ドラマ「教場II」感想

ドラマ「教場II」を見ました。以下、感想を書いていますが、ネタバレ含んでおりますので未見の方はご注意ください。

去年、あまり期待せずに見たら思いの他魅力的だったこの作品。キムタクの新境地ではないでしょうか。こんな雰囲気の出せる人だったんだなあと、木村拓哉さんに対する見方が変わりました。続編の放送を楽しみにしていて、今年はテレビの前で今か今かと始まるのを待って視聴しました。

結果、前作と同じくらい引き込まれる作品でした。続編て、最初の作品が好評だとハードルが挙がって評価が厳しくなるものですけど、前作と同じくらい雰囲気がよかったです。

警察学校の中を垣間見れる機会は、なかなかないですし。もちろん、あれはドラマでフィクションですけど、すべてが嘘というわけではないですから(^^;

まずキムタク。木村拓哉さん。すごいなあ。教官の風間役がぴったりはまってました。これをもし他の人がやったら、魅力が半減すると思う。とにかく不気味というか、冷たいというか、何考えているんだかわからないところがいいです。前作で、実はいい人というのはわかってしまってましたが、それでも今作で漂い続ける不気味さ、ドキドキしました。

風間教官、実はとても優しい人ですね。だって、警察学校はあくまで学校で、そこを卒業して実際に勤務についてからの方が、つらいことも危険なことも多いわけです。学校という温い環境で耐えられないなら、早目に辞めたほうが本人のためでもあり、また社会のためでもあります。どんな人にも、適性やその人にあった職場があります。警察に合わないことが明らかなら、「辞めろ」をつきつけることは、実は優しさなのではないでしょうか。

「教場II」が始まった直後に、前作の出演者宮坂(工藤阿須賀さん)が、落ちこぼれる学生を励ますシーンがあるのですが、私はこれを見た瞬間に、「アチャー」と、思いましたね。宮坂は警察に合っていないと思ったけど、やっぱりなあ、という感想です。

宮坂は優しい。でもその優しさは、強さを伴っていないと思う。前作で、同期に拳銃で脅されてその事実を黙っていた弱さ、やはり性格は変わらないなあと。

警察学校の訓練が厳しかったり、連帯責任があったりすることなど、それはふるい落としに必要なことだと思った。一定の厳しさは必要。卒業後はもっとひどい理不尽に晒される。対峙するのは本物の犯罪者だから。正しく職務を遂行していても、怒鳴られることもあるし、犯人と格闘して怪我をすることも、命を失うこともある。

皆と一緒の訓練で、自分だけできないことがあれば練習するしかない。連帯責任で他の人たちに迷惑をかけるのが情けないなら、努力するしかない。恥ずかしさも、申し訳なさも、耐えるしかない。それができないなら、警察官になるのは無理だと思った。それは、誰かに励まされてどうというものではなく、自分で答えをみつけるしかない。最初の洗礼に、宮坂のよけいな優しさはむしろ、邪魔になるんじゃないかと。前作を見た時に宮坂を卒業させるべきじゃないと思ったけど、この、「教場II」の冒頭で、それを再確認したのでした。

宮坂の仕事は、警察官にふさわしい人材を、卒業させて現場に送りこむこと。落ちこぼれが出ないように励ますことではないはずです。それに、警察官は危険な仕事だから、適性のない人を温情で卒業させれば、その人が命を失う可能性もある。優しさって、ただ、「怒らない」ことではないと思います。励ましてやりたいのをぐっとこらえて、生徒たちが自分で立ち上がってくるのを見守る。それが、警察学校での宮坂の役割ではなかったかと。自分で立ち上がる心の強さも、警察官には必要なことだと思いました。

宮坂が、交通整理の途中で亡くなったのは衝撃でした。でも宮坂は、自分によく似た学生を気遣うあまり、その人に気をとられて注意が散漫になっていた面も否めないわけで、宮坂の性格を考えると警察官になったことが果たしてよかったのかどうか。簡単な挨拶だけにとどめて、後は切り替えて交通整理に集中することができていたら、命を失わなくてよかったのかもしれない、と思ってしまいます。

警察官だからといって、すべての車が指示に従うとは限らないです。突っ込んでくる車があれば、自分も、歩行者も、命を失います。その危機感を持って交差点に立たないといけませんが、宮坂が漆原透介(矢本悠馬さん)を思うあまり、注意が散漫になってしまったとしたら…。風間教官の「死ぬなよ」という言葉の意味。風間は宮坂の性格がはらむ危険性を、予感していたのかもしれません。

職務中に知人に愛想よく振る舞うこと。普通だったら問題にならないけど、でも警察官という仕事上、それが不適切であったり、亡くなることもあるのだと。それくらい、警察の仕事は命と結びついているのだと思いました。

だからこそ、警察学校の役割は重要なのでしょう。風間教官の厳しさは、そのまま優しさです。

風間教官、ふるい落としに関しては厳しいというよりむしろ甘いと感じてしまいました。私だったら、今回200期でエピソードがあった中で卒業させるのは二人だけ。比嘉太偉智(杉野遥亮さん)と吉村健太(戸塚純貴さん)です。私が教官やったら、警察官が極端に不足してしまうなあ(^^;

