『ガラスの仮面 48巻』美内すずえ 著 の感想

 『ガラスの仮面 48巻』美内すずえ 著を読みました。以下、感想を書いていますが、ネタばれしていますので未読の方はご注意ください。

 まず帯です。帯。ここに注目。
 なんで劇団ひとりが、マヤや月影先生のコスプレしてるんだろう(^^;

 意味がよくわからないというか、むしろ不快というか。
 こういうキャンペーンのセンス、私はあまり好きではないです。以前にやっていた速水真澄は誰だ、みたいなクイズもどうかと思うけど、今度のはさらに・・・です。

 これって販促になるのだろうか(^^;
 というか、どのあたりの年齢層をターゲットにしてるんでしょう? ガラスの仮面の読者の年齢層って、結構高いと思うんですが、それを踏まえての企画なのでしょうか??

 最初に帯を見て、多少脱力しながらも気を取り直し、、読み進めました。そして、読み終えて最初に思ったこと。

 そうかー。やはり別冊花とゆめは、少女を対象にした雑誌なのだなあと。
 雑誌連載がそのまま単行本になったわけではなく、改稿されていまして。その改稿が、「よりわかりやすく説明を加えた」ものになっていたのです。

 それは、少女にもわかりやすく、というコンセプトがあったからではないかと、そう思いました。

 大人なら、暗黙の了解だとか、言葉に出さない気遣い、みたいなものを理解できるけれど、子供にはなかなか難しいから。

 雑誌連載の原稿を、さらに何度も推敲したことによって、単行本はより、わかりやすいものになっていたけれど、私は雑誌連載のときの方が好きでした。

 いちいち、登場人物の心情をこと細かに説明したりしていなかったから(^^;

 こういうのは好みなのかもしれませんが、私は「秘すれば花」派です。敢えて顕にしない方に美学を感じるし、その方が余韻や、解釈の違いを楽しんだりもできるわけで。

 今回の48巻は、説明が多すぎて、勢いが失われてしまったように思いました。わかりやすく、綺麗ではあるけれど、魅力を損なってしまったような・・・。

 一番それを感じたのは、速水さんが紫織さんに婚約解消を告げにいくシーンです。待ち合わせの店に到着した速水さんが心に思ったことが、文字になっていまして。たとえば、以下の台詞。

>ただひとつ ぼくはあなたに 嘘をつく…!

 これ、あらためて文字にしてしまうと、興醒めでした。

 嘘をつくと宣言されてしまうと、う~ん。

 この台詞はない方が、いろいろ想像できてよかったように思います。紫織さんと真摯に向き合った速水さんの言葉。そのどれが真実で、どれが嘘なのか。
 速水さんが何を思い、何を意図して動いているのか。

 すべてを言葉で説明しない方が、奥深かったような。
 ただひとつの嘘、と言いきってしまえば、答えは明らかですもん。
 マヤに対する気持ちを、ファンだと言いきったことですよね。

 こんなふうに速水さんの心情をつらつらと文字で表現されてしまうと、う~ん。私は雑誌連載時の、読者に考えさせる曖昧さを残した表現のほうが、好きでした。

 そしてこの48巻。亜弓さんとハミルさんの恋模様も、かなりのページを割いて描かれているのですけれども。

 ハミルさんが素敵に見えず、亜弓さんにも全く共感できないため、正直、この二人はどうでもいいや・・とか思ってしまいました。

 ハミルさんは、う~ん。全然かっこいいと思わないです・・・。

 なにか魅力的なところがあれば、と思うのですが、う~ん、う~ん。まったく私の好みではなかったです・・・。

 そして亜弓さん。
 相変わらず、目標のピントがずれてるような。有名人の二世であることに強烈なコンプレックスを持ち、それを払拭したい、親は関係なく私が私であることを証明したい、その気持ちはわかるのですが。

 失明の危険を冒してまで、紅天女の試演にこだわるところが理解不能すぎて。それこそ、そこまでしてたとえ試演で主役の座を勝ち取ったとしても。

 その後どうするの?という単純な疑問が。手術の時期を逸したことにより失明したら、当然、本公演とか無理だろうし。
 すべてが明らかになった後で、世間は「さすが亜弓さん。親の力でなく、自分で主役を勝ち取ったのね~」なんて思うわけはないしなあ。

 世間の評価は関係ない。自分自身が納得できればそれでいいのだ、といえばそれまでですけど。本当に、そこのところは理解できないのですよ・・・。なんで、試演に勝てば親の七光りを脱出できると、亜弓さんは固く信じているのだろうかと。

