中村うさぎ著 『イノセンス』

中村うさぎさんのエッセイはよく読む。完璧な買い物依存症で、金銭感覚が壊れてしまっている女性だ。そんなうさぎさんが一体どんな小説を書くのか? 興味本位で『イノセンス』という単行本を手にした。

表紙の絵が、印象的だった。どこをみているのかはっきりしない、まさに『イノセンス』な少女。ふわふわした巻き毛。

読みやすい本だったので、一気に最後まで読んだ。以下、ネタバレしてますので未読の方はご注意ください。

一人の少女について、いろんな人がインタビュー形式で語るという小説だった。同一人物でも、人によって見方はずいぶん違うんだなと思った。他人から見た像と、少女自身が日記で語る自画像のギャップが大きい。

最後、キリスト教の贖罪の話になったときにはびっくり。こういう深い話になるとは思わなかったのだ。ただ、今回の小説の中で一番の罪人ははっきりしている。それは、主人公の義父だ。

要するに、この人が発端になった悲劇の話ではないか。この人が、罪を償うべき相手を間違えたからいけないのだ。里子をもらい、育てられなかった実子の代わりに愛情を注いだというが、自分の子供をこそ、幸せにすべきだったと思う。教え子に対しても、ひどすぎる対応。

うさぎさんの心にも、「イノセンス」に憧れる気持ちがあるのかなあと思った。それが、買い物に走らせたり、美容整形に走らせたり、ホストに走らせたりしているんだろうか。

読み終えた後、荒井由実の「翳りゆく部屋」を繰り返し聞いたら、気分が沈んだ。これは名曲だけど、後味が悪すぎる。どんどん、果てしなく落ち込む感じ。メロディそのものは、そんなに悲しいものじゃないのに、圧倒的な絶望感。好きなんだけど、聞いていると悲しい気分になるので、気分転換に散歩に出かけた。

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