別に厳しい基準を設けたわけじゃなく、致命的な欠点のない人を残したら、たった二人になってしまったという・・・。比嘉の場合は、副教官に一方的に誘惑されたということで、本人に問題はないと思いますし。

以下、それぞれの生徒に関して、卒業させたら駄目だと思った点を挙げていきます。

鳥羽暢照(濱田岳さん)。図書館で稲辺を見ていないと嘘をついたこと。なぜそこで嘘をつく?っていう。必要な嘘はつけなきゃいけませんが、ここはそういう場面ではなく。日常で簡単に嘘を付く人は、警察官には向いていないんじゃないかと。それに、風間が目を失う事件で目撃者だったのに、たぶんこれちゃんと通報したり、捜査に協力していないんじゃないかなあ。この辺は、映像で細かく書かれていなかったのでわかりませんが。卒業のときの風間の言葉からしても、鳥羽は、なにかありますね。

事件に遭遇したのに、知っていることを全部話していない、保身のために黙っていることがあるのだとしたら、警察官になってはいけないと思います。

ちなみに定職につくために警察官になるというのには、私は全然アリだと思う。非難される話ではない。逆に、そこを悪いなんて言っていたら、それこそ警察官になる人材が不足してしまうのでは? 絶対警察官になる、それ以外の職業なんて考えられません、ていう人の数はそんなに多くないでしょう。

石上史穂(上白石萌歌さん)。なにかあるたびに手がぶるぶる震えてたけど、風間教官のショック療法でそれが完全に克服できたとは思わないから。それに、それまでの描写で、自分で何とかしよう、という努力がみえてこなかったんだよなあ。

あと、車の事故をわざとやったと同期に告白されて、「つらいことは忘れて」とか、その思考は警察官としてはどうかと思う。殺人未遂だよ? 友達だから? 別の職業ならともかく、警察官としてはまずいでしょう。

忍野めぐみ(福原遥さん)。不適格なのは体格と体力。努力でカバーできないレベルだと思う。この先鍛えたからといって、腕立て伏せが20回を超える日がくるんだろうか(^^;

人当たりはいいけど、いざというときに誰かを守れる最低限の力がないと、警察官としての仕事はできないと思う。

漆原透介(矢本悠馬さん)。時間を守れない点と、パニックになってしまう点。これは致命的ではないでしょうか。いくらなんでも、薬物中毒を疑うくらいの錯乱っぷりは、さすがにこの後いくら努力したところで、本人が直せるものではないと思いました。警察官という職務は冷静沈着が求められます。あのパニックを見せられた上で、警察官になりますと言われても心配の気持ちしか湧いてこないです。

杣利希斗(目黒蓮さん)。警察学校の備品盗んで爆発物作ろうとした時点で、卒業させてはいけません(^^; いくら本人が改心したといっても無理無理。

稲辺隆(眞栄田郷敦さん)。傷害事件なので、卒業もなにも、逮捕される案件ですね。

伊佐木陶子(岡崎紗絵さん)。警察官として働く気がない人を、卒業させてはいけないと思う。正義感とやる気がないと、警察官は務まらないと思うから。警察学校在学中に妊娠というのは、卒業できなくても仕方ない。

堂本真矢(高月彩良さん)。盗癖ある人は、警察官無理でしょう。

坂根千亜季(樋口日奈さん)。忍野が二人組に暴行受けそうになっているのに、ちゃっかり逃げた姿は警官失格だと思いました。明らかに不穏な空気で、残された忍野が酷い目にあうのが誰の目にも明らかなのに。自分の身を守るために逃げた。これはもう、警察官としてはありえない。

忍野の指を棒で折ろうとした暴行犯二人組も、警察官になってはいけない人材ですね~(^^; あの二人、ちゃっかり卒業したのかな? あんな人が警察官なんて、世も末です。

私、忍野が脅迫される場面、この先を風間教官がどう裁くのかなあと思って、ドキドキしたんですよね。二人にこんな風に脅されましたって、もし忍野が相談したら、「君は警察官だろう。自分の身は自分で守れ」と一蹴されたんだろうか。

確かに、忍野は自分で立ち向かう勇気をもたなければいけないし、それ以上に、奴らにやられない体力、技術を身につけなければ。いったん警察学校の外に出たら、犯罪者と対峙するわけで。その時に、犯罪者に腕をつかまれて、その腕すら振りほどけないなら、警察官として駄目だと思うのです。

今回、教場IIのドラマの中で、一番強烈なシーンは、副教官の田澤愛子(松本まりかさん)が、風間の命令で窓辺に立たされるところ。田澤は足を踏み外し、比嘉の腕一本で支えられるけれど、最後は落ちてしまう。

エアマットの空気を抜けとトランシーバーで言われた消防の方は、びっくりしてましたけど、リーダーらしき方がうなずいていたところを見ると、風間教官と打ち合わせ済と思われます。ただ、それにしても、一歩間違えたら田澤は転落死。それだけのリスクを冒してでも、風間は田澤と比嘉に何を教えたかったのか。

