日のような風景を見て心がざわめくと、世界について考えてしまう。

 著者は QUANTUM ENTRAINMENT 提唱者として有名だが、複数ある著書のうちまずどれを読むべきか、迷った末に選んだ決め手は装丁だ。

 青のグラデーション。波の動きを模した白。曖昧な境界線がとてもきれいだったので、その表紙に惹かれて購入。

 しかし66ページ目でいきなり驚愕の言葉にぶつかる。

>I’ll explain it all in my next book….

(それらは全部、私の次の著書で説明します)

 瞬間、やられたーと思う。こりゃ信用できないわ、と思ったらすぐ次の言葉は、

>Just kidding.

(冗談です)

 この人は…(^^;

 まだ読み始めたばかりだが、なかなか面白い本である。

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