『別冊花とゆめ』3月号を読んでから、私の中でガラスの仮面熱が高まっております(^^)
ということで、思いきって文庫本の1巻から23巻まで、読み直してみました。
以下、感想を書いておりますがネタバレも含んでおりますので、未読の方はご注意ください。
3月号の速水さんが素敵だったから、という理由で読み直したのですけれど。
新たな発見が2つありました。
1つは、「実はマヤが速水さんを好きな気持ちより、速水さんがマヤを愛する気持ちの方が大きいのではないか」ということ。2つ目は、「あれほど魂のかたわれを論じる月影先生だが、実は一蓮に対しては片思いなのでは?」という疑問です。今日は主に、1つ目の発見を中心に語ろうと思います。
最初の巻から読み直すと、結構早い段階で、速水さんはマヤに惚れちゃってるんですね。
まるで重力に引かれる物体みたいに自然な感じで。
この漫画の中で多用される言葉、「魂のかたわれ」がぴったりくる感じです。
もうどうしようもなく、マヤに惹きつけられ、紫のバラの人として陰になり日向になり、彼女を励まし支えていく。そのためなら、彼女に憎まれることも厭いません。
マヤが元気に、演劇の道を邁進していくこと。
それが速水さんの、一番の願い。
その願いの端っこの、ほんの少しの部分に「愛されたい」とか、「一緒にいたい」なんていう気持ちがあるような気がしました。
もちろん彼は、それを当然だなんて思っていないわけです。
自分には過ぎた願いだけれど、絶対無理だけど、でもでも。
もしもこの願いが叶えられたらいいなー、なんていう、儚い望み。
願うそばから、自分で「そりゃー無理だよね。ええ、ええ、わかっておりますとも」なんて、うんうんとうなずいているイメージがあります。
自分はマヤの横になど立てない。
母親の死のこと、紅天女の上演権のことなどで、マヤには忌み嫌われている。
一生好きなんて言ってもらえない。
紫のバラの人としての、正体を明かすこともできない。
憧れ続けた紫のバラの人が憎み続けた速水真澄だと知れば、紫のバラの人を心の支えにしていたマヤが傷つくから。
ずっとマヤを見守っていて。
マヤが成長するのを、まぶしくみつめていて。
そんな資格なんてないことを知りつつ、マヤに近付く桜小路君や里見茂に嫉妬して。
マヤが里見茂と初恋宣言したときだったかな?
速水さん、持ってたグラスを握りしめて割っちゃってたような。
嫉妬するにも程があります(^^;
里見茂は、マヤとお似合いだと思いました。
年も近いし、なによりマヤの心が動いてる。桜小路君に対しては友達以上の感情を持てないマヤが、ごく自然に恋した相手。それが里見茂。
もしも本当にマヤの運命の相手が速水さんなら、マヤはあんなふうに里見茂を好きになっただろうか?と疑問に思ってしまいました。
魂のかたわれって、もっと強力なものじゃないのかなあ。
相手の立場もなにもかも関係なく、ただその魂に恋焦がれるというのなら。
紫のバラの人が実は速水さんだった、という衝撃から、マヤの恋心は一気に描かれていますが。
(そりゃ多少は、それ以前にも、実はいい人なんじゃ?的な、好意を予感させる描写もありましたけど)
あくまで、マヤがはっきりと速水さんへの恋心を自覚したのは紫のバラの人の正体を知ったとき以降で。
バラうんぬん関係なく、よくわからないけど不可抗力な超ミラクルパワーで速水さんに惹かれていく、というのがなかったような気がするんですよね。
本当に運命の人なら、バラ関係なかったと思う。
マヤ自身が不思議になるくらい、「あんなゲジゲジの、冷血漢の、大っ嫌いな速水さんなのに、一緒にいると胸がザワザワ、どうしようもなく苦しくなる」っていう展開があったと思うんですよね。
いや、実際ちょっとはそういう場面もあったと思うけど、もっともっと強烈に、どうしようもなく感情が突っ走るような究極の暴走場面、あったと思うんですよね、それが魂の半身なら。
ハッ!! これはもしかして自分、速水さんを好きになっちゃったんじゃなかろうか、とマヤが気付かずにはおられないような、決定的な感情の動き。
自分の置かれた立場とか状況とか、普通に見れば好きになることなどない相手なのに。
感情が意志とは関係なく動きだして、「好きだ、好きだ」って叫び始めてしまうという、そんな心が引き裂かれるような痛みの場面、紫のバラの人の正体がばれる前には、なかったような。
マヤにとって、紫のバラの人ってものすごく大きかったわけですよね。