ドラマ後半で、田澤は以前の上司への恨みを、風間にぶつけていたことが明かされましたけど、それはないな~(^^;あれ、男性への歪んだ愛情にしか見えなかった。誘惑して、従えたい、コントロールしたい、という。それがかなわない、誘惑しても拒絶されるなら、相手を破壊してしまいたいという激情。成績トップとか、総代とか嘘をついたのも、自分をよく見せたい、みんなの関心をひきたいという自己愛。

きれいな人だから、最初はたいていの人が引っかかるだろうけど、それは本当の愛情じゃないし、長続きしない。その繰り返して、傷ついている女性にみえました。

風間教官は、田澤と比嘉の男女としての絆をすっぱり断ち切りました。比嘉は、手を放した。田澤は、どんなに嘆願しても、比嘉にも風間教官にも助けてもらえないことを知った。情のかけらも残らないほどすっぱり、二人を引き離すにはあそこまですることが必要だったのかもしれません。

田澤が警察学校の生徒である比嘉を誘惑したこと。それは、単なる誘惑ではなく、今後の比嘉の命に関わるような重罪であったともいえるのか。心が乱れ、きちんと学ぶことができなくなれば、中途半端な状態で警察官になるわけで。知識不足、訓練不足が直に、命の危機に直結する職業。それが警察官。

風間の凄みを感じました。単なるいい人ではない。教官として生徒を守るためなら、あらゆるリスクをとる。自分も含めて。

そして、なんのかんのいいつつ、結局総代として卒業していく杣の姿には、違和感満載です(^^; 親が警察の偉い人だと、すべて流されるのか~、そうなのか。杣は警察官になっちゃいけない人だと思うけど、風間教官でもそれがとめられない。それが組織だ、ということか。

今回のドラマ、直前で伊藤健太郎の事故があり、編集が大変だったようですが。物語の多少のチグハグさは、そのせいだろうなあと思いました。本当はもっと、繊細に、こまかいところまで計算尽くされた映像になっていたのでは? 199期の話が、なんだかオマケ的な、あまり重要でないものになっているように感じました。

伊藤健太郎には反省してほしいです。事故はともかく、逃げたのは絶対にやってはいけないこと。私はドラマの「アシガール」大好きだったけど、もう見る気が起きなくなってしまいました。もう、私の中では「アシガール」は幻の作品になってしまった。

教場は、今後シリーズ化されるのでしょうか? 見終ってからも、いろいろ考えさせられるドラマでした。

ドラマ「教場」感想

ドラマ「教場」を見ました。以下、感想を書いていますが、ネタバレを含んでおりますので未見の方はご注意ください。

キムタクが警察学校の教官役ということで、どんな感じなのかな~と興味津々で後編を見ました。前編の日は用事があってリアルタイムで見られなかったので、まあ後編だけ見ればいいか、と。

興味があるといっても、しょせんその程度だったのです。でも、いい意味で裏切られました。初めて、キムタクをかっこいい人だと認識しました。そして前編も、Tverでさっそく鑑賞。

いや、この方、ジャニーズでキャーキャー言われてた若い時代より、この警察学校教官の風間役の方が、よほど魅力的だなあと思いました。そりゃ枝元佑奈ちゃん(富田望生さん)も惚れるわっていう(^^;

菱沼(川口春奈さん)が、ビデオに映った枝元の瞳をどんどん拡大していったときには、その謎な行動に???でしたが、そこに映った風間の姿にすべてを察するっていう勘の鋭さには恐れ入りました。菱沼すごい。これ、菱沼と結婚した人、絶対浮気できない。絶対見破られるから・・・。

だけど、私としては、風間が菱沼を退校させなかったことには不満を感じました。だってどう考えても、菱沼は警察官向きじゃないよ。だってあれ、卒業したら配属先でめっちゃ同僚やら上司を誘惑するでしょ。根本的なところは変わってないし。警察学校で隙あらば教官と関係持とうとするって、相当な根性だと思いますが(^^;

風間は誘惑に乗りませんでしたが、優秀な警官でも女性に弱い人はいると思うし、菱沼を警察官にしてしまうと、数人の、へたしたら数十人の警官の運命が狂ってしまうような気がする。それがわからない風間ではないだろうに、なぜ菱沼を卒業させたのかな~。やはりそこが、男性である風間の甘いところなのでしょうか。私なら菱沼には退校を勧めます。他の職業なら菱沼の性格をいかせるかもしれないけど、警察官には不向き。というか、周囲が迷惑する。

あと納得いかなかったのが、宮坂(工藤阿須加さん)を卒業させてしまったところ。あれはないな~。宮坂は警察官としての勇気、正義感と言う点で、資質に欠けている。南原(井之脇海さん)に拳銃で脅されて口をつぐんでしまったけど、あれ、現場では難を逃れるために口裏合わせても、解放された時点で速攻、教官に報告しないと、他の生徒にも危険が及ぶではないか。そればかりではない、南原の危険な本性を黙っていれば、南原が正式な警官として野に放たれることを許してしまうわけで、宮坂の責任は大きいと思う。

風間が頼りない教官で、下手に報告したらよけいに危険、というのなら気持ちはわからなくもないけど。風間が切れ者だと、わかっている宮坂なのに保身のために黙っているというのはねえ。一般の人ならいいけど、警察官としては、ありえない態度。警官には向いてない。なのになぜ、風間は宮坂を警察官として認めたのか、そこがよくわからない。冷酷だという設定みたいだけど、むしろ甘い教官じゃないかと、私は思うのです。

