ダンス・オブ・ヴァンパイア観劇記 その12

 7月19日、ソワレ。帝国劇場で『ダンス・オブ・ヴァンパイア』を観劇してきました。以下、ネタバレも含んでおりますので、舞台を未見の方はご注意ください。

 再演がないことも、CD発売の予定がないことも、伯爵のかっこいいポスターがないことも、すべて許せる気持ちになってきました。この作品は、今、この瞬間を楽しむためのものだなあと思うからです。再演がないということは、出演者の心境にそれなりの影響を及ぼしているでしょう。8月が終われば、2度とこの歌を歌うことも、踊ることもないのです。そう思えば、1回の公演それぞれが、すごく貴重で愛おしいものになるはず。CD発売・・・発売されても私は買わないですね。そのお金で、1回でも多く通う。劇場で体感するものと、CDで聞くのとでは、全然違います。

 伯爵のポスター。あの、入口の柱に貼ってある巨大ポスター、発売されれば欲しいなと思ってましたが、やっぱりいらない。その分、1回でも生の歌を聴いて、その空気を胸に吸い込みたい。最後に出てくる「俺様大勝利!!」顔のグッズも、前は欲しいと思ったけど、今はいらない。いいんです。舞台の映像を、心の中に焼き付けるから。絶対忘れないと思う。

 舞踏会の夜、吸血鬼達を見下ろしながら「それで満足か?」と煽る伯爵が素敵でした。微妙にリズムをとって、体を揺らしているんですよね。それが決して大きな動きではなくて、だからこそ目が離せない。なんだか妙に気になる。

 そして、「抑えがたい欲望」は圧巻でした。私はこの歌詞のセンス、最高だと思います。「この私がわからない自分でさえ」というところで、いつも胸がいっぱいになるのです。

 自分を知るって、本当に難しいことだと思うから。幸せも不幸せも、自分を知ることから始まるのではないかと思います。

 伯爵がこの言葉を叫ぶその背景に、どれだけの苦悩の時間が流れたんだろうと思うと気が遠くなる。

 幸せが輝けばそれだけ、失ったときの影は深くなる。その落差の前に、呆然と座り込んでいる伯爵が痛々しかったです。

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