 そして、そんな亜弓さんに惹かれていくハミルさん。

 ああ、亜弓さんにもハミルさんにも両方共感できない(^^; 読みながら、「マヤや速水さんのパート、早く出てこないかな」と思ってしまいました。

 その他、この48巻で、がっかりした加筆部分について、2つ語ります。

 まず1つ目。

 伊豆の別荘で寛ぎ、マヤのことを思いながら、別荘番に「殺風景だから花でも飾ってくれないか」的なことを頼む速水さんです。

 うぉー、これは、思わず笑ってしまいました。ないわぁ。これはないですよ。こんなことしてる場合じゃないし(笑)

 婚約解消で、これから鷹宮グループを敵にまわそうとしている立場の人が、やっちゃいけないことです。いくらでもやるべきことがあるのに、伊豆の別荘でのんびり妄想って、いやー、それだけはないわ。速水さんに限って。
 彼がもしもそんな人なら、とっくの昔に英介に見限られて、養子を解消され平凡な人生を送っていたでしょう。

 それに、マヤとのこれからの生活を大切に思うからこそ。心を鬼にして、必要以上に近付かなかったのが、あのアストリア号ではなかったでしょうか。それは、速水さんが責任感のある人だからこそ、と思うんですよね。

 あのとき。速水さんはまぎれもなく、「婚約者のいる人」だった。だからこそ、甘い、楽観的な約束などできなかった。

 有言実行、ですよね。まずは、全力で動こうと。あのときの速水さんは決意していたはずです。どんなことをしても、すべてをクリアにすると。そして、その暁には、誰にはばかることなくマヤと一緒になろうと。

 そんな速水さんが、あの後、伊豆でのんびり・・・ あり得ないです。むしろ、仕事中に苦悶してほしかったです。どんなに仕事に没頭しようとしても、脳裏に浮かぶマヤの甘い声に、心がかき乱されて、「こんな気持ちは初めてだ・・(白目)」的な表現があったら、萌えます(@^^@)

 伊豆の別荘で夕焼けを見つめながらのこの台詞。

>はじめてだ…
>誰かのために部屋の中を気にするなんて…
>マヤ…きみがおれの何かを変えようとしている…

 これがもしも、婚約解消に伴う大都の損失を最小限にしようと、東奔西走した速水さんがやっと帰りついた自室での台詞であったなら。もっとぐっときたのになあ、なんて思ってしまいました。
 昼間は冷静沈着の仮面をかぶり、どんな脅威にも平静を装い、激務をさらりとこなした速水さんが。ひとり、深夜の自室で。マヤを思ってつぶやくとか。
 想像すると、かなりいい感じなんですが(^^)

  では、次に、2つ目の加筆がっかりポイント。自殺未遂をはかった紫織さんを、ネクタイで止血するシーンです。

 わかります。確かに、なんでこれが加筆されたのかは、わかる、気がする。

 人として、怪我をした人を前に、助けようともしないのは倫理的に問題がありますもんね。ただ、この場合。
 紫織さんを前に、ただ立ち尽くすしかなかった速水さんのほうが、読者にとっては彼の受けた衝撃の大きさを想像できたと思うのです・・・。

 そのとき。きっとすごく、複雑な気持ちだったと思います、速水さん。いろんな感情が一気に湧き上がって、ぐるぐる渦を巻いていたような。

 紫織さんを哀れと思う気持ち。気の毒に思う気持ち。痛ましいという気持ち。まさかという気持ち。

 そして同時に、これを境に起きる出来事に対する憤り、こんなことをしでかした紫織さんへの怒り。なぜこの場で、という苛立ち。

 

 マヤへの愛情。将来への不安。鷹宮側がどう出るかわからない恐怖。

 いくつもの思い、感情が。入り乱れてきっと、速水さんは立ち尽くすしかなかった、というのが、自然なことかと。

 人間、本当に予想外のことが起きたりすると、動けなかったりするのではないでしょうか。頭が真っ白になって。
 いろいろ情報は頭をめぐるのだけれど、それをうまく制御できず。整理もできない状態。

 後から、ああすればよかった、こうするべきだったというのは簡単だけれど、いざそうした場に立ってみると。
 意外と、「動けなかった」なんてことになるのではないでしょうか。とてもじゃないけど、とっさにネクタイを緩め、駆け寄って止血する、という行動、そんな冷静な行動など、とれないのではないでしょうか。もしも速水さんの、立場だったなら。

 

 以上、48巻の感想でした。
 次回は、今月号の雑誌連載の感想を書きます、たぶん。

 

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