この銃マニアの南原。もし、このまま警察官になっていたら、けっこう陰惨な事件を起こしていたのではないかと。それを許した、保身のために黙りこんだ宮坂。気は優しくていい奴なのかもしれませんが、「警察官」ではないと、そう思うのです。

楠本しのぶ(大島優子さん)と岸川沙織(葵わかなさん)の争いについては、もはや殺人未遂ということで。岸川がただの退学で済んでいるのは何故なんだろうという疑問が残ります。この人、一応反省しているようだけれど、またなにかあったときには再犯するんだろうなあ。信じていた人が脅迫犯だったからといって、その人を殺そうとする神経は、一線を越えてます。

そして楠本も。思いこみで脅迫状というのが陰湿で、嫌な感じです。この人も警察官になって大丈夫なんだろうか。私には、恐ろしく思えるのですが。それと、楠本の背の低さが気になってしまって、どうにも。女性警察官も、ある程度の体格は必要だよなあと、そんなことを思いました。細いならせめて菱沼のように背が高かったり、低いなら枝元のように体格がよければいいのですが。ただ細くて小さいと、あまりにも頼りなく思えてしまう。いざ現場に出れば、凶悪犯とも対決しなくてはいけない警察官には、みかけの体格のよさも必要だと思いました。

平田和道(林遣都さん)が退校になったのは、納得。殺人未遂ですもんね。そもそも、クラスいちの落ちこぼれというのは、かわいそうだけど向いてないのも確かなのです。だって、卒業すればずっと仕事としてペーパーワークがついてまわるわけで、それが苦手というのは本人もつらいと思う。ペーパーワークがあまり必要でない仕事も世の中にはあるので、そういうところの方が向いている。ただ、身勝手に無理心中を図るような人だからなあ、そういう人を受け入れる場所ってあるんだろうか。誰だって、そんな人の隣でなんて働きたくないよなあ。どんな職種であれ、無理。

樫村卓実(西畑大吾)も、警察官には決定的に向いてない、そんな性格ですね。賄賂になんの罪悪感も持ってなさそうで。そういう人が権力を握ってはいけません。

結局、一番向いているのかなと思ったのは、都築耀太(味方良介さん)ですね。自分が嫌な思いをした分、決していい加減な警察官にはならないと思う。思いこみではなく、きちんと判断をして、情けをもって事にあたる、そんな警察官になってくれるのではないかと。成績も優秀ということで、頼もしいです。負けん気が強い、というところもいい。

日下部准(三浦翔平さん)も、向いていると思いました。やっぱり警察官は強くないといけません。ボクサーとしては一番になれなかったけれど、その体力と技術は、犯人と対峙したときには何よりの武器になる。もし犯人が逃げても、やすやすと追いついて捕まえてくれそうで頼りになります。成績は悪くても、平田のように極端に駄目というわけでないなら、許容範囲。元ボクサーの強さというものは、体力勝負の警察官の仕事上、きっと役に立つでしょう。奥さんと子供を大切にしている、という点もいいですね。強いだけで無軌道だと不安だけど、守るべきものがある、というところが、警察官に向いていると思いました。

このドラマ、風間の義眼と過去が気になります。連ドラとしてまた放送されるのかな? そのときには、風間の過去の話をするんだろうか。今回、ドラマの最後で警察学校の新入生が映っていましたが、みんな初々しい。彼らが今度は主役となって、シリーズ化されるのだろうか。

ドラマ「アシガールSP」感想

ドラマ「アシガールSP」の感想を書いていますが、ネタバレ含んでおりますので、未見の方はご注意ください。

いやー、一言でいって、「よかった」です(^^) 続編とかスペシャルと銘打つものが、本編と同じクオリティを持つことは稀だと思うんですが、よくぞ90分であれだけの世界を描いたなあと。

本編のダイジェスト版を見た後だけに、90分がどれほど短いものか、よーくわかってます。だからこそ、スペシャルが本当に丁寧に、視聴者の期待に応えるべく、考えられて作られたことがわかります。

ドタバタラブコメではあるんだけど、深いのです。途中、真剣に考えちゃったもんね。若君様の選択肢に何があるんだろう。どうすることが幸せなんだろうかと。

一度和議を結んだのに高山の裏切り、みたいに唯は思っちゃってるみたいですが、織田信長が登場した時点で、もう高山には選択の余地なんてない。従うか、抗うかのみ。そこに高山の意志など存在しないでしょう。

それと、羽木家も腹をくくらねばならない時が、来たんですよね。皆が一時的に城を逃れて、近隣に逃げたところで信長が見逃すわけないじゃ~ん、ていう。全国統一目指してるんだから、そこはきっちりと、つぶしていくと思う。じゃあどうすればいいのか。圧倒的な兵力の違い。戦えば滅亡。ならば、降伏して信長に仕えるか、戦って死ぬかの二択になってしまう。逃げても、結局は殿と若君の首だけは取られることになるだろうし。

とりあえず、小垣城へ向かう若君。時間稼ぎにしかならないことを知っていても、まあ、それくらいしかできることはないよね。唯に知らせなかったのは当然。着いていくと駄々こねられても困る。しかしまさか夜着で追いかけていくとは、唯は、本当に目の前の自分たちのことしか考えていないのだなあとしみじみ。

ドラマの中で、唯の考えが浅いところが時々気になりました。若君は一族全体の行く末を考えて行動しているんだけど、唯はあくまで自分と若君の未来に焦点を絞る。平成生まれの女子高生で、若君より2歳下だと仕方ないことなのか。でも、あれだけ若君と一緒に行動してお城での生活もあったんだから、もうちょっと心が成長してもよくないか?