一番最初についたファンで、困ったときにはいつも助けてくれて。
マヤの演劇に、お世辞でない興味を抱き、毎回かかさず見てくれる。感想をくれる。
マヤが抱いた紫のバラの人に対する期待、憧れ。そういうものが全部、速水真澄という人物にスライドした。
だからこそ、正体バレの後、マヤちゃんは「速水さんが大好き」状態になっているわけです。
じゃあ逆に紫のバラの人がいなかったら、マヤちゃんはそこまで、速水さんを好きにはなっていなかっただろうと、そういうことにもなりますね。
読み返してみて、すごく感じたのです。温度差。
速水さんが、マヤに出会ってどんどん惹かれていく過程。
すごくリアルで、共感できた。
ああ、私が速水さんだったら、やっぱりマヤを好きになっていただろうなあっていう。
速水さんにとってマヤは、救いの女神だったと思うんです。
冷血漢、と人からは呼ばれ。心のすべてを凍りつかせたような人でしたが。
その状況がつらくなかったといえば、それは違うだろうなあって。
つらさは絶対、あったと思うなあ。
苦しいんだけど、でも出口は見えない。
なにをすれば救われるのか、わからない。
彼が唯一、救われると信じていたものは「紅天女の上演権」。
それを手に入れ、自分の力で、自分の思い通りに紅天女を上演すること。
義父の目前でそれをやり遂げること。
そしたらこの苦しさから逃れられる、と彼は思っていた。
自分が諦めたいろんなものも、そのときならば、復活するのでは? なんてね。
でも、実際に速水さんが紅天女を手に入れても、きっと彼が思っていたようには、事態は変わらなかったと思う。
そのときこそ、彼はどうしようもない絶望にとらわれたのではないかと。
もう他に、打つ手がないから。
きっと、マヤは速水さんがいなくても生きていけると思う。
誰かと普通に恋をして、結婚して。
里見茂と、いい関係を築けたように。他の誰かとだって、縁があれば心を通わすことができる。
そして、大好きな演劇を続けていれば、それで幸せ。
もし速水さんと添い遂げられなくても、それはそれで、いつか懐かしい思い出になるような。
でも速水さんは。
マヤと一緒になれなかったら、その後の人生は、生きながら死ぬようなものではないかと思いました。
マヤと出会うまで、誰にも心を動かされなかった人ですからね・・・。
マヤでなければダメなんです。
マヤでなくていいのなら、とっくに他の誰かと、それなりに楽しい時間を過ごしていたと思います。
出会ったときから、右肩上がりで着実にマヤを好きになっていった速水さんですが。
昔は、ためらうマヤを平気で、お姫様だっこしてボートに乗せちゃうような余裕もあったんですねえ。
なのに、社務所で一夜を明かす頃にはマヤが大事過ぎて、抱きしめることしかできない。
それ以上には、踏み込めないってことで。
社務所といえば、速水さんの理性はすごいです。
大好きなマヤを、一晩じゅう抱きしめていたあの体勢。
眠れなかったでしょう(^^;
マヤは、いくら疲れているとしてもあっさり寝ちゃってました。
うーん。そこで寝るかなあ。
大好きな人と、ハプニングで抱き合って眠ることになったら、ドキドキしすぎて眠るどころじゃないと思うんですが。
やっぱり互いを思う気持ちの強さは、速水>マヤ なのかなあと、あらためて実感するシーンでした。
>おれはきみを嫌いだと思ったことは一度もない
ああ、このセリフって。
速水さんにしてみたら、精一杯の告白だったんだなあと。
好きだなんて言えない。
じゃあ、こう言うしかないじゃないですか。「嫌いじゃない」って。
嫌いじゃない=大好きだー!! ですよね、この場合。
どんな気持ちで、マヤに告げたのかと思うと、せつないものがあります。
いつもどんなときだって、速水さんはマヤを見ていた。ずっと愛情を注いでた。
でも本当のことなんて言えないから。
言えばマヤを戸惑わせるだけ。傷つけるだけ。
お互いに言い訳できる状況で、身を寄せ合って一晩を過ごしたことは。
言い訳ができるだけに、互いの愛情を確かめる証にはなりませんでしたね。
寒くて凍えていたから、寄り添っただけ、という・・・。
そう言い訳できることを嬉しく思いながら、でもその言い訳に呪縛された二人であったと、思います。
相手の好意を確信できる、そういう事実にはならなかったから。
朝日の中で。
マヤの寝顔はどんなに眩しく、速水さんの目に映ったことでしょう。
長くなったので、続きはまた後日。