一番「ええー!!」と思ってしまったのが、明日降伏する(切腹する)と決めている若君に、結婚をせまるところでした。ここは唯に対してイラっとしてしまった。いや、それどころじゃなくない? 祝言とか挙げてる場合じゃなくない? それは唯にしてみたら一番の願いかもしれないけど、若君の立場や気持ちを思いやったら、今それ言う?

私の中で、唯の評価がダダ下がりです(^^;

まあ確かに、唯のおかげで今、若君が生きているというありがたさはあるけども。でも唯だって、若君がいなかったら何度も死んでるよね。毒キノコやら戦闘やら。若君は命の恩人じゃん。そして若君の立場を思うなら、あの場で祝言の話とかするかなあ。

そして、「待てぬ」の若君がツボでした。そりゃあの状況で「待って」とか、唯が間違ってる(^^;でも結局待ってあげる若君は優しすぎて、どんだけ完璧な人なのかと。

あと、現代に帰ろうとする唯に、背中を向けるところもよかったです。そりゃあ、見てられないよね。胸が張り裂けるよ。それ以前に、唯がいなかったら…みたいなことを言う若君にも、キュンキュン(死語)させられました。

若君の孤独、について考えてしまった。領民、家臣、大勢の命を預かる責任の重さ、己ひとりの幸福を追求するわけにはいかないよ。そこが、どこまでも能天気な唯との違いなのです。でもその唯しか、いないのです。普通の姫相手だったら、表面上の勇ましさだけを取り繕わなければならないから。いろいろ本音で話せる相手は貴重です。その人が妻になってくれるなら、どんなに心強いか。でも、その人を危険にさらすわけにはいかない。逃がす手段があるなら、逃がさねばならない。二度と会えない場所であっても。

そんな若君の苦悩が、胸に響くシーンでした。唯とはどんどん親しくなっているだけに、本編の第8回以上の苦しさがあったのではないでしょうか。

死なない約束をしたから、屈辱に耐えても、切腹ではなく生きる選択をした若君。当時の状況を聞いて、すすり泣く臣下の者たち。唯の甘さを叱責するおふくろ様。おふくろ様もすごくいいセリフだったと思います。

しかしやはり、唯は唯でした。変わってない。わかってない。

だって、若君様が相賀の娘と結婚するのを、ぶち壊しにいくんだもの。いや、私は相賀の娘との婚儀の書状を、成之さまが持ちだしたとき、「その手があったか」と一瞬喜んだのですよ。だって、それこそ婿になることで、若君の命は救われるし、落ちのびていく羽木家の皆を、陰でこっそりサポートできるじゃないですか。婿としての発言力がどれほどのものかはわからないけど、少なくとも現状の、敗残の将としての生殺し状態からは逃れられる。そして、若君が皆を助けられる、唯一の道。

落ちのびたとして、城を失った羽木家の暮らしが、いいものであるはずもなく。親戚とはいえ、世は戦国。もし信長に「差し出せ」と命じられれば、そこに羽木家の居場所などない。

相賀の家の、戦の使い捨て駒なら、遠からず若君様には死、あるのみ。己の命を長らえ、羽木家を救うには、相賀の娘との婚儀は願ってもないチャンスのはず。

皆に賛同され、婚礼をぶち壊すべく意気揚々と走っていく唯の姿を見て、私は複雑な気持ちになりました。だって、悲しいかもしれないけど、この時点で唯が現代に戻れば、すべては上手くいくのでは? と思ったから。唯にだって、帰りを待つ親がいる。なにより、今唯が身を引けば、一番丸く収まるのに。婚礼ぶち壊して、その後、二人で現代に行くことが、若君の幸せなの? 残された一族のこと、若君が憂えないはずないのに。

月の人を演じる唯と共に、逃げ出す若君の殺陣は、ひたすら美しかったです。恋人を守る男性の図って、本当にかっこいい(^^) 唯の手を引きながら、無敵の強さで道を切り開く姿にほれぼれしました。眼福、眼福。あの後、じいが責めを負わされたであろうことには、心が痛みますが、じいを連れて逃げられないしなあ。

現代パートでは、若君が違和感満載でした。カツラが合ってないのかな。なんともいえない、「コレジャナイ」感。やはり若君には戦国が合う。現代のイケメンではない。それに、ちっとも幸せそうじゃない。もしも現代で二人がずっと暮らしたら…若君は唯に決して愚痴をこぼさないだろうけど、半分死んだような生活になると思いました。魂はずっと、戦国に残したままで。

たぶん、楽しいふりしてたんだろうなあとは思います。唯のために。唯が望むことを叶えてあげて、唯の恩に報いて。でも一瞬だって、若君は一族が暮らす戦国の世を、忘れた瞬間はないと思う。

若君役の伊藤健太郎さん、ぴったり役にハマっていました。佇まいが武士なのです。強く、優しく、思慮深く。

ドラマを見終わって、これはもちろんフィクションなんだけど、似たようなことは戦国時代、全国で起きていたんだろうなあと、そんなことを思いました。小国が、吸収、合併、滅びていく例は、無数にあったでしょう。だけど統一する強大な権力がなければ、それはそれで、地方での小競り合いは続いたでしょうし。

戦国どころじゃない。つい最近だって。明治維新もまた、多くの悲しみがあったはず、と、そんなことを思いました。今まで武士だった家が、武士でなくなる。そのことの重みです。もう社会構造が、根底からひっくり返ったのですから、衝撃はどれほどのものだったのかと。表に出てこないどれだけの人生が、激変したのかなあと。

ドラマ「アシガール」、好きです。しばらくは思い出して、いろいろ考えると思います。

ドラマ「アシガール」ダイジェスト版 感想

ドラマ「アシガール」ダイジェスト版を見ました。以下、感想を書いていますが、ネタバレ含んでおりますので未見の方はご注意ください。また、感想は辛口ですので、その点もご了承ください。

NHKドラマ「アシガール」のダイジェスト版の放送が、23日にありました。1時間25分の放送でした。元のドラマが、38分×12回=456分のところを、どうやって短縮するのか、はしょりすぎて意味不明になっても嫌だし、初見の人にもドラマの良さが伝わるよう何を捨て何を残すのか、編集を楽しみに見ました。

見終わった素直な感想。いやー、縮めるのって難しいね(^^; 印象深いたくさんの名場面が抜けていて、残念でした。でも納得でした。とにかく、今回のダイジェストは85分間ですから。

いろいろあってこその二人のセリフ、表情なので。いくら名場面と言っても、それをすっ飛ばして名場面だけを映したところで、感動はない。それくらいなら、いっそ流さないほうがいい。私の大好きな第8回の素敵シーンもセリフも、ほとんど出てこなかったですが、むしろそこだけ唐突に流されても嫌なので、あれでよかった。

編集は最高だったと思います。どうしてもぶつ切りになってしまって流れがおかしいところは、ナレーションでうまく繋いでいて、違和感がありませんでした。

ただ、あらためてダイジェスト版を見て、すごく気になったというか、惜しいなあと思ったのが唯役の黒島結菜さんのこと。

キャラとして、唯のイメージに合わないと思いました。クールすぎるのです。若君に一直線という情熱を感じなかった。セリフや態度は、もちろん演技としてきちんとされていたのですが、言葉にならない、あふれでるなにか、を感じられなかった。ものすごくもったいなかったです。もし唯がもっともっと、理屈ではない若君への恋心に突き動かされる女の子だったら、さらに切ないドラマになっただろうにと。

一番それを感じたのは、若君様のプロポーズシーンでした。愛しい人の命が助かったこと、その喜びを抱きしめ合いながら分かち合う、という盛り上がりの場面。

目を閉じた若君様が無表情なのは、あまりにも唯が淡々としてるからかな~と思ってしまいました。ああ、もちろん言葉は、「若君さま大好き」でしかない唯なのですが、最初から画面を通して彼女から伝わってくるものが、とても温度の低い何か、なのでした。一目ぼれから始まり、ますます熱が高まった末の、命がけの紆余曲折を経て、ではなかったのです。そういう唯を相手にしている若君様の、だからこそのあの無表情というか、妙に納得してしまうものがあった。

ああやって、好き同士が抱きしめあったら普通はもっと、違うオーラが出ないかなあと思ったのでした。お互いに、相手に対しての愛しさが、こらえてもこらえきれない気持ちがあふれ出て、それがまた相手の情熱に触れて、相乗効果となってぐるぐる回り出す、みたいな。

そういうのが見たかったけど、あの場面はそうではなかった、ような気がします。淡々と、淡々と。唯の目に、若君様は恋しい人に映っていなかったような。

若君様は、唯より多少温度が低くてもいいと思うんですけどね。あくまでも若君様であって、いかなるときも己の置かれた立場を忘れる人ではない。唯のことは好きだろうけど、それは無条件の何か、ではないと思うのです。

若君が唯を好きになったのは、唯が命がけで若君を助けにくる、そんな女の子だったから。歌を詠み、美しい着物を着てしとやかに殿の帰りを待つ、そんな典型的な女子像ではなく。足軽の格好で、馬と並走して走り、どんな危険にも臆さず一途に自分を慕い。あけすけに物を言い、時には自分の命を投げ出してまで愛する人を守ろうとする。

若君にしてみたら、それは心惹かれると思いますよ。戦や人生を語れるというだけでも、好感を持つでしょう。そんな人が自分を慕ってくれるなら、好意を抱かない方が不自然。

若君の愛情は、じんわりでいいような気がします。でも唯はなー。唯はもっとあけすけに、一筋に大好き光線を発する女の子であってほしかった。それが唯の魅力だと思うので。

舞台が荒唐無稽な設定でも、それをふっとばすくらいの元気キャラだといいなあと妄想します。唯の放つエネルギーに、皆が巻きこまれていくの。若君もまたしかり。大きな渦に飲み込まれて。そういうの、見たかったなあ。

黒島さんの唯だと、後先考えずに、とにかく走っちゃう、というよりも、知的な女の子に見えてしまうのです。

伊藤健太郎さんの若君が、あまりにもはまっているだけに、唯に対する違和感がもったいないというか。それと、唯の走る姿があまり魅力的でない、というのも残念です。

たぶん、ちらっと見ただけのCMでも、走る姿で魅せることってできるんじゃないかな? 楽しそうに駆け抜ける姿、走ってればそれでOKな姿、一目見た人が、お?これは面白そうなドラマだなあ、と感じさせるくらいの本気走り。走るのがものすごく速い人って、周りの目を奪いますよ。

ドラマだとどうしても、女の子っぽい走りに見えてしまって。速いという設定も嘘くさく感じてしまって。そうなると、子供向けのラブコメなんだろうなという印象がぬぐえなくなってしまってもったいない。

今の年齢の伊藤健太郎さんを若君役に抜擢したのは本当に大正解だったと思うし、ダイジェスト版の85分ではとても語りきれないほどの物語で、すごく面白いドラマ。展開が単調ではなくて、視聴者を飽きさせない。そして、衣装とか、街並とか、他にも主人公2人を囲む周りの俳優さんが実にいい。安っぽくなく真にせまっているのです。

結局、役にはまるかどうかというのは、ある意味、賭けもあるのかなあ。キャスティングは、本当にその役に合うかどうかでなく、事務所の力関係もあるだろうし。合う合わないは、俳優の責任ではなく。人にはそれぞれ持ち味があって、たまたまそういう役に巡り合うかどうか。

今日の夜、続編が放送されるのを楽しみにしています。本当は4Kで17時から見たいけど、うちが加入しているケーブルテレビは4Kに対応してないので、21時からの放送を待つしかない。なんだよNHK~、4Kだけのスペシャルコンテンツが気になるじゃないか~(^^;

21時が待たれます。

ドラマ『アシガール』感想 その2

前回のブログの続きです。私の好きなドラマ『アシガール』の名場面について語ります。以下、ネタバレ含みますので、ドラマを未見の方はご注意ください。

さて、名場面を語ろう、と思ったのですが。あれもこれも、たくさんあって選び切れない(^^;

一番好きな回で言うと、第8回と最終回の2つが好きです。第8回については、もうこれが最終回でもよかった、くらいの完成度でした。これが最後でも全く構わない。納得の終わり方。

第8回がどうやって終わるかというと、主人公の唯ちゃんが現代に帰っていくのです。タイムマシンがそれを最後にもう使えず、二度と戦国時代に戻れないというのを知らずに…。またすぐ若君と会えると思いこんでいるもので、かなり能天気な唯ちゃんに対し、永遠の別れを覚悟して、それを隠している若君の表情がせつない。

でもさ、まあそうなるよね、と。

若君様は、一度は現代を経験してしまった。そこでご両親や弟や、平和な世の中を見た後で、唯を戦国時代に留め置くっていう選択肢はないわね。

無邪気な唯と、精神的に大人な(さすが家督を継ぐ男子)忠清さまとの差が、せつない。唯には本当のことを言わず、ぐっとこらえて、送り出す姿がかっこよかったです。まさにイケメン。

私が中でも好きだったのは、若君がひとりで馬に乗って帰るときの哀愁かな。ついさっきまでの、唯のまぼろしを見るんだよね。流れる音楽も静かで、なにも特別なものじゃない、特別な夜じゃないって感じでさ。

出会うはずのない二人が出会って、またふっと、離れただけのことっていう。どこにでもあるような、世の無常を思わせるような、だからこそ胸に迫るものがあります。

第8回が最終回でもいいと私が思ったのは、若君が全力を尽くしたのがよくわかったから。やり残した後悔がないからこその、すっきり感があったのです。万感の思いでちゃんと唯にお礼も言ったしね。

悲しいし寂しいけど、でもどうしようもないもの。人それぞれ、背負った運命は違うから。もしあのまま唯と別れて二度と会えなかったとしても、若君はしっかり生きていっただろうなと思う。唯を生涯忘れないで、胸に秘めたまま阿湖姫と結婚し、高山と戦い。羽木家の嫡男として、まっすぐに生きただろうなと思うのです。

唯はどうだろう。あのままもし戦国に帰れなかったら。案外時間が経てば、記憶が薄らいで、若君のいない人生をそれなりに堪能したような気がする(^^; だってドラマの唯にはあんまり、若君への情熱を感じなかったからなあ。コメディだからそういう演出だったのかもしれないけども。

ああ、でも欲を言えば。もう少し、若君を好きな、それが画面からダダ漏れな唯であってほしかった。コメディ要素もいいけど、もっともっとせつないドラマにしてほしかったなあ。

と、第8回が大好きな私ですが、最終回もなかなかよかったです。最後の若君の笑顔がたまりません。ああ、こういうふうに笑えてよかったねえと、しみじみ思いました。こんなふうに笑える相手に出会えたなんて、若君様しあわせ者だよ(^^) 唯ちゃんを大事にするんだよ~と、声をかけたくなりました。

そうそう、他にもうひとつ好きな場面があります。唯の顔に鉄砲の弾傷があるのをみつけて、若君様がとても心配そうにするシーンです。もう、若君の心中が画面にあふれてきて、見ている私もいたたまれない気持ちになり。

そりゃ、自分のせいで好きな女子の顔面に怪我を負わせたら申し訳なくて罪悪感に苛まれるよなあ。痛かっただろうと思うし、傷が残らないかと心配だし。なにより、弾があと少し逸れていたら唯の命はなかった。そのことを思うと、もうたまらない気持ちになるよね。

そのとき、いつもは天然であまり察しのよくない唯が、そのときだけは、若君の心中を敏感に読み取って、嘘をつくのね。傷は、山の木の枝のせいだと。鉄砲の玉ではないと言外に、若君を思いやる。あー、こういうお互いの思いやりっていいなあ(^^) 見ててにんまりしてしまう。若君すっかり御見通しなところもイイ。

このドラマ、どうしてこんなに若君が魅力的なのかな、と思ったのですが、理由のひとつには、表情をあまり出さないということもあるのかなと。無表情っていうのも変ですが、若君は人の話を聞いてぱっと顔色を変えたり、そういう反応がないのね。むやみに心中を悟らせない教育を受けてきたのか、確かに、上に立つ人はどしっと、動じない方がいいんだろうし。そして、寡黙。普通のドラマだったら、相手の言葉にすぐ反応して言葉を返すのに、若君はもどかしいくらい黙ってて、どうしてもという厳選された言葉を口にしてる感じがする。そういうところが、若君の魅力になっていると思います。

若君は殺陣も所作も言葉遣いも美しかったです。時代衣装も似合って。そして若い。若いのに老成してる部分もあって、それは、そうしなければ生き抜けない戦国の世の厳しさをうかがわせて、痛ましくもあり、また、頼もしくもあり。

演じた健太郎さんは当時二十歳ということで、大正解だったと思います。もっと年齢が上なら、全然違う若君だったはず。ドンピシャの配役だと思いました。キャスティングした人すごいなあ。

ドラマ『昼顔』でデビューしたとのことで、ああそういえばあの高校生役か、と。でもあの人を、この若君役に、とは私だったら全然思いつかない。こんなに化けると思わない(^^;

ドラマ『今日から俺は』も何回か見ましたが、若君の片鱗がかけらも残っていないことには驚きました。まさに若君を「演じて」いたのだなあと。健太郎さん自身は、決して若君じゃない(当たり前だけどね)、ということをつくづく思うのでした。

逆に、何を演じてもその人が出る、というタイプの役者さんもいますね。どちらが優れてるとかではなく、それは役者さんのタイプなのだと思います。

たとえば、今回のドラマで言えば、加藤諒さん(宗熊)とか、村田雄浩さん(宗鶴)とか、ともさかりえさん(吉乃)とか、田中美里さん(久)などは、私にとっては、何を演じてもその人の個性が色濃く出る役者さん、に見えます。

宗熊ではなく、加藤諒さん、に見えてしまうのです。今回の宗熊役はよかった~。加藤さんが宗熊じゃなかったら、唯と宗熊のシーンがものすごくつまらないものになっていたはず。加藤さんの個性が、宗熊というキャラを見事に作り上げていました。もはや、宗熊が加藤諒さんなのか、加藤諒さんが宗熊なのか、切り離せない。

村田雄浩さんは、私にとってはドラマ『雪の蛍』の元彦さんで。渡鬼でもなんでも、元彦さんに見えるし、今回もやっぱり「あ、雪の蛍の板前さんだ」と思って見ていました。それだけ強烈な個性なのです。ともさかさんも、私は吉乃ではなく、ともさかさんだ~という目で見ていました。

あまりにも個性がある役者さんは、役よりもその人そのものが出てしまう、というところがあると思います。それが役にはまればOKなのですよね。

あとひとり、いいなと思ったのが、はんにゃの金田哲さん。若君と剣の稽古をするシーンが凄かったです。上手い! これは剣道経験者だからですよね。背筋をぴんと伸ばした姿勢から繰り出される無駄のない動き。若君を圧倒してました。これは指南役だわ~、若君敵わないわ~。

芸人のはんにゃ、でなくて。まさにそこにいたのは、天野家の嫡男。ドラマの中で光ってました。

全体的に、このドラマは映像として、綺麗だったな~。光が印象的に使われていました。朝の光、昼の光、夕暮れの光、月の光、ろうそくの光。それぞれに照らされる唯と若君様の表情、そのひとつひとつが美しかったです。

実は続編の放送を楽しみに待つ反面、自分の中に、もう見なくてもいいか、という気持ちも少しだけ生まれてきています。それは、本編がとても美しく終わっているから。唯や若君のその後を知りたいような、知りたくないような。続編が、あの美しい世界を壊してしまうものなら、見たくはないのです。それくらい完成された、良い終わり